8話:異世界の旅立ち
一章完。
「え〜、精霊主の皆さん。有益な情報と楽しい時間をありがとうございます、とりあえずイチゴの栽培をするためには気温がそこまで暑くならない所がいいので東北の方に行ってみようかと思います」
「なんだ、もう行くのか?まぁお前の持ってるイチゴも少なくなったし仕方ないから。早く育てろよ」
相変わらずガイアさんはイチゴしか見てないのね、まぁそのおかげで色々貰えたからいいか。
「そうだぞマブダチ。何かあったら俺に直ぐ知らせろ、ドラゴンだろうが国王だろうが灰にしてやる!」
この脳筋ロリっこおっかねぇなぁ。ドラゴンも国王も燃す気ないよ俺は、まぁ善意で言ってくれてるから有り難く聞いておこう。
「さ、聡!わたしの加護がきっと貴方を守るから!何かあったら何でも相談して良いからね!待ってるわ」
お、おう。ネプティーヌさんはお姉さん気質なのかな?そこまで心配されるほどヘマでは無いと思うが?まぁいいや、こっちにも姉が出来たと思えば。
「美容のためにイチゴを待ってるわ〜。ふふふ、これから頑張ってね〜」
クロリースさん、真面目な話しじゃない時は精霊と同じで間延びした話し方するんだね。なんだかこっちの方がおねぇさんっぽいな、ネプティーヌさんには言わないけど。
「それじゃこの世界で生きていく彼に「「「「私達の加護があらんことを」」」」
「じゃ、またね」
「またな!マブダチ」
「連絡待ってるからね!」
「げガンバてね〜!東の国の近くまで私の風魔法で送るから安心して空の旅を楽しんでちょうだい」
そう言ってクロリースさんが何かを唱えると俺の身体が重力に逆らい空へと浮いて行った。見下ろすと深い森の中に開けたら場所、俺と精霊主さん達がお茶をしていた場所が小さく見えた。手を振っているネプティーヌさんとクロリースさんしか居ない様だ、ガイアさんとプロメーテスさんはさっさと帰ったみたい。
てか、俺が高所恐怖症じゃなくて本当に良かった。
「ここからは私が案内しますね〜」
お、いつのまにか俺の周りを4人の精霊達が飛んでいる。人型に見えるオーブの様な姿は今では見る影もなく、可愛らしい女の子の姿をしている。まるで出来のいい値段の高いフィギュア見たいだ。
「それじゃ出発!」
その掛け声と共に俺の身体が前進し始めた、あっという間に精霊主達と話していた所が見えなくなって行った。
これからはこの精霊達と旅するか。異世界に一人じゃなくて嬉しいが、この子達俺の監視なんだよなぁ、まぁ気にしないでおこう。
「聡ちゃん、悪いけど身体を寝かせてもらえるかしら?立ったままだと風の抵抗が多くて魔力を無駄に使っちゃうのよ〜」
「あ、はい。すんません
てかちゃん付けかよ。
てか垂直に立ったまま空を飛ぶとかそんなの聞いたことないもんな。空を飛ぶ時は寝た状態なのには理由があったんだねぇ。それに仁王立ちのまま空を高速で飛ぶのもシュールな絵図らだもんな、納得。
空を飛ぶのはもっと居心地の悪いものだと思ったけどかなり快適なのな。気分は某スーパーなサイ○人だ。
結構スピード出てるけど風はそよ風程度しか感じないし、ゴーグルとか無くても普通に目を開けてられる。高高度の寒さとかも感じないし揺れとかもない、空の旅もこんなに快適ならどこまでも行けそうだ。
俺はこの世界で生きていく、新しい人生を新しい国で新しい世界で。
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「行っちゃったわねぇ」
「そうね」
「うふふ」
「なんなのよ」
「うふふ〜、別に〜」
「ニヤニヤしてるわね、言いたいことがあるなら言いなさいよね」
「随分と彼を気に入ったみたいだな〜って」
「もう!そんなこと「無い訳ないわ〜」
「もうっ!やめてよ、そう言うんじゃ無いんだから。ただ同郷のよしみで良くしてあげただけなんだからね」
「そう言えば貴方もあっちの世界の人間だったわね〜、こっち側に来れる才能が彼にあるのかしら?」
「それは彼次第よね、まぁ私達が干渉出来るのはここまでね」
「それもそうね〜。でも期待してるのでしょう?」
「…そうよ」
「過ごせなかった時間を取り戻したいのね〜」
「もう私のことはいいから、そろそろ帰れば?」
「うふふ〜、そうね〜。お邪魔虫は退散しますわ〜」
「もうからかわないでよね、恥ずかしい」
「ふふふ、それじゃまたね〜」
「…またね」
彼の去った空には雲一つ無かった、大気汚染の無いこの世界の空は抜けるほど青かった。何千年も見てきたこの世界の空は思い出の中のあの世界の空とは似ても似つかない空だった。
「またね、聡にぃ…」
誰にも聞かれなかった囁きは、風の音に溶けて行った。
1章:精霊主達のお茶会 終
後半のフラグはまだまだ回収しない予定です。上手く書けなかったら書き直すカモです。
2章からは更新に三〜四日かかると思います、まだ書き終わって居ませんので。