システムエラー?
「システムエラーかしら。履歴に残ってないけど……」
「言ってる場合か! 一番奥のテーブルの予約状況を出せ、早く」
PCの前に座っている女性が首を傾げる横から腕を伸ばし、画面の真ん中を指先で叩く男性の声は明らかに苛立っていた。その隣では目の前にいない相手に頭を下げるコールセンターの責任者の姿もある。
「申し訳ありません、ただいまこちらからの操作で登録させていただきます。……はい! はい……」
このエリアでは三本の指に入る、有名かつ高名なダイニングバーの予約センターでのこと。予約操作をしたのに確認メールが送られてこないとの問い合わせで、確かに顧客が予約したという時間帯は、特にリザーブ履歴もキャンセル履歴もなく、ただただ空欄のまま。女性の後ろに立っていた男性は顧客対応中の中年男性の肩を突いて、画面への注意を促す。話しながら頷いた人物がスマホを持ち直した。
「はい。本日でしたら10時よりご予約いただけます。いかがでしょう? はい、はい畏まりました。それではお待ちしております」
男性が特別メニューの手配に走る中、電話を切った中年に両手を合わせる女性。
「ごめんなさい」
「原因は分かったんですか?」
「そんなはずないとは思うんだけど、もしかしたら夜間に走らせてるディープスリープモードが……」
「ああ……まあ、少しモードを解除して様子見ですね」
「そうするわ。ありがとう」
原因が特定できるまでは対応に追われそうだと、去りゆく背中を見送って、女性は小さく肩を落とした。