オウルベアとの戦闘
ダンジョンの広間に軽機関銃であるM249の射撃音がこだましている。異世界のダンジョンにM249を持ち込んでいるのは勇者のなかでも伊吹率いる「Defender」しか存在しない。40人の勇者は3階層目のフロアボスを倒し、4階層目に来ていた。途中で遭遇したモンスターを他の勇者と協力しながら倒してきた伊吹達は、それぞれが所持している銃のマガジンを交換した。交換し終えると先頭にいたクラスメイトがフロアボスの部屋の扉を開けた。扉の先には全身が鉄で出来たアイアンゴーレムが鎮座していた。
「…よりにもよって鉄で出来てるゴーレムかよ…」
伊吹は舌打ちをするとHK417を構えた。柊羽が攻撃開始と告げるとクラスメイトが攻撃を始めた。アイアンゴーレムは侵入者の存在に気付いたのか、立ち上がると近寄っていた勇者目掛けて、鉄でできた拳を振り下ろした。狙われた勇者は間一髪でそれをかわすと体勢を整えて反撃を開始した。だが、鉄で出来ているゴーレムに刀身を叩きつけても火花が散るだけだった。
「…そりゃはじかれるだろ…」
伊吹はアイアンゴーレムの体をある程度距離を置いて観察していた。そしてアイアンゴーレムの胸の中心に宝石のような物がはめ込まれているのを発見した。
「あの宝石壊せばアイアンゴーレム死ぬんじゃね?」
伊吹はHK417のダットサイトを覗くとアイアンゴーレムの胸に埋め込まれている宝石を狙って射撃した。発射された7.62mmフルメタルジャケット弾は宝石に着弾する。が、胸に埋め込まれた宝石は銃弾をはじいた。赤く発光している宝石は銃弾を受けたにもかかわらず、傷一つ付かなかった。
「あー…マジか…。7.62mmで傷つかないとか頭おかしいな…」
伊吹は頭の中で少し考えると、対物ライフルであるバレット社のM82A1を米海兵隊独自に改良したM82A3(M107)を召喚した。召喚したM82A3を地面に置くとパーティの中でマークスマンライフルであるG28E2を使っている天音を呼んだ。
「天音、ちょっと来て」
天音は直ぐに伊吹の元へと駆け寄った。近くでは智哉と凛が味方に当てないようにM249とM92Fで射撃している。
「こいつでアイアンゴーレムの胸に埋め込まれてる赤い宝石を壊してくれる?」
M82A3に、12.7mmFMJ(フルメタルジャケット弾)の10発マガジンを装填しながら話した。
「分かった。任せて」
伊吹は天音にM82A3を預けると柊羽にゴーレムの動きを止めてもらうに頼んだ。その間に天音は一緒に召喚した土嚢の上にM82A3を置いて射撃の体勢をとっていた。魔法を使う勇者達によって動きを止められたアイアンゴーレムに向けて天音がスコープを覗きながらM82A3の引き金を引いた。箱型のマズルブレーキによって反動が抑えられ、銃口から飛び出した12.7mm弾はアイアンゴーレムの宝石に向けて飛んでいく。12.7mm弾は赤く発光している宝石に着弾すると1発でひびを入れた。天音は2発目、3発目と引き金を引いた。アイアンゴーレムの胸の宝石は4発目で砕け散った。宝石を失ったアイアンゴーレムは膝をつくように倒れた。
「やっぱり天音は凄いな…」
伊吹は天音の狙撃の腕に舌を巻いていた。天音の周りにはクラスメイトが彼女を褒めるために集まっていた。伊吹は自分の彼女である天音を誇らしく思っていた。
「さて、そろそろ次の階層に行こうか」
柊羽が声を上げた。この声にクラスメイトは気を入れ直した。天音はゴーレムの宝石破壊に使ったM82A3を伊吹に返すと自分のHK417とM93Rにそれぞれに新しいマガジンを装填した。次の階層に降りるための準備を終えると通路をさらに奥へと進んでいった。通路の途中で出会ったモンスターは勇者に攻撃をする前に全て倒された。そして勇者達は、5階層目のボス部屋の扉の前に来た。
「よし…騎士団長の話によるとこの部屋が最後だそうだ! 気合い入れていくぞ!」
「「「「「応!」」」」
40人が鬨の声を上げた。柊羽が扉を開き勇者達が中へと入る。ボスの部屋にいたのはオウルベアのつがいだった。オウルベアとはフクロウの顔と熊の体を合成して出来た魔獣である。オウルベアのつがいは勇者達に気付くと大きな声で威嚇してきた。
「智哉!あいつの頭…特に目の周辺に弾丸を浴びせてやれ!」
伊吹は智哉に指示を出すと、ブローニングM2重機関銃と地上戦闘用のM205三脚架を召喚した。110発のベルトを装填するとM2重機関銃をオウルベアに向けトリガーを引いた。オウルベアの周囲にクラスメイトがいないことを確認すると手始めに3連射した。3発の12.7mm弾はオウルベアのつがいの片方の脚に連続して直撃する。直撃した弾丸はオウルベアを転ばせた。転んだオウルベアは頭を伊吹の方に向けている。伊吹はオウルベアの頭部に向けてM2のトリガーを引いた。洞窟内にM2の乾いた銃撃音がこだまする。女子や騎士団員は耳を塞いで銃撃を見ていた。60発程発射すると片方のオウルベアは動かなくなった。が、死んでいないほうのオウルベアは他の勇者を狙って攻撃していた。
「くそっ…ちょこまかしやがって…」
伊吹は悪態をつくとM2の銃座を離れ、HK417を構えた。が、オウルベアの周囲には近接先頭を主にしている勇者がしきりに剣を振っていた。伊吹は射撃できないことを悟るとオウルベアに接近して持ち替えていたM1014を至近距離でクラスメイトに当てないように撃ち始めた。12ケージ9粒弾はオウルベアの躰に多数の銃創を作るが効果が薄いようだ。装填していた8発を撃ちきると、今度はスラッグ弾を7発装填した。大型動物狩猟用のスラッグ弾は散弾ではなく単発弾である。そのため、発射直後の弾丸の運動エネルギーは大口径ライフル並みであるが、装薬の性質と重い弾頭重量により初速が遅く、大きい弾体形状により空気抵抗が大きく速度低下が大きいため遠距離では威力が落ちるが、伊吹はオウルベアからわずか7mのところでスラッグ弾を撃った。スラッグ弾はオウルベアの腹に命中し、血を流させた。伊吹は2発、3発と立て続けに射撃し、装填していた7発全てを撃ちきると、後退して先ほど使ったM2の銃座に戻った。オウルベアはM1014から放たれた7発のスラッグ弾によって深手を負ったがまだ倒れなかった。伊吹は周りにいるクラスメイトに射撃することを伝えると、M2に装着しているベルトリンクの残弾が無くなるまで撃ち続けようやく倒した。
「はぁ…終わった…」
伊吹は指をトリガーから放すとダンジョンの床に寝ころんだ。周りではクラスメイトが集まり互いを労っていた。M2を片付ける為に立ち上がると、柊羽が声をかけてきた。
「お疲れ、伊吹」
「お疲れさん…」
伊吹と柊羽はこの二言だけの会話を済ませるとそれぞれが率いているパーティへと戻った。そして、ボス部屋の奥にある扉を抜けると、最初にいた地点に戻ってきた。そこで、ソレンセンが勇者全員に労いの言葉を掛けてから再び召喚したMH-53Eに乗り込んで王宮へと戻った。
どうも時雨です。
次話はまったりとした話を上げたいと思います!




