煽り耐性MAX の俺、無事異世界転移で美少女の笑顔のために最強冒険者を目指します
※とても頭の悪そうな話です
「Hey! Yo! ンッAh…ンッAh…そこのお前ら 俺はバッテラ 俺のバッテリー 既にタップリ 」
「ドゥルルルルルル チュウィチュヴァッファッ キュッビッ キュバババ チュイ キュウィファババババ...」(多分ボイパ)
「ブスじゃイケない 俺のバイブス!そこのベッピン お前スカンピン 身分不相応 譲れ候!HAっ!チェケラー」
…多分今 俺の目は死んでいる。
「あわわ…あれはAランク賞金首のバッテラ兄弟ですよ!独特なラップの煽り攻撃はSランクの威力に匹敵すると言われています…カナトさん 今の不意打ち大丈夫ですか?」
回復要員のソニアちゃんが慌てて駆け寄ってきた。
彼女の薄黄色獣耳とふわふわのシッポは、どちらもピーンとたっていて 敵の登場に緊張していることをうかがわせた。
「あ…うん。むしろ今までで一番何も感じなかったかな。」
表情は死んだけど。
「さっすがカナトさんです!いつもの煽りパワーでばっこんばっこんにしてやりましょう!そして賞金で今夜はダイオウウシのサーロインステーキを…うふふ」
未だとらぬ狸であるのに皮算用でニヤニヤするソニアちゃん…天使だ。サーロインでもテンダーロインでもご馳走してしまいたくなってしまうじゃないか!思い出せ…煽り王 †蒼の花葬惨狂黒騎士†こと悪友ユウヤの言葉を…!
「そのズボン すっげー足短く見えっけど!ダッサ!」
『サクセス!攻撃力アップ!25倍ー!キターッ!』
天から謎の声が降り注ぎ、俺の構えた大斧が輝く。
あとはこれを振り下ろすだけで……
「うぎゃぁぁぁ!なっなんだ…この煽りパワーはっ…チェケラぁ…」
『You Win!』
爆炎と天からのファンファーレでバトルはおしまい。
日本の皆さんなら、「なんだこのクソ展開ww頭おかしいw」と笑ってくれることだろう。俺もそう思う。
俺は蒲生奏斗 19歳。ネトゲが趣味の ごく普通の大学一年生だったが、バイト先のロッカーを開けたら何故か異世界転移してしまい、危うく野垂れ死にしかけた。全くとんだクソ展開だ。
そんな俺を助けてくれたのが、獣人族の美少女ソニアちゃんだった。ソニアちゃんマジ天使。
天からの謎の声とか、回復魔法とか、もしかしたらここはゲームの世界なのかもしれないが…ゲームだとしたらとんだクソゲーだ。
この世界で強さを決めるもの それは魔力でも筋力でもなく『煽り』もっと言えば悪口だ。「お前のかーちゃんデーベソ」でも相手の心が傷つけば攻撃力アップの判定がつく。
騎士とか、斧戦士だとか槍使いとか武器は豊富だけれど、攻撃はどれも武器を振り下ろすだけでオートに繰り出される。職業選びに違いがないなんてこのへんもクソゲーポイントだ。
そして防御力は『煽り耐性』によって決まる。どれだけ煽ろうが、相手の心を傷つけさせなければダメージは0だ。
出会った頃のソニアちゃんに「私…冒険者になりたかったんですけど、煽り耐性が低くて。回復要員なのに仲間の誰よりも先にやられちゃうから誰もパーティに入れてくれなくて…」って真剣に言われた時は、匿名掲示板でもあるまいしなぜ煽り耐性?と思ったが これがこの世界の法則だった。
それを知った時は正直チャンスだと思った。
なんせ俺、煽り耐性には自信がある。
ネトゲでは煽り煽られなんて日常茶飯事だし、一緒にネトゲをやっていた悪友ユーヤに至っては煽り王と称され、そのハンドルネーム†蒼の花葬惨狂黒騎士†は毎日匿名掲示板に晒されていた。リアルでもズケズケ失礼なことを言うナチュラル煽リスト ユーヤのお陰で、俺の煽り耐性は鍛えられてきた。
そして実際に俺は無敵だった。攻撃を食らってもかゆいとも感じない。…というか、こんなシステムなのにこの世界の住人は煽りレベルも、煽り耐性も低すぎる。さっきのがAランクなんて意味わからねぇ…。バトルバランスの調整をもっと頑張って欲しいところだ。
けれど毎回ソニアちゃんに「すごいですカナトさん!」って言われるのは嬉しいし、何より賞金で美味しいものを食べさせたときのソニアちゃんの顔といったら……クソゲー世界に飛ばされたことも一瞬で忘れてしまうほど眼福だ。
最近は俺の評判も上がってきて、セクシーなエルフの魔道士に「アタシと組まない?」なんて誘われることもあったが「カナトさんは…私のパートナーですよね…」って不安げに潤んだ瞳で見つめてくるソニアちゃんマジ最強…。
「はぁぁっ…ダイオウウシ ホントおいしいです…!」
例のラッパー兄弟をブタ箱にぶち込んで稼いだ賞金は、無事ソニアちゃんの胃を満たし、ソニアちゃんの血肉に変わっていく…俺も幸せだ。
「あの…カナトさん。もしカナトさんさえよければなんですが…あの…私と…」
モジモジとするソニアちゃん。まさかこれは……告白の流れ!?
どっ…どうしよう…ソニアちゃんが彼女になったら 今夜からどうすれば!?
「魔王の討伐隊に立候補しませんか?」
それそんなに溜めて言う必要あった?俺期待しちゃったじゃん…
「魔王なんていたのか…知らなかった。」
ずっと荒くれ者の賞金首ばっかり狙ってたしな。
「はい。頭角を表してきたのは本当に最近なんですが、なんでも『蒼の魔王』だとか『魔王ユーヤ』とか呼ばれているそうです。煽りパワーがとにかくすごくて…カナトさんでも対等に渡り合えるかどうか…。危険な旅なんですが…」
…その魔王 知ってる気がする。
「私、カナトさんと一緒ならきっとできる気がするんです!どうか一緒に魔王を討伐して、最強の冒険者になってくれませんか!?」
顔を真っ赤にしてお願いするソニアちゃん…かわいすぎる
「ソニアちゃんの為なら喜んで!」
こうして、俺とソニアちゃんの最強の冒険者を目指す旅が始まった
チェケラ。