宴
城下にある街の中で一番大きな酒屋でレジスタンスのメンバーが各々座っている。
そんな中、カウンターに座っていたスティンガーが不意に立ち上がり、他のメンバーの様子を確認する。
「みんな揃ったか」
スティンガーは火酒を注いだグラスを高く掲げる。
それに倣いレジスタンスのメンバー達も同じようにグラスを掲げる。
「今日はみんなご苦労だった!」
皆が静かにスティンガーの言葉に耳を傾ける。
「今日はもう細かい事は言わねえが、その前に新しいメンバーを紹介しよう」
来いと言わんばかりにスティンガーと同じカウンターの端に座っていたカイムを呼び出す。
「ほれ、なんでもいい。適当に挨拶しておけ」
皆がざわつき始める。
それもそうだ。
なんせ新しいメンバーというのは、あの原初の魔獣と互角に戦い、追い払った張本人なのだから。頭を掻きながらカイムが立ち上がる。
スティンガーからは裏切りの七英雄であることを隠すように言われていた。
無用な混乱を避けるためということとリーダーが裏切りの七英雄を仲間に引き込もうとしたとあっては仲間の統率が取れなくなってしまいかねない。
その気だるそうな態度から一転、まるでスイッチを入れたように様変わりし、明るい表情に変わる。
「新しくレジスタンスに加えてもらうことになったカイム・エストハイムって言います!そして巷では裏切りの七英雄って言われてます!みんなよろしくっス!」
スティンガーは口をあけ、「上手くやるっスl」ってのはなんだったんだと思いながら、同じく事実を知っていたロロナも馬鹿正直にこの場で裏切りの七英雄である事を告白するとは思っていなかったため唖然としている。
しらけきったこの雰囲気を打開するべく、スティンガーがカイムの前に滑り込む。
「はっはっは!俺もさっき聞いたんだがこいつ神器が使えるそうでな!よく裏切りの七英雄と間違えられるそうだ!うちのロロナだって神器使えるし、神器使いが増えるのは俺たちにとっても貴重な戦力の増加につながる!」
物凄い早口で弁明するスティンガー。
今更言っても信じてもらえないだろうと読んでいたカイムは次の後景に驚いた。
「なんだよ。紛らわしいな!」
「裏切りの七英雄は全員死んだんだろ?間違えられるなんて災難すぎるな!」
「これから、よろしくなカイム!」
スティンガーの一言でみんなそれを信じ切った。
内心嘘だろと思ったカイム。
表情を隠そうとしていたがうっすらと出ていたかもしれない。
しかし、それ程までにスティンガーが皆から信頼されているということだろう。
「俺の出所記念と新たな仲間の加入に乾杯!」
それを口切に皆が飲み始め歌い始め騒ぎ始める。
店はスティンガーが貸切にしているから他の客もいないため皆羽目を外している様子だ。
スティンガーが横のカイムの席に座る。
「お前マジでさっきは焦ったぞ。ふざけんじゃねえよまったく」
スティンガーが小声で文句を言い手に持つグラスを飲み干す。
グラスを空にして、新しいものを店員に注文している。
「何事も清廉潔白の身でいたいだけっス」
「ところで飲んでるか少年?」
「酒はあんまり飲まないようにしてるんスよ」
特に苦手というわけではないが、いい思い出がないため、普段からあまり飲まないようにしている。
「なんだあ!白けたこと言ってないで飲め飲め!」
「わかったわかったっス!トイレ行ってくるから後でな!」
酒癖が悪そうなスティンガーの腕を押しのけ席を立つ。
「あーやっぱああゆう場は苦手っスわ」
ふと、あたりを見渡した時に、ロロナが外に出て行くのが見えた。
その視界を遮るように店員の女性が多くの赤ワインのグラスを運んできた。
「お姉さん、ちょっとそれ頂戴」
店員が持っていたワイングラスを二つもらい、外へ出る。




