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作戦会議


 第1ヘリポートに駐機している米陸軍第160特殊作戦航空連隊……通称Night StalkersのMH-60L Direct Action Penetrator(DAP)は左右のスタブウィングに取りつけられたM230機関砲やM134D ミニガンの点検等が行われている。伊吹は自分のHK417を背中に回すと機長のクリス中尉に話しかけた。


「やぁ、クリス中尉」


「お久しぶりですマスター」


「今回も中尉の操縦かい?」


「えぇ、そうです」


「じゃあ、王宮の中庭に強行着陸しても問題なさそうだな」


「うまく決めますよ」


「頼んだぞ」


「了解」

 敬礼し終えた中尉は機体の点検作業を再開した。その後直ぐに特戦群8名を乗せた業務車4号が到着し、伊吹は降りてくる隊員達の装備を見ながら呟いた。隊員たちの中には特戦群長の曽根1佐の姿もあった。


「流石Sだな……HK416にM4カービンか。それにサプレッサーまで付いてるし……」

 特戦群の隊員は曽根1佐を除いて全員がバラクラバで顔を覆っていた。


「気を付けっ!」

 曽根1佐の掛け声で特戦群8名が整列し敬礼する。


「休め」


「今回の任務は私達の護衛だが、万が一戦闘になった場合は各自の判断で射撃せよ」


「全員搭乗!」

 伊吹の声で全員がMH-60L DAPに搭乗を始めた。全員が搭乗すると機体は空気を叩きながら上昇しはじめ、王宮へと向かった。



 王国の市内では、隣国のジーク公国から避難してきた人々が空を飛行するものを驚愕の目で見ていた。


「何だあれは!」

 男は上空のヘリを指さす。


「……羽虫?」

 隣にいた女性はおっとりとした動作で回答した。


「あんな上空を飛ぶ羽虫がいるかバカ!」

 その様子を慣れたような目で見つめるのは数日前から伊吹達が操縦するヘリコプターを何度も見ている人々であった。伊吹は地上でそんな事が起こっているを知る由も無い。無線の周波数をいじっていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「この声は……カール中佐とシロボコフ中佐……か」

 無線を聞いていると荒れた息遣いと風を切り裂く音が聞こえてくる。


「もしかして……ドッグファイトしてる?」

 


 王国の海上ではVF-84の隊長であるカール中佐と第23戦闘機航空連隊所属のシロボコフ中佐がそれぞれの愛機を駆ってDACT(異機間模擬格闘訓練)をしていた。Su-35SとF-14Aが互いに戦闘機動を取り合い激しいループをしている。


「……古い機体のくせに素早い動きをしやってこのっ……」

 最新鋭のSu-35Sを操るシロボコフ中佐が悪態をつきながら操縦桿を動かしF-14Aを追っている。対して、カール中佐は猫のような素早いターンでSu-35Sを翻弄していた。


「……は……流石……ロシアの新型だ……」

 カール中佐は機体を左にロールさせ速度を上げた。シロボコフ中佐もスロットルを開け増速する。が、F-14Aは突如ブレーキを掛けた。Su-35Sはトムキャットをオーバーシュートしてしまった。


「……Fox3」

 Su-35Sに向けてF-14AはM61A1バルカンを発射した。砲身が回転するだけで20mm弾が発射される事は無い。統合司令部の演習評価システムには、Su-35SがM61A1で撃墜されたとの判定が出された。


「……負けた……。カール中佐、後で奢らせて下さい」


「……すまないな」

 2機の戦闘機は機体をターンさせると基地への帰路へと着いた。

 

 伊吹は無線の周波数を元の値に戻すと、窓の外を眺め呟いた。


「新しく道路でも建設した方がいいか……。人でごった返している道を車両で走るのは危険すぎるな」

 同じように外を見ていた曽根1佐は伊吹の意見に賛同した。


「その方がいいですね。東北方面隊隷下の第2施設団丸ごと召喚してもらえれば作業は早く終わると思いますよ」


「流石に部隊編成単位が団ってのは……まだ難しい気がしますね。どの位の人数が召喚出来るか分かりませんからね」


「確かに団は多いかもしれませんね。ですが、隷下の第10施設群くらいならば行けるのではないでしょうか。それでも700人はいますけどね……」

 苦笑しながら曽根1佐は代替案を提示してきた。


「会議の場で提案してみるか……」

 ヘリはいつの間にか王宮の上空に到達していた。ゆっくりと高度を下げる機体が着陸しようとしているのは中庭だ。綺麗に刈り揃えられた芝生の真ん中には伊吹が前に召喚した周りとは不釣り合いなコンクリート製のヘリポートが鎮座している。MH-60 DAPは激しいダウンウォッシュをコンクリートに叩きつけながらヘリポートへと機体を着陸させた。地面に接地したことを確認しサイドドアを開けて降りるとヘリはエンジンを停止させた。伊吹は整列した特戦群の8名に指示を出した。


「4人は俺達の護衛をしてくれ。残りの4人はヘリの周囲に展開して機体とパイロット、ガンナーの護衛を頼む」

 

「了解」

 指示を出し終わるとアタッシュケースとHK417を持って中庭の出入り口へと曽根1佐を含めた6名で向かった。出入り口のドアには淑やかなメイドが待機していた。メイドに促され軍務卿やソレンセン騎士団長やゴルフ海軍司令官と騎士団とは別の組織である陸軍の司令官アーマンド・マクマホンとの会議場所へと移動した。扉を開けて部屋に入ると軽く一礼して席に着いた。机の上に置いたアタッシュケースから資料を取り出しそれぞれに渡した。


「では、会議を始めようか」

 軍務卿の言葉で会議が始まった。


「まずは先ほどお配りした資料の説明から始めましょう。これが我々の現時点での総兵力となります」

 資料を手にした伊吹はそれぞれの戦力の説明を始めた。一通りの説明の後に質問の時間になった。軍務卿が手を上げ伊吹に質問をした。


「この資料を見る限り陸軍の戦力が極端に少ない気がするのだが……」


「陸軍については現時点で何が必要なのかという判断をまだ下していないので……そこには特記しておりません」


「そうか……では……後ろにいる者達は何者なのかな。人前で顔を見せぬというのはいささか失礼ではないか?」

 軍務卿は伊吹の後ろにいるバラクラバで顔を覆っている特戦群を指差した。


「申し訳ありません。ですがバラクラバを外させる事はさせません。まぁ、簡単に説明致しましょう。彼らは……不正規戦つまり敵陣での破壊工作、後方撹乱等を行う部隊の人間です」

 軍務卿は納得のいかない表情をしながらも伊吹の話を聞いていた。その後いくつかの質問を経てこれからの作戦を話し合った。


どうも時雨です。

前回の投稿から時間が経ってしまいました。

申し訳ございません。

感想や質問待ってます!

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