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青年少女  作者: 青月志乃
第3節 自覚
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第13話 どうにも死なない身体

少し日は飛んで12月下旬。これから大体の小学生は最高なイベントが盛りだくさんなわけだ。クリスマスでプレゼントがもらえる上に約1週間後にはお年玉さえもらえる冬休みという学生の年に2回の長期休暇の一つであるわけで、正直な話わたしはそれらのイベント自体よりもそのイベントの日にはあまり帰ってこない両親に会えるかも?という淡い期待をしているわけで…。先日わたしが死にかけた?らしい風邪の時も仕事で帰ってこれなかったのだと聞いている。

今日は週末で、街はクリスマス一色となっている。そして今は学校の帰り道を歩いて帰っている。寄り道がしたかったのだ。

アキちゃん達には「両親へのクリスマスプレゼントを買いたいから」と話をしてひとりで雑貨屋を目指して歩を進めていく。


「らっしゃーせー」

目的地である雑貨屋に入るとカランカランと出入り口に付けられた大きめの鈴がなり、その音に反応するように声が飛んでくる。ちらりとその方向を見ると店員らしき人間はこちらには視線を向けず、カウンターの下を見ているだけだ。

(バイトかな…?違ったとしても不真面目だなぁ…)

と心の中でこぼしつつ店の中を見て回る。

やはり小物系とか置くものよりストラップの方がいいだろうか?オフィスとかにいるより動き回ることの方が多そうな2人のことだ。携帯や鍵などにつけれるストラップの方がきっと喜んでくれる。

そう決め、ストラップ売り場にくるとこれがまた種類が多いことに困惑する。大人向けの…シック?というのか、あまり派手すぎないで落ち着いた雰囲気のものからわたしのような小学生向けの可愛いやつや少年向けの戦隊モノのストラップとそれはもうズラリと並んでいる。

(うーん…どうしよう。無難なものを選ぶのはちょっと違う気もするし…かといって娘の趣味全開!とかもよろしくない…ん?)

目に留まったのは二色のリボンのついた星型のストラップだった。星の色が赤と青と紫の三種類あり、妙に「これだ」というような感覚が溶け込んでくる。

「すみませんこれください!」

数の少なくなっていた星型のストラップを三種類とも一つずつ手に取りすぐにレジへ持っていく。2人とも喜んでくれるかな?などと思いつつお金を支払い梱包されて渡されたソレを大事に抱きしめたあと落とさないように、無くさないように学校のカバンに入れる。

あとは安全に帰るだけと軽い足取りで家に向かって歩き出すと同時にわたしは宙を舞っていた。

あれ?いつの間にわたしは飛べるようになったのだろう?と思うほどの浮遊感。いや違う…。これは飛んでるんじゃなく、ソレほどの衝撃が体を弾き飛ばしたのだろうと悪くも理解してしまう。

普通なら衝撃があった時点で脳は痛みへの対策として意識をカットするのだが、今のわたしは違った。意識があり、周りを認知できる。午後5時頃となればもう暗い道沿いを歩いていた数人がわたしを見ている。わたしとぶつかった車はフロントガラスがヒビだらけとなり、おまけに電柱にぶつかってそのまま停止しているようだった。

「ぐっ…ふっ…?」

ブシュッ……

茂みの中に叩き込まれ、全身を打ち付け、何度か跳ね返り最後はドンっと後ろから突かれるような感覚を覚えた。

「な……にこ…ぇ……っ⁉︎」

下を見ればわたしの胸から鋭い枝が生えている。医学的知識がなくてもソレは心臓に確実に刺さっている位置だ、と認知した途端全身が震えゴポッと口から血を吐き出してしまう。

急速に意識が遠のき始めるが、少し離れたところにカバンが落ちているのが見えた。

(ぁ…アクセ…サリー……)

手を伸ばして…いや実際にはもう力が入らず手を伸ばそうとして、先ほど買ったアクセサリーを取ろうとするが

わたしの身体はもうどうしようもなくなっていた。脚はいってはいけない方向へ曲がり、左腕はまるで針金で作ったピッキングツールのようにぐちゃぐちゃだった。

あぁ…なんか知っているこの感覚……

そう思うと同時に限界に達したわたしの意識はこの世からシャットダウンされる。


意識が浮遊する感覚。朝早くに目覚ましで起こされたような時のまどろみの中にいるのと酷似した。しかし一つだけ違和感がある。全身がどうもむず痒いのだ。

意識を手放す前のことを思い出してみよう…。そう、確か両親へクリスマスを買うために街に1人で行った。かなちゃんに教えてもらった雑貨屋へ行き気に入ったデザインのアクセサリーを買った。そのまま帰った…?

青信号…そう、確実に青信号を渡って_______

「…………はっ!?」

全身に相撲取りの方に思いっきりタックルされたような重い衝撃を感じたところで目を覚ます。

わたしは土に…地面に伏していた。両腕に力を入れ立ち上がると、その横にカバンが落ちていた。

「……うん?」

おかしい。

何かがおかしい。

普通に立ち上がれた。それはとても喜ばしいことだ。じゃあ何が気に入らないのかって?『全身にアレほどの衝撃があったこと』そして全身の疼きが残っているということ。

多分わたしは死んだ…はずだ。鋭い枝が心臓を貫いたとか、すごい勢いの車に跳ね飛ばされたのが夢ではない証拠がいくつか揃っているからだ。

一度大きく深呼吸をして全身を見やる。身体中土だらけで服の所々も破けている。関節は少々赤くなってはいるが痛みはなく胸の中央付近左寄りの部分が予想通りと言うべきか円形に破れているのが見えた。そしてわたしは全身的に血だらけで記憶が正しければ吐血もしていたから顔も血まみれになっているに違いない。

今までの経験とこれだけの材料が残っているからには流石に察してしまう。わたしは運良く生き延びたのではなく、あの時のマッドサイエンティスドクターあたりかまた別の力によって不死状態にされてしまっているのだろう。

海に行った時も、運動会の時も、風邪を引いた時も、きっと死んでそこから自己の再生能力で回復していってあたかも運良く生き延びたというのがオチだろう。

「はぁ…」

ため息をついて周囲確認。どうやら公園の端っこの茂みの中の様だ。複数人の警官がなにかを探しているように見える。

一度しゃがんで今度はカバンの中を確認する。

教材等勉強道具は無事、小さな水筒無事、雑貨屋で買ったもの無事、携帯も運良く無事、お財布も大丈夫…どうやらカバンは一緒に吹っ飛んだだけの様で安心した。

水筒の水でハンカチを濡らしでとりあえず顔を拭くことにした。 高価そうなハンカチを血で染めるのには少々いたたまれない気持ちにはなるが顔中血だらけで帰るわけにもいくまい。

顔を綺麗にしたところで携帯を使って家に電話をすると、これはもう焦った声で応答がある。今の場所を伝えると電話は切れ、数分のうちに迎えはきた。出入り口にも警官がいたが隙をついて抜けてくる。

家に戻れば侍女たちが救世主を得た民のように安堵した顔、そして心配マックスな顔で迎えられる。まず風呂に入り身体中の汚れを落としてからきがえる。

部屋に戻りテレビをつけると、ちょうどわたしが轢かれた事故のニュースを報道していた。

車は居眠り運転だったらしく、それに少女が巻き込まれたという目撃情報が入っているがその少女の行方は分かっていない…か。

「あれ?これずっと出てこなかったら面倒くさい事になる?…でもひょっこり当事者ですって出てってもそれはそれで面倒くさい事になるもんな…」

再びため息をついて机を見ると、封筒が置かれていた。

宛名はわたし。送り主の名前はなし。うーん嫌な予感がすると思いながらもその手紙を開いてみる事にした。

『天ヶ瀬いのり様、個人的恨みはございませんがあなた様を近いうちに殺害させていただきますのでどうぞよろしくお願いします。』

12月になったにもかかわらず昼間はそこまで寒くなく寧ろ過ごしやすい気温が続いている気がしますね!ということで青月志乃です。


えー…2日ほど更新出来ず大変申し訳ございませんでした。

理由としては仕事の合間に書いているもので、別に時間があるとどうしても別の事に時間を割いてしまっているってのが一番かもしれません。

といってもこの小説は書いていて自分でも楽しいので頑張って過信していきたいと思いますのでよろしくお願い申し上げます。

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