5話:ガイアは幼女
連投五日目
「良いなぁ…」
机の上で揺蕩っていた茶色のオーブが小さくそう呟いた、確かに自分の友達が二人も変身したのを見ていたわけだからなぁ。子供なら羨ましがるだろうな。
「羨ましい?この子少し自我を持ってるみたいね。私たちじゃこの子は進化させられないからガイアちゃんも呼ぼうかしら?」
「それじゃメティちゃんも呼ぼうかしら?」
「そうね〜、なんだかんだ言っても仲間はずれはかわいそうよ」
なんだなんだ?また誰か呼ぶって聞こえたぞ!?これ以上面倒ごとを増やさないで欲しいのだが…。
「あら?今面倒ごとって思ったわね〜、酷いわぁ。私達は貴方のためにしてるのに〜」
「そうそう、だから文句言わずもらっときなさい」
うへぇ、なんか諭された。実際精霊貰ったって何すれば良いのか検討つかないよ。
「そういえば私の加護の説明していなかったわね。私の加護は草木操作って感じかしら、このように魔力を使って植物を成長させたりできるわ〜」
クロリースさんの手の平から小さな芽が萌え、シュルシュルと成長して花を咲かせた。
ドッキリを成功させて満足げな笑みを浮かべながら一瞬で成長した花を摘、髪に挿した。
多分俺は目が点になっていたと思う、びっくりしすぎて言葉が出なかったから。
「ただ私がしたような事はまだ出来ないわよ〜、貴方の体内には魔素がこれっぽっちも無いからね」
「残念だけど魔素は自分で増やすしかないのよ、私たちが出来るのは貴方の器を広げる事位だから」
「現に私たちで貴方の器を広げたら随分人間離れした大きさになっちゃったのだけどね〜」
なんかとんでもないこと言ってる!?一度死んだだけでは飽き足らず、さらに人外に枠組みされるような事を俺にしたの?てか魔素とか器って何のことなのか。
「あら?何か納得してない顔ね、大丈夫よ悪い事じゃ無いから」
「そうですね、僭越ながら私が説明しましょう。まず魔素とは魔法を使うために必要なエネルギーですね。この世界には大気中にこのエネルギーがあふれていて、どんな物にも大なり小なり含まれています。この世界の物を食べたり飲んだりすると体の中に蓄積されていくのです。そして器はそのまま体内に蓄積できる魔素の量です、普通は厳しい試練でその器を広げるのですが貴方の器は空っぽなので精霊主さま達のエネルギーを使い膨らませたという事ですね」
えらく饒舌になったな〜、この元青いオーブ。
「そういう事よ〜、ただ他人の魔素は体内で自分が使える魔素に作り変えるのは相当な訓練が必要になるの。そのため私たちは一度貴方の器を最大まで膨らませてから私達の魔素を全て抜いたのよ」
俺が知らない間に改造されていたらしい、膨らます度に大きくなるって風船かよ。でもまぁ、そのおかげで魔法を使える回数が増えたって事かな。
なんかRPGで最初の村の時点でMPが桁違いでスタートって感じか、ある意味チートだな。そう考えるとチート万歳って気がしてきたぞ。
「さて説明はこれくらいで良いかしら?ガイアちゃんも来たから本題を進めましょう」
「え?一体何処に?ってうっわ!?」
いつのまにか席についてお茶してる!?え〜、一体いつ来たのさ?全く気づかなかったんだが。
よく見るとネプティーヌさんのすぐ横に小学生低学年くらいの女の子がいつのまにか座っていた。
なんていうか美幼女って感じの整った顔立ちに、ジト目気味に半開きな目からグレーの瞳を覗かせている。髪は輝く銀髪で少し癖っ毛な様で、肩より少し長いくらいの所で少し跳ねている。両手でティーカップを持ってちびちび飲んでいる姿が愛くるしい。
こんな見た目幼女なのに精霊主なのか、すごいなこの幼女。
「次、幼女って考えたら潰すよ」
うへぇ、くぎゅボイスで毒吐かれた。この幼…、女性は気怠げなのにめっさ怖い。冗談とか通じない感じだ。
「それで、要件は何?こんな人間に会うためだけに呼んだんじゃないんでしょうね?」
「あら、そのために呼んだのよ」
「へぇ、ネプはこんな下らない用事で私のお昼寝の邪魔したの?」
うひぃ、めっさ怖い!後半の声のトーンがあからさまに下がってる、体感気温5度は下がって感じる。
「まぁまぁ、要件はそれだけじゃ無いのよ。これを食べてみて、きっと気に入るわ」
「私は貴方達より長く生きてるの、今更そんな木の実一個でどうこう…。うわ〜なにこれ美味しい!!こんな美味しい木の実始めて!」
「言ったじゃ無い、きっと気に入るって」
おお、さっきまでの半分閉じていた瞳がバッチリ開いてる。ジト目でも可愛かったのに目を開いたらさらに可愛くなった、なんかホッコリ。
「お兄さんのイチゴ美味しいかい?それとヘタは取った方が美味しいよ」
「へぇ、これ貴方が作ったんだ。甘酸っぱくて良い香り、美味しい」
「あぁ、それは桃の様な香りのイチゴだからね。他にももう2種類あるから食べ比べてみて」
「あら私たちが食べてる時は教えてくれなかったのは何でかしら?」
「これは明日食べ比べなければですねぇ」
うへぇ、ネプティーヌさんとクロリースさんがなんかご機嫌ななめになった。どないせいって言うんだ、第一すごい勢いで食べてたから美容うんぬんで食べるの止めただけで10個以上食べてはいけないとは言ってないのに。
「あの、食べるのは良いんですがせめて種だけは取らせてもらえますか?それさえあればまた植える事は出来るので…」
「あぁ、なるほどねぇ。どうりで食べる度に嬉しいんだか悲しいんだかわからない顔していたのね」
「それもそうね、貴方の持って来れた異世界の木の実は大切よね」
「なぁなぁ、どれが違う種類なんだぁ」
わかってもらえて良かった、とりあえず種から育てる事になるなら直ぐには収穫出来ないことも伝えなきゃ、あと木の実じゃ無いことも。
「種ってこの表面についてるブツブツなの?」
「このプチプチしたのが種なの?」
「あ!これ少し香りが違う!」
この幼j…、美少女が自由人過ぎる。これはアレだ、オーブも精霊主に似るんだな。なんて自由人。
「あ、それとイチゴは木の実じゃなくてバラ科の多年草の果実です。木にできる実ではないです」
「あら、そうなの?じゃあ直ぐに実をつけるかしら」
直ぐって、そんなに簡単じゃないよって言おうとしたらクロリースさんの手の平にあったイチゴから種が剥がれ落ちた、なんか種のないイチゴってキモイ…。あクロリースさん種無しイチゴ食べちゃった。
「イチゴって種が無いと微妙なんですね」
だろうね〜、慣れかもしれないが種無しのイチゴって微妙なんだよね。
「異世界人さん、これ持ってくださる?」
そう言って手のひらにイチゴの種を乗せてきた、よく見ると少し発光している。その種をひとつつまみ取り何かを囁くとクロリースさんの手の平に有る一粒の種が強く発光した。強い光がやんだ途端種から小さな芽が生えてきて、すごいスピードで葉が増えて行き、花を咲かせ、小さな実が付き、あっという間に真っ赤に熟れた。
俺は目の前で起きたイチゴの急成長を、唖然と見ていることしかできなかった。
何このファンタジー。
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