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戦力増強

 


 伊吹は自分の執務室で各々から提出された書類を確認していた。

 時刻は既に夜の12時を回っている。


「……艦隊拡張に戦闘機部隊の増強、陸軍の召喚……ん…」

 温くなったコーヒーを飲みながら書類をめくる手を止めた。視線を向けた先にはソファに横たわって寝ている天音がいた。伊吹は椅子から立ち上がると戦闘服の上着を手に取り天音にかけた。そして天音が掛けている眼鏡を外して机に置き数分程天音を眺めると、椅子に戻って作業を再開した。


「Su-47…Su-35S…MIG-35…MIG-1.44それぞれ4機ずつの小隊に……」

 ボールペンで書類に殴り書きで必要な兵器を記入していく。一通り書き終えると書類を机の端に置いてそのまま突っ伏した。伊吹はそのまま目を閉じた。



「朝だよ、伊吹君」

 体を揺すられ目を覚ました。


「あ、あぁ…おはよう……」

 目を擦りながら天音を見た。壁掛け時計を見ると針は7時半を指していた。


「コーヒーとココアどっちが良い?」

 天音は手に持ったカップを見ながら言った。


「コーヒーでいいよ」

 そのまま天音は執務室の隣にある給湯室に入っていき、直ぐに2人分のコーヒーとココアを両手に持ってきた。コーヒーを受け取ると滑走路に面した窓を開けて定時哨戒に飛び立つ航空自衛隊所属のP-3Cを見送ると、殴り書きをした書類を眺めた。飲み終えたカップを机に置き、基地内専用の内線電話をとった。


「もしもし、業務車3号を司令部施設の前に出しててくれ。運転手は要らないよ」

 手短に用件を伝えて、電話を切った。


「さてと……シャワー浴びてハンガー行って港行って……」

 

「朝ご飯は?」

 天音がコーヒーカップを片付けながら聞いてきた。


「朝は要らないかな……そんなに腹減ってないし……」

 不意に伊吹の腹の虫が鳴った。思い返してみれば昨日の昼から何も食べていない事に伊吹は気付いたのだ。


「サンドイッチぐらいだったらシャワー浴びてる間に作れるよ?」


「ありがと……」

 伊吹は着替えを持って執務室を出る。行先は隊員共用のシャワールームだ。一人用の個室に入りさらっとシャワーを浴びて着替えた。執務室に戻ると、机の上に皿に乗ったサンドイッチ2切れが置いてあった。


「うまそう…いただきます」

 サンドイッチを手に取り頬張った。食べ終わると、皿を持ち給湯室のシンクに置いた。隣で洗い物をしている天音に礼を言うと、執務室の机の引き出しからUSPを取り出した。マガジンを外しローダーを使い.45ACP弾を込めていく。込め終わるとマガジンをUSPに装填した。そしてスライドを引き、コック&ロック状態となったUSPタクティカルをホルスターに仕舞った。引き出しを閉めて立ち上がると窓を閉めて天音と入り口へと向かう。司令部施設前の駐車場には自衛隊に業務車3号の名で納入されているトヨタ・プレミオが止まっていた。受付で鍵を受け取り、ドアを開けて乗り込んだ。


「プレミオか……クラウンが良かったな……」

 ぶつくさと言いながらエンジンをかけシフトをDに入れてアクセルを踏んだ。ジョリーロジャースのF-14Aが整備を受けているハンガーの隣にある空きハンガーの入り口にプレミオを止めた。


「さて……Su-47…Su-35S…MIG-35…MIG-1.44召喚」

 ハンガー内が一瞬眩しくなるが直ぐに光が治まり、目の前に16機のロシア製戦闘機とそのパイロット、整備員が並んでいた。


「第23戦闘機航空連隊所属ディミトリー = シロボコフ中佐であります」

 ロシア航空宇宙軍の制服を纏う男性が敬礼し、それに合わせて全員も同じ動作をする。


「初めまして、総司令の松田 伊吹です」

 伊吹は後ろの戦闘機群を見まわした。


「ここにある機体で実戦配備されているのは……」


「Su-35Sだけです」

 シロボコフ中佐はゆっくりと呟いた。


「ベールクト(Su-47の愛称)もとい……ロシア機は美しいですね……」


「ありがとうございます……」

 

「では、早速飛んできてください。機体の慣らしもかねて」


「了解」

 伊吹は敬礼してからハンガー入り口に止めてあるプレミオに乗ると港へ向けて走り出した。シロボコフ中佐は伊吹を見送ると、全員に指示を出した。指示し終えると整備員は機体を点検し始め、パイロットはハンガー脇にある更衣室で飛行服に着替え始めた。


「潜水艦っているかな?」

 伊吹は運転しながら天音に質問した。


「四天王倒す時に使えると思うよ?」


「海中から魚雷攻撃か……。使えるな」

 話している内に港に到着した。今、接岸しているのはこんごうだけだ。きりしまは訓練のために出港している。車から降り、何も停泊していないバースに来ると、原子力空母でロイヤル・メイセスやダイアモンド・バックスの母艦であるCVN-76 ロナルド・レーガンを召喚した。


「……デカい……」


「……そうだね……」

 2人は目の前の空母を見上げた。乗船するとロナルド・レーガンの艦長が待っていた。


「ロバート = ウッド大佐であります。総司令どうでしょうか、このGipperは?」

 フレンドリーなアイルランド系アメリカ人の艦長は制帽のひさしを上げながら聞いてきた。


「良い艦ですね」


「光栄です」


「ロバート大佐、今日の午後から洋上で艦載機の発着艦訓練をしてもらえますか?」


「了解しました。で、機種は?」


「VFA-102とVFA-27のライノが8機にVF-84のトムキャットが8機ですかね。一応これから増やしてきますけど」


「ハンガーに航空機が居ないのは寂しいですからね」


「では、頼みますね」

 ロバート大佐は制帽を被り直すと、ピシッとした敬礼をした。その後別のバースに移動し、米第7艦隊所属のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦CG-62 チャンセラーズヒル、CG-67 シャイローを召喚した。そのついでに海上自衛隊初の非大気依存推進(AIP)潜水艦であるそうりゅう型潜水艦1番艦のそうりゅうも召喚した。


「よっと……こんなもんかな」

 伊吹が運転するプレミオは港湾地区から出ると基地の離れにある建物へと向かった。その建物にはハンヴィーや陸自の軽装甲機動車数台が仕舞える車庫兼倉庫が設置してある。


「さて……陸上自衛隊特殊作戦群……召喚」

 光が晴れる。伊吹達の目の前に現れたのは中央即応集団隷下の特殊作戦群だ。


「総員敬礼!」

 一人の合図で全員が敬礼した。


「特殊作戦群長の曽根 凛太郎一等陸佐です」


「総司令の松田 伊吹です」


「曽根1佐、今から30分後に1番ヘリポートに8名の隊員を完全装備の状態で寄越してください。私達の護衛をしてもらいたい」


「了解しました」


「それと、必要な装備、施設を書類にして提出してください」


「それは何でも良いのですか?」


「常識内の物であれば構いませんよ」


「了解しました」

 

「総員解散」

 伊吹は解散と口にすると軽装甲機動車を5台と業務車4号を2台召喚した。建物を後にして司令部施設の執務室に戻ると現在の戦力をまとめた資料を人数分印刷し、アタッシュケースに仕舞うと1番ヘリポートへと向かった。



 

どうも時雨です。

だいぶ纏まった戦力になってきましたねぇ

感想や質問待ってます!

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