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騒がしい夜…

 

  ダンジョン攻略から戻ってきた伊吹は部屋で休んでいた。時刻は夜の8時である。智哉は他のクラスメイトの部屋に遊びに行っている。


「暇だ…。誰かの部屋に遊びに行こうかな…」

 そう考えているとドアをノックする音が聞こえてきた。


「伊吹君、入っていい?」

 ドアをノックしたのは天音のようだ。入っていいよと返すと、天音がドアを開けて入ってきた。伊吹はベッドから起き上がり、座り直した。


「えっと…伊吹君の隣に座っていいかな?」


「ああ、いいよ」

 天音は伊吹の隣に座った。


「どうしたの?」


「あのね…ソレンセン騎士団長から聞いたんだけど、明日は訓練がお休みなんだって。だから、一緒に…デートしない…?」


「え、ああ、いいよ」


「…ありがとう…。でも、智哉と凛さんには内緒ね?」


「ああ…そうだな…っ!?…」

 突然、天音は伊吹を押し倒し顔を近づけてきた。彼女は伊吹のたじろいだ顔を見ながらいたずらっぽく笑う。そして小さい声で呟いた。


「付き合いはじめてからまだ5日しか経ってないけど…もっと恋人らしいことしてみない?」


「例えば?」


「抱きしめあったりとか…」

 伊吹はその言葉を聞いた瞬間に両手を天音の後ろに回すと自分の体と天音の体を密着させた。天音は驚いて小さい悲鳴を出すが、伊吹は気にせず彼女を抱きしめていた。


「これでいいかな?」


「うぅ…いきなりなんて…反則だよ…」

 天音の顔が薄く紅に染まる。


「この前の…仕返し…」

 桃のように紅くなった天音のおでこにキスをする。そして、天音が下になるように動いた。傍から見れば伊吹が天音を押し倒したような格好になった。


「攻守逆転…かな」


「…いいよ…好きにして…」

 伊吹は天音が着ているキャミソールの裾に手を入れようとした。その時、突然ドアが開いた。ドアを開けた人物はベッドの上で行為を始めようとしていた伊吹と天音の姿を見て固まった。2人は急いで立ち上がると服の乱れを直して、部屋を開けた張本人である鈴木 優依の腕を掴むと部屋の中に引き込んだ。


「えっと…優依? どうかした?」

 優依は天音の友達で、元の世界では吹奏楽部に所属していた。


「…ご、ごめんなさい…」

 優依は涙目になりながら謝った。とりあえず彼女を落ち着かせるためにベッドに座らせると伊吹は水を注いだコップを差し出した。優依は受け取った水を一気に飲み干した。


「落ち着いた?」

 天音が聞くと優依はもう大丈夫と答えた。


「それで…何の用かな?」

 伊吹は優依に質問をした。


「…天音に話があって来たんです…。一応ノックはしたんですけど、返事がなくて…入って大丈夫なのかなと思って入ったら…その…」

 優依の声はだんだんと小さくなっていった。


「ノック…してたんだ…聞こえなかった…」 

 伊吹と天音は顔を見合わせると恥ずかしくなって顔を伏せた。


「うん…俺達が悪かった…」


「あ、大丈夫だよ…別に気にしてないから…」


「…いや…気にしてるでしょ?」


「……」


「ああ…ごめん…。で、天音に話があって来たんでしょ? 俺は外に出てるからその間にどうぞ」


「あっ、伊吹君もいてください」


「俺も?」

 優依はこくりと頷いた。


「では、明日お休みになったのは分かるよね?」


「その件で私も伊吹君のところに来たんだけど…」


「え、天音も?」

 天音は頷くと、伊吹と恋仲になったことや、明日の予定を話しだした。伊吹は途中赤面したりしていたが二人は気にする事無く、話を続けていた。天音の話が終わると、優依の話が改めて始まった。


「えっと…明日ね、女子の皆が海に行きたいって言ってるんだけど…その…ヘリで送り迎えしてくれないかなーって…」


「はい? 海に行くために俺のヘリを使いたいと?」


「…そうです…」


「それには護衛というか、男は付くの?」


「同じパーティの男子達6人くらい」


「12人くらいで行くってこと?」


「そうだね」


「じゃあヘリは用意するけど凛と智哉に頼んで」


「えっ…伊吹君が操縦するんじゃないの?」


「俺はしないよ。明日は天音とデートだからね」


「いやいや、智哉君はまだしも凛がヘリを操縦出来るとは思えないんですけど!」

 優依は少し興奮気味の様子で言った。


「凛もちゃんとヘリ飛ばせるぞ? まぁ、心配なのは解るけど大丈夫だって」

 伊吹はニカッと笑うと、サイドテーブルに置いていたM1911(コルト・ガバメント)を太もものホルスターに仕舞うと部屋を出て行った。


「伊吹君どこ行ったの?」

 優依は天音に聞くと、微笑ながら言った。


「智哉へ頼みに行ったんだよ。後は凛にもかな」


「こっちに来てから変わったよね…天音…」


「そうかな?」


「うん…特に伊吹君と付き合いはじめてからね」


「まだ付き合って5日しか経ってないけどね」

 天音は幸せそうに微笑んだ。



 伊吹は部屋を出て智哉がいる部屋へと行った。部屋に入ると智哉にクエストで稼いだ金貨を10枚程渡すとヘリのパイロットを凛としてくれと頼んだ。智哉は金貨の渡されたせいか二つ返事で了承した。そして凛の部屋にノックして入った。凛は、ベッドに横になりながらM92Fを眺めていた。


「あれ、伊吹どうしたの? 天音ならいないよ」


「天音なら俺の部屋に居るよ。ついでに優依も一緒だけどな」


「で、何の用?」


「明日、他のパーティの奴らが海に行きたいって言ってたんだよ。それで俺にヘリの操縦をして欲しいって頼んで来たんだけど、俺は明日外せない用事があるから智哉と凛に頼みたいと思ってさ」


「ふぅん…智哉はOKしたの?」


「金貨渡したら二つ返事でOKしたよ」


「あたしは金貨は要らないけど…他のハンドガンが欲しい」

 どうやら凛の要求はハンドガンのようだ。伊吹は太ももに括り付けてあるホルスターからM1911を取り出すと凛に手渡す。


「コルト・ガバメント…明日使ってみてもいいかな?」


「いいけど…誰にも渡すなよ」

 伊吹はそんなことは起こらないと思っているが万が一を考えて凛に言った。


「大丈夫…信頼して。あたしは誰にも渡さないよ」


「うん…信頼はしてる。それと、弾薬は明日の朝渡すからな」

 凛からM1911を返して貰うと、部屋を出て自分の部屋へと戻った。部屋では天音と優依がベッドに横になって寝ていた。


「寝るの早くないっすかね…まぁ…仕方ないか」

 伊吹は自分のベッドですやすやと寝息をたてて寝ている天音の髪を撫でるとぶつからない様にベッドに腰かけた。その後少しして智哉が部屋に戻ってきたが、自分のベッドが使われている事に気づき、とぼとぼと先ほど遊びに行った部屋に伊吹が召喚した寝袋を持って戻っていった。


「さてと…どこで寝ようかな」

 伊吹は少し考えると、光魔法の灯りを消して天音の隣に寝そべった。


「明日のヘリは…AS 332でいいか…」

 AS 332 シュペルピューマはフランス・アエロスパシアル社製のヘリコプターで、日本では各県警や自衛隊等が導入している大型汎用ヘリコプターである。


「…寝るか…。それにしても…さっきのは蛇の生殺しだったな…」

 伊吹は寝返りを打った天音のおでこにキスをする。伊吹は意識をまどろみの淵へと誘われた。




どうも時雨です。

日常とは言えませんかね…

次話はもっと日常感を出すつもりです…

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