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青年少女  作者: 青月志乃
第1節 人生再出発
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第2話お久しぶりと初めまして

起きれば朝。顔を洗って歯を磨き、朝食を摂るとカバンを持ち、学校へ向かう。

ひどく懐かしい感覚と共に今までにない体験。使用人に学校まで送られるという事だ。

校門前に車を停車させた使用人が扉を開け、到着した事を伝えてくる。歩いて登校してくる子たちに少々優越感を覚えつつ降車し校門は向かう。

脳みそは「俺」なのでどこのクラスかなんてわからない。ではどうするか?簡単な事で職員室へ向かえばいいのだ。


さてさてやって参りました職員室。上司の机に向かうよりはるかに楽な気分で三度のノック、のちに「しつれいします」と出来るだけ大きな声で挨拶し、おはようございますとも付け加える。

これだけでも上出来だというのに「わたし」は一礼を重ねる。

しかしここで困ったことがもう一つ。担任の顔がわからない…。だが、わたしの顔を見ると1人の教師が顔を明るくして寄ってくる。

「いのりちゃん元気になったのね!」

「えっと…はい。ご心配おかけしました…」

「そっかー…そういえば記憶が飛んじゃってたんだっけ…私は『結城 紀子(ゆうきのりこ)』あなたの担任の先生よ?」

「あ、ありがとうございます結城先生…わたしこれからどうすればいいですか?」

「そうね、とりあえずここで待ってて?一緒に教室に行きましょうね?」

「はい、わかりました」

少しふっくらした顔つきだが、子供が好きなのだろうこちらの不安を拭い取るような優しい笑顔で応接スペースに案内してくれる。


退院祝いと称してパックのオレンジジュースをもらい少し時間を潰していると、結城先生がわたしを呼び職員室を後にする。わたしもそれに続き職員室を出て結城先生を追う。

『百合ヶ咲学園(ゆりがさきがくえん)』共学の小中高一貫のマンモス校で、基本的にエスカレーター式の学校の初等部、4年B組に到着すると大きな扉が姿を見せる。結城先生が扉を開いて中に入ると同時にチャイムが鳴り、談笑してた子たちが席に戻り教卓を向く。

そしてわたしの姿を確認した数名の児童が顔をほころばせる。どうやら『わたし』のお友達なのだろう。

わたしは教卓の隣に立つと、先生は挨拶から始まり、わたしが記憶障害を起こしている事を伝える。その言葉に皆戸惑いを隠せていないようだった。

案内された席に座り、多少の挨拶を交わすとそのまま授業が開始される。学校復帰1日目と言う事でわたしを指名することはなかったが正直内容は余裕だった。復習程度に聞きつつ、頑張って追いつきますという姿勢は見せておくべきだとノートはしっかりと取るようにした。


昼休みになると給食ではなくお弁当や購買、学食などで昼食をとるのだと説明を受けた。

幼い頃から仲の良い子だったという3人組と一緒に学食へ向かい、わたしを含めて4人でテーブルを囲む。

「いのりちゃん元気になってよかったねー!」

「カナずっと心配してたんだよ?」

「ゆあもそうだよ!ずっと会えなくて寂しかったんだから!」

「ごめんね…記憶があんまりなくなっちゃったけど、これからも仲良くしてね」

席に着くと同時にずいっと身を乗り出して3人がわたしに話しかける。もちろん移動中も色々と話をしてくれてたが、昼休みまで言わないようにしてたらしい。

『夢見 (ゆめみあき)』ちゃん、紅葉のような髪色と元気が印象の子。

『菱川 佳奈美(ひしがわかなみ)』ちゃん、明るいブラウンの髪色のふんわりした空気の子。

『幹枝 優愛(みきえゆあ)』ちゃん、桃色の髪が特徴のおてんばなイメージが強い子。

幼馴染でずっと一緒らしいわたしを入れて4人はきっとこれからも仲良く過ごしていくはずだった。

『わたし』はこっそり心の中でごめんねと呟き、身体に眠る記憶を頼りに優愛ちゃんのミートボールを横から食べる。

「あーー!いのりちゃんひどい!ゆあのミートボール食べたぁ!」

「えへへごめんね!でも美味しそうだったんだもん」

「むむむむむぅ…ならその卵貰っちゃうんだから!」

どうやらコミュニケーション的に正解だったようで、これをきっかけにみんなでおかずをシェアしながら楽しく昼休みを終える事になった。


午後の授業では脳的には久しぶりの体育だった。初夏の湿った風が吹き抜ける外でハードル跳びを行うという。そこは別に構わん。だが一つだけそれよりも前に問題が発生している。

それは

同じクラスの女子たちと

同じ部屋での着替えだ…!!!!

今は女児ゆえにまっったく問題点はないんだが、脳的によろしくない!脳的に!!目に悪い!!!

「いのりちゃんどしたの?」

「へぇぁ⁉︎なななななんでもないよ⁉︎」

かなみちゃんが服を脱ぎながらこちらを向く。反射的に視線を外し目を手で覆ってしまう。ジロジロ見るのはね、よくないからね。あと脳的にロリコンスレイヤーさん怖いからね。

「あ、わかった!お着替えの仕方も忘れちゃったんだ〜…手伝ってあげよっか?」

「ち、ちがうよ!大丈夫だよアキちゃん!ほ、ほほほほら早く着替えないと!ね!」

「ふーん…変ないのりちゃん」

アキちゃんがイタズラしそうな顔と声でそう言ってくるので、遅刻を免れるために身につけた早着替え術で着替える。

この年代ではどうやらまだブラを着けてる子は少ないようで、服をまくればほら…さくらんぼが見えてしまうので…。顔をすこし赤くしながらもそそくさと先に教室を出る。


薄手の半袖に短パンで外に合流すると、男子の視線はすぐさま女子に向けられる。ジロジロ見るやつ、茶化すやつ、興味ない風にしながら横目で見てるやつ…なるほどこれは結構不快なものがあるな。

女子はそれに「何見てんのよ!」と応戦する様は不覚にも青春だなぁとすこし懐かしみを覚えてしまう。わたしはここでそれに乗ることはせず、一番むっつりそうな横目でこっちを見てくるメガネくんにジト目を送ってみる。

すると気付かれた⁉︎と言わんばかりに顔を背け、なんかもじもじし始める。何アレ超可愛いんですけど…。なんというんだろう、いじらしいというか、からかいたくなる衝動が湧いてくる。あーなるほど女子によくいじめられる男子ってこんな感じだったのか…?

「はーいみんなちゃんと並んでー!」

そんなことを考えてるうちに先生が到着し、整列を促す。みなそれに従い号令をかけ授業を開始する。


そんな毎日を過ごし、精神的に少々疲れを感じつつもわたしは数ヶ月を過ごした。

そして来たる夏、わたしは自分にかけられた神の祝福と言う名の呪いを自覚することになるのだった。

さくらんぼいいよね…うへへ…


おっと邪念が入りましたが青月志乃です。

まだ始まったばかりなのに不穏な空気が入って参りました。一体どうなってしまうのやら…

次のお話をお楽しみに!

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