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天音の想い…



 王都郊外の森では、銃撃音が響いていた。

 この世界で銃を所持・使用しているのは、伊吹達「Defender」しかいない。薄暗くなってきた森では、ゴブリン達が命を散らせていた。普通ならこの世界には存在しないはずの銃弾で…。


「智哉君! その茂みの陰に2体いるよ!」


「了解天音!」

 なぜ天音がゴブリンの位置を知っているのかというと、彼女は探知というスキルを所持しているからだ。天音のスキルは意外と万能で対象に魔力が流れていなくても発見することができるというチートじみたスキルだった。天音の指示を受けた智哉は個人用暗視装置であるJGVS-V8を見ながら、茂みの陰にいるゴブリン2体を射殺した。


「伊吹これで何体だ?」


「30体目だ」


「55体で達成だったな」


「ああ、そうだ」

 智哉は舌打ちをしながら、HK416に新たなマガジンを装填した。


「一体につき約3発か…意外と硬いんだな」


「伊吹君! 智哉君! 新手が来たよ。数…約25体! それに大きいのも交じってる」


「ちっ…いきなり来たな…。おい智哉…ミニガンを乗っけてるハンヴィーを出すから撃てるようになるまで援護頼む」

 M134…ミニガンの通称で知られる7.62mm弾を毎分3000発の速度で打ち出す機関銃だ。生身の人間が被弾すれば痛みを感じる前に死んでいるという意味で無痛ガンとも呼ばれている。


「了解!」

 俺は、M134搭載型のハンヴィーを召喚すると後席のドアからガンナー席に乗り込んだ。撃つ前に無線で智哉と天音に射線から外れてハンヴィーの後ろに隠れているように指示をした。凛はというと…ここに来るまでに乗っていたハンヴィーで寝ている。俺の運転で酔ったそうだ。


「よし…射撃開始だ」

 M134のトリガーに指をかける。M134のモーターが唸りをあげ、6本の銃身から大量の7.62mm NATO弾が撃ちだされる。次第に銃身が赤熱化し、すべてのゴブリンが倒れたところでトリガーから指を離す。


「智哉…射撃が終わった。 確認してきてくれないか? …だいぶスプラッターな光景が拡がってるけど…」


「…了解…。別に吐いても問題ないよな?」


「うん…正直に言うと俺も吐きそうだ…」

 智哉がハンヴィーの陰から出てくる。うっ…という智哉の声が聞こえてくる。俺はハンヴィーを降りて討伐数が自動的に記録されるカードを見た。討伐数がちょうど55体になっていたので、クエスト自体は終了なのだが、ゴブリン等の死体を放っておくと新たなモンスターを引き寄せる事になるので、地面に埋めて処理しなければならない。そのために工兵隊でも召喚できれば良いのだがレベルアップしているか分からないので伊吹は頭を悩ませていた。その時頭のなかでレベルアップを告げる音が鳴った。


「え…レベルアップしたのかよ…」

 そう言って俺は、ステータスと念じた


 松田 伊吹

  LV : 10

  HP : 550

  MP : 2600

 STR : 判別不能

 VIT : 900

 AGI : 判別不能

 INT : 500

 スキル 鑑定 翻訳 格闘 完全操作 兵器召喚 人員召喚 能力付与

 称号 勇者 召喚士

 ※第1世代戦車が召喚可能になりました。

 ※ストライカー装輪式装甲車両が召喚可能になりました。 etc.

 ※能力の一部が制限されています。レベルアップによって解放可能です。


「ははは…戦車のアンロック早くね? とりあえず後で詳しく見ておこう」

 いつの間にか智哉が戻って来ていた。相当にスプラッターな光景だったらしい。


「どうだった智哉?」


「…もちろん全員死んでたぜ…」


「まともに残ってる形残ってるやついたか?」


「でっかいオーガみたいな奴がある程度原型留めてた…」


「そっか…でそれ仕舞ってきた?」


「ああ、仕舞ってはきたぞ」

 

「じゃあ…そいつは売るか…」


「なぁ…伊吹? 凛はまだ寝てんのか?」


「そういえば起きてこないな」


「私見てくるよ」

 天音が自分が行くというが何かあると困るため俺も行くことにした。


「智哉留守番頼むわ」


「え…俺?」


「ハンヴィーの中に乗ってていいから頼むよ」


「へいへい…」


「じゃあ…行こうか」


「うん…」

 ハンヴィーが止めてある森の入り口まで二人で歩き出す。その間は会話らしい会話はなかった。正直に言うと俺は…関 天音が好きだ。元の世界でもあんまり話した事が無かったが、事あるごとに俺は清楚な天音を見ていた。セミロングの黒髪を耳にかける仕草やぼんやりと遠くを見つめる仕草などが可愛かった。眼鏡をかけ直す時にチラッと見える彼女の目はすごく綺麗で俺の憧れだ…。その天音が俺の隣を一緒に歩いている。思春期の男子としては最高のシチュエーションだろう。だが俺は行動に移せない。


 (はぁ…俺ってヘタレだなぁ…)


 歩いている内にハンヴィーを止めている場所まで来ていた。助手席の窓ガラスから凛を覗くとまだ寝ていた。


「まだ寝てるし…。 仕方ない危険だけど今夜はここで野営することにしようか」


「もう夜だもんね…」

 俺は、ハンヴィーに乗り込むと智哉に無線で連絡をした。さっき出したハンヴィーに乗ってくるようにと指示をして。


「とりあえず…野営用のテントとレーションか…」

 そう言って俺は、陸上自衛隊が保有している宿営用天幕と戦闘糧食Ⅱ型を召喚した。召喚したところで俺は忘れていたことを思い出した。この国に来てからまだ一度も風呂に入っていないことを…。


「天音さん?」


「どうしたの?」


「えっと…お風呂に入りたい?」

 少し考える仕草をして天音は答えた。


「…入りたいです…」


「よし…わかった」

 天音の要望として野外入浴セット2型を召喚する。なんと直ぐに入浴出来る形で召喚されたのだ。


「今のうちに凛と入ってきていいよ」


「え…でも最初にお風呂に入っていいの?」


「俺は智哉を待たなくちゃいけないからね」


「じゃあ…お言葉に甘えて入ってきます」

 そう言って天音はハンヴィーの助手席で寝ている凛を強引に起こす形で風呂に連れて行った。その間に俺はステータスを確認することにした。よく見ていると航空機が使えるようになっていた。一部のヘリコプターだけだったが…。だが、これだけでも今は強力な装備であることに違いはない。そんなことを考えているうちに智哉が運転しているハンヴィーが戻ってきた。


「お帰り智哉」


「ただいまって…風呂あるじゃんか…」


「あ…今は入るなよ。 凛と天音が入浴してるからな」


「え…覗かないの?」


「アホ…そんなことしたら射殺されるわ」


「そ、そうだな…」


「そういや智哉戦闘中にレベルアップの音が頭の中でしたか?」


「ああ…確認したけど、体力とかMPが上がってただけだったぜ」


「レベルは?」


「レベルは7だったな。伊吹は?」


「レベルは10で…戦車が召喚できるそうだ…」


「ミニガンで倒しまくってたおかげだな…。 戦車も召喚可能になったのか?」


「まだ第1世代だけだから、使うことはないだろう…」


「M1A1とか90式戦車が召喚出来るようになれば使うんだろ?」


「まぁな…」

 話しているうちに、凛と天音が風呂からでてきた。そして俺と智哉も風呂に入る。風呂から上がると4人で戦闘糧食を食べた。食べ終わるとスコップで穴を掘って地面に埋めた。そして歩哨を決める。今回は俺と智哉で交代することになった。


「じゃあ伊吹は9時から3時までな。頼むぜ」


「長くね?」


「気のせいだ」

 俺は腕時計を見た。現在時刻は9時半…約4時間半の歩哨の時間だ。凛と天音が宿営用天幕で、智哉は自分が運転してきたハンヴィーで寝ると言っていた。それから約2時間程が経過した。その間俺は暇つぶしとして色々な銃を召喚しては消していた。『世界で最も多く使われた軍用銃』としてギネス世界記録に登録されているAK-47や米軍の主力銃器のM4A1や陸上自衛隊の89式小銃等を召喚していた。その時テントから天音がでてきた。


「伊吹君歩哨お疲れ様」


「あぁ…ありがとう。天音さんはどうしたの?」

 彼女は俺の隣に座って空を見上げた。


「眠れないから…夜空を見ようと思ってね…」


「月が出てるけど…星が綺麗だね…」


「うん…」

 すると天音さんは、夜空を見るのをやめて俺に顔を向けてきた。


「ねぇ…伊吹君ってさ…好きな人とかいる?」

 俺は返答に困った。なぜなら自分の一番好きな人が俺の横に座っているのだから…。


 (仕方ない…この際はっきり言うか…)


「いるよ…」


「そうなんだ…。好きな人いるんだね…」

 

「天音さん…」


「どうしたの?」


「正直に言おう…俺は…天音さんの事が好きだ…」

 彼女の顔を見ながら告白する。天音の横顔が月の光で照らされてほんのりと紅くなっているのがわかった。


「そっか…伊吹君が言ってくれたのなら私も言わなきゃいけないかな…」

 そう言って彼女は俺に向き直った。


「私も…伊吹君の事が好きです。付き合ってください…」

 天音さんから衝撃の言葉が飛び出したことによって俺は呼吸が止まりそうになった。なんとか息を吸って心を平常心に保つ。


「俺も…天音さんと付き合いたい…」


「…いいの?」


「いいよ…それに…告白されて嬉しい」


「ありがと…」

 そういって天音さんは俺の頬にキスをしてきた。


「…私…何してるんだろうね…いきなり…。ごめんね…」

天音は立ち上がるとお休みなさいと言ってテントに戻っていった。俺は意識が飛んでいたが直ぐに正気に戻った。その後は特に何も起きなかったので3時に智哉を起こして歩哨を交代してハンヴィーで朝までぐっすりと寝た。



どうも時雨です。

最後の展開はいかがでしょうか? 甘さは伝わりましたか?

次話もよろしくお願いします

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