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デート

 


 伊吹は、自分の背中に何かが当たっているような感覚で目を覚ました。サイドテーブルから手繰り寄せたG-SHOCKを見るとデジタル液晶ディスプレイは午前8時を示していた。ベッドから起き上がろうとするが天音が脚を絡ませているためベッドから起きだせなかった。


「なんで天音が…って昨日そのまま落ちてたんだっけ…」

 伊吹は昨日の夜の状況を思い出した。しばらくしてから脚を引き抜いてベッドから立ち上がった。いつもなら智哉が寝ているベッドには、鈴木 優依が仰向けの状態で寝ていた。


「智哉は…他の奴らの部屋か…」

 伊吹はつぶやきながら着替え始めた。コンバットパンツを穿き、太ももにホルスターを括り付けコンバットシャツを着た。そしてミネラルウォーターとH&K製の拳銃であるUSPタクティカルと9mmパラベラム弾の弾薬箱を召喚しサイドテーブルに置いた。寝ている天音を起こさないようにベッドに腰かけると、弾薬箱を開けてUSPのマガジンに一つづつ入れていった。USPにマガジンを装填してスライドを引いて最初の銃弾を薬室に送り込み、USPのコントロールレバーを上に上げてコック&ロック状態してホルスターに仕舞った。


「さて…こんなもんか…」

 伊吹が呟くと反対側のベッドで寝ていた優依が起きていた。


「お、起きたね。おはよう」


「え、あ、おはよう。って…あたしここで寝ちゃってたの?」


「ああ、そうだね」


「あの…智哉君は?」

 優依が恐る恐る聞いてきた。


「あいつなら他の部屋で寝てるはず」


「ベッド奪っちゃったってこと?」

 伊吹は頷いた。


「…どうしよう…」

 優依は頭を押さえて悩み始めた。伊吹はそんな優依を横目に天音を起こした。肩を揺すると直ぐに目を覚ました天音は寝ぼけているのか、いきなり伊吹に抱きついた。


「…おはよう天音…」

 伊吹のこの声を聞いた天音ははっと我に返った。


「…えっと…おはよう…伊吹君?」

 天音は伊吹に気付くと直ぐに手を離した。伊吹は手に持っていたミネラルウォーターを天音に渡した。


「あ、ありがとう…」

 受け取ったミネラルウォーターを飲んでいる天音を見ながら伊吹は言った。


「目は醒めた?」

 天音はペットボトルを両手で握りながらこくりと頷いた。伊吹は微笑むと頭を抱えている優依に話しかけた。


「優依、今日は何時くらいに行くつもりなんだ?」


「確か…9時くらいって言ってたよ」


「OK…」

伊吹はそう言って部屋を出た。部屋を出て中庭に行くとAS 332 シュペルピューマを召喚した。召喚した機体の周囲を歩いて点検を終えたところで凛と智哉が中庭に出てきた。


「こいつを操縦すればいいのか?」

 智哉が機体を見ながら言った。


「落とすなよ?」

 

「落とさねぇよ」

 智哉は伊吹の冗談を笑いながらあしらうと正操縦席ドアを開けて座席に座った。そして凛にM1911とH&K MARK 23と.45ACP弾の弾薬箱を渡す。受け取ったM1911とMARK 23を箱に仕舞うとシュペルヒューマの機内に置きに行った凛に頼むぞと言うと、伊吹は部屋に戻る。部屋では天音が準備を終えて待っていた。少しして中庭からAS 332が離陸していく音が聞こえてきた。


「行ったか…」

 

「そうみたいだね…」

 

「よし、俺たちも行こうか。って、護身用の拳銃渡さないと…」

 伊吹はグロック19を召喚すると天音にマガジンを装填した状態で渡した。


「ありがと」

 渡されたグロック19を天音はカイデックス製のホルスターに仕舞う。金貨数枚と銀貨を入れたポーチをPCWCに着けた伊吹は戦闘服の袖を捲り天音と一緒に部屋を出た。玄関を出て門まで歩いていく。門を抜けて街に入った。街は活気があふれている。道の真ん中を商人が乗った馬車が行きかい、商店の店先では、冒険者がポーションか何かを値切っている。


「どこ行く?」


「…服が欲しいかな…」

 流石に戦闘服しか着れないのは嫌なんだなと思いながら、伊吹は服が欲しいと言った天音を少し歩いた先にあった服屋へと連れて行った。服屋の中に入ると、様々な服がハンガー等に掛けられて売られてあった。伊吹は何となく服を見ていたが天音は色々な服を見て、合わせていたりしていた。最終的にはカーディガンや白色のフレアスカート等、数着を購入した。その後は、月海亭なる食堂でコロラト王国の一般的な料理を食べた。月海亭に入る前に購入した天音の服はマジックバッグに仕舞ったため手ぶらの状態で街を歩き兵舎に戻った。兵舎に戻ると、伊吹と智哉の部屋に入りホルスターから取り出したUSPとグロック19をサイドテーブルに置くと、マジックバッグから購入した衣類をベッドの上に出した。天音はベッドの上に置いている服を何着か手に持った。


「…着替えるから…後ろ向いてて」

 伊吹は天音に背を向けると目をつむった。5分くらい待つと後ろから見ていいよと言われ目を開けて振り向いた。そこには白のフレアスカートと水色のトップスを纏っている天音が立っていた。


「…可愛いよ…すごく似合ってる…」


「ほんとに?」


「ほんとだよ」


「ありがと…」

 天音は嬉しそうに笑った。

購入した数着の服を一通り着こなす天音の姿を見ながら、伊吹はベッドに腰かけるとPCWCを外し戦闘服の上着を脱いだ。脱いだ上着を畳むと、そのまま横になった。


「智哉達が帰ってくるまで昼寝しない?」

 

「いつもの服に着替えるからちょっと待ってね」

 天音が着替えるのを横目でチラッと見ながら伊吹は待っていた。キャミソールとコンバットパンツという格好でベッドに横たわった天音は伊吹の腕に頭を置く。


「腕しびれてきたら言ってね?」

 

「多分大丈夫だよ」

 先に天音が瞼を閉じたの見た伊吹はそれに続く形で眠った。

 

どうも時雨です。

前回から少し時間が経ってしまいました。

申し訳ありません。

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