神殿
3歳になってから家庭教師の方々に色々な事を教わり、気付けば4歳になっていた。
今日アイリスは、神殿に向かう予定だ。詳しく才能を見るために神官様に会いに行くとかで。
領地内には幾つか神殿があるが、今回行くのはウェルトがいるところだ。神殿に務めていると聞いて、アイリスがだいぶ衝撃を受けていたあの怪しい人物。
ちなみに、貴族であれば大体2〜5歳のウチに調べてもらうらしい。だが王族の場合は生まれた日のうちに神殿に行って調べてもらうんだとか。
アイリスの場合はウェルトに、魔法だけだが先に教えて貰っていたので神殿に行くのが遅れていたのだ。
普通の貴族なら2歳になった時点で神殿に連れていくらしい。
お母様は今、身篭っておいでなので来ません。
私は今度お姉ちゃんになるんです。産まれるのが弟が妹か、楽しみです。
ちなみに貴族はどうして2歳から才能を見るのかは、子供を道具としてしか見ない貴族がいて色々問題になったからだそうです。
ふんわりとしか教えて貰えませんでしたが…。
自分の子供相手にそんな事教えられないだろう。
レイファやバルトがどれだけオブラートに包んで教えたのかが気になる所だ。
しばらくすると神殿が見えてきた。家から馬車で20分くらいしただろう。
実はかなり酔っているアイリスは救いを見つけた気分である。
あれが神殿ですね!助かりました。お尻も痛いですし。
おっ!あれはウェルトさんでは?
わざわざ迎えに来てくださったんですかね。
今日は神官としてなのでしょう。白の服を纏って冠を被っています。
「辺境伯様ようこそいらっしゃいました」
「やめろ、お前にそんなふうに言われると寒気がする」
「おい、失礼だな」
神官様のイメージは脆くも崩れ去った。
見た目は神官様なのに……。微妙な気持ちですが、今日はお願いする立場ですからしっかり挨拶をしましょう。
「本日はよろしくお願いします!」
「おー、アイリスちゃんは今日も可愛いなぁ。
俺の事覚えてる?覚えてないよな〜。あの時から3年経ってるもんなぁ」
覚えてるけど覚えてたら可笑しいよね。あの時はまだ生後数週間だったし。
「?申し訳ありません。覚えておりません」
不思議そうな顔をしつつサラッと嘘をつく。
本当の事を言ったら騒がれるだろうし仕方ない。嘘も方便である。
「あー、そうだよなー。いいよいいよ大丈夫。
さぁ、中に入ってどんな才能を持ってるか調べてあげるから」
「はい」
神殿はとても広くて神聖な雰囲気だった。真っ白の壁に控えめな装飾。
そして神殿の中心には、手を取り合って微笑んでいる女神様と神様の石像、さらにその周囲に円を描く様にして、二柱に忠誠を誓うように跪いている天使達。
思わず感嘆の溜息をついてしまうような荘厳な雰囲気が流れている。
神殿の中には祈りを捧げている人が数十名。
神殿で働いているのだろう、ウェルトと同じ様な服装の人が数名。
「こちらへどうぞ」
案内されたのはさっきの場所とは違い、中央にバレーボール程の白い魔石が置かれている個室だった。
「アイリス様、私が合図を出しましたらあちらの魔法石に触れてください」
「はい」
魔法石?魔石とは違うのだろうか。
気になるが、今は質問出来るような雰囲気ではないため素直に頷くだけに留める。
ウェルトが魔法石に手をかざしながら呪文を唱えて始めた。
「アイリス、魔法石に手を触れたら空中に文字が描かれるんだ。
それが、女神様からお前に与えられた才能なんだよ。一部の者達には加護も与えられている」
「そうなんですか」
ちなみに、女性は女神様から、男性は神様から才能を与えられるとされている。
「アイリス様」
「はい」
ウェルトからの合図で魔法石に触れる。
と、魔法石が輝き始め空中に文字が浮かび上がった。
【アイリス・フレアバード】
・スキル
光魔法Lv1
氷魔法Lv1
時空魔法Lv2
魔力操作Lv3
隠密Lv2
体術Lv1
貴族の気品Lv3
・才能
火魔法
雷魔法
氷魔法
光魔法
時空魔法
召喚魔法
刀術
馬術
裁縫術
話術
親和術
・加護
天使の目
「加護持ちか……」
「いや、加護もそうだか何より才能だ!
流石俺の娘!」
感心したように頷くウェルトさんに、嬉しそうに褒めてくれるお父様。
しかし召喚魔法とは何だろうか。前にはなかったと思うけど。
天使の目?天使さんと一度会っているせいかな?
「お父様、以前はしょ」
(あ!以前調べた時は私はまだ赤ん坊だったし覚えていたら可笑しいじゃん!)
「あ、いえ、失礼しました。
お父様、天使の目って何でしょう?」
「待ってな今見てやる」
「お願い致します」
文字が浮かぶ中、もう一度ウェルトさんが呪文を唱え始めると文字が追加された。
・加護
天使の目
(天使の加護、また天使はこの者の視界を通して地上を見る)
……。
文字を見て落ちる沈黙。一番に我に返ったのはウェルトだった。
「はぁ!?天使様が地上をっ!!
おいバルト!これは王都の神殿に報告させてもらうぞ!!これは決定事項だからな!!」
「そんなもん分かっとるわ!!
俺だって龍王様に御報告に行く!!」
どうしよう、一瞬呆けた二人が我に返ってパニックになってめっちゃ叫んでる。
あと天使さん何もしないって言ってなかったっけ?思いっきり目として使われてるけど…。
オロオロしつつも天使への疑問を感じるアイリス。何もしないと天使から聞いていたのにも関わらず、周囲がパニックになるような加護を与えられていたのだから当然である。
とりあえず、2人が落ち着くまで別の説明を見ておこう。
・才能
召喚魔法
(魔法生物との契約が出来る 【フレアバード】)
話術
(相手を引き込むような話し方をする)
親和術
(生物が心を開いてくれやすい)
分かりずらいのはこの3つだろう。
フレアバードとの契約?だから家名がフレアバードなのかな。そしたらフレアバードと契約できる人はみんな同じ家名になるの?
親和術は嬉しい。土竜と仲良くなりたいし。
「バルト、お前の嬢ちゃんすげぇな。
王族並じゃないか?」
「そうだろう、そうだろう。アイリスは凄いんだ」
(ダメだコイツ、ポンコツだ)
説明を熱心に見つめているアイリスを横目に、ヒソヒソ話している大人二人。
バルトは親バカを隠すつもりは無いようだ。
「む?なんだウェルト、その生暖かい目は」
「いやなんにも?この分じゃ次に産まれる子もすごいんだろうなぁ」
「当然だ!」
「へいへい」




