第2階層まで…
コロラト王国の海沿いにある洞窟ダンジョンの入り口では、伊吹達勇者40名とソレンセン騎士団長以下9名の計50名がそれぞれのパーティに別れて待機している。彼らは王宮で出陣式を執り行った後に伊吹と智哉が操縦するCH-53E スーパースタリオンに乗ってこのダンジョンまで来た。ソレンセン騎士団長によって最初に入るパーティを決められている。
「最初に入るのは柊羽達のパーティでいいか?」
「伊吹達じゃないんですか?」
「あいつらは最後だ」
「はぁ…わかりました」
柊羽は納得がいかないようだ。なんやかんやで入る順番が決まった。伊吹たち以外の各パーティに騎士団員が一人付く形でダンジョンに入っていく。
柊羽達のパーティがダンジョンに入る。パーティに付いているのはソレンセン騎士団長だ。ダンジョンの中はヒカリゴケが壁中に張り付いていて意外と明るかった。通路を進んでいると多数のスライムと遭遇する。柊羽は王宮の地下にある武器庫から選んだ聖剣を抜くと魔力によって刀身に火を纏わせる。そしてスライムに切りかかった。切られたスライムは魔核を残して消えた。他のメンバーも炎属性の魔法でスライムを倒していた。柊羽達はスライムの落とした魔核を拾わずに進んでいく。しばらく歩いていると数匹のコボルトが錆びたナイフを持って柊羽達の方に向かって突撃してくる。
「コボルトだ! 近づかれる前に倒すぞ!」
「「「おう!」」」
柊羽は詠唱を始めた。
「炎よ…我が敵を燃やし尽くせ…ファイヤーボール!」
ファイヤーボールはコボルトの体に向かって飛んでいった。顔面に当たったコボルトは顔を焼かれて死んでいった。柊羽のまわりでは様々な詠唱がされ、どんどんとコボルトを倒していった。それからゴブリンやアンデッド等を倒し、フロアボスのいるところまで来た。後ろからは少しの間を開けて勇者達のパーティが次々と入ってきていた。まだダンジョンに入っていないのは伊吹達だけになっていた。その伊吹達はダンジョンの入り口で地面に腰を下ろしていた。
「はぁ…暇」
伊吹はHK417に装着したフラッシュライトやダットサイト、サプレッサーが外れる事が無いか確認しながら呟いた。
「そろそろ入っていいんじゃないの?」
早く入りたそうな凛が聞いてくる。前のパーティが入ってからもう既に10分程経過している。
「そうだな…いくか…」
伊吹が立ちあがる。それに続いて凛、天音、智哉も立ち上がった。それぞれがメインアームにしている銃のセーフティを解除し、HK417を構えた伊吹を先頭にダンジョンに入っていく。
「明るいな…。フラッシュライト要らなかったかもな…」
伊吹がボソッと呟いた。すると、伊吹の声に気付いたのか、棍棒を持ったゴブリンが接近してくる。伊吹は直ぐにダットサイトを覗いてHK417の引き金を引いた。撃ちだされた1発の銃弾はサプレッサーによって発射音が抑えられながらも、ゴブリンの頭に着弾しその命を奪った。
「さすが7.62㎜弾だな。5.56㎜弾だと3発程必要だったのに」
「でも、ホントはショットガンで倒したいんだろ?」
「まぁな…でもゴブリン相手にショットガンは弾の無駄だろ」
智哉は俺の答えに苦笑した。
「ははっ…違いない」
伊吹と智哉は笑いながら歩きだした。しばらく歩くと今度はゴブリンの団体様と遭遇した。伊吹は舌打ちをすると、メインアームであるHK417を後ろに回してM1014に持ち替えた。隣では智哉がM249での射撃を開始した。洞窟内にMINIMIのけたたましい銃撃音がこだまする。あっという間にすべてのゴブリンが倒された。
「いやー、ミニガンの時よりマシだなー」
銃撃されたゴブリンの死体を見ながら言った。
「この間のあれは確かに酷かったな…」
「この間って?」
凛がゆっくりと近づいてきた。
「忘れたのか? ああ…凛は酔って寝てたもんな」
途端に凛の顔がゆでだこのように紅くなるのが分かった。
「…そ、それは伊吹の運転がへたくそ過ぎるから…」
「そんなにへたくそだったかね…」
「知らん」
智哉は伊吹の言葉を軽くあしらうとさらに奥に進んでいった。
「なんか素っ気ないな…。まぁ、いいか」
伊吹達はモンスターを簡単に倒しながら進んでいき、すぐにフロアボスの部屋の前に着いた。先に進んでいたパーティは伊吹達が来るのを待っていた。全員が揃ったところで柊羽が扉を開けた。フロアの真ん中にはコボルトキングとその取り巻きのコボルト達がいた。伊吹達以外の勇者は自分達の立ち回りがしやすい位置に移動した。すぐに攻撃が開始される。
「コボルトキングがフロアボスねぇ…」
「伊吹! そんなこと言ってないで撃ってくれよ!」
「このままじゃ誰かに当たるぞ?」
「拳銃持ってる奴いないのかよ!」
「天音と凛しか持ってないよ」
この言葉を聞いた天音と凛はサイドアームのM93RとM92Fに持ち替えるとセーフティを解除して射撃を開始した。洞窟内に乾いた音が反響する。伊吹と智哉は自分達が所持している銃が仲間に当たると危ないという事でフロアの壁際で休んでいた。一応、2人ともHK417を構えてはいるが。
「はぁ…俺達もハンドガンの方が良かったかね…」
伊吹は智哉に問いかける。
「かもな…」
コボルトキングとの戦闘は早めに終息した。そのほとんどが天音と凛の拳銃での射撃のおかげだ。2人は敵の急所に正確に射撃をして倒したようだ。
「おお…早いな…」
「伊吹に智哉…なんでコボルトキングを倒すのに手を貸してくれなかったんだよ」
柊羽と一部の男子が詰め寄ってくる。
「はぁ…今の俺たちの銃じゃ…お前らに当たるって言ったはずだけどな」
クラスメイトから罵詈雑言が飛ぶが軽くあしらいながら歩き出し強い口調で言った。
「じゃあ次のフロア戦は皆休んでていいよ。俺と智哉だけで潰すから」
俺はHK417をM1014に持ち替えると天音と凛にM93RとM92Fの予備弾倉を渡しにいった。そしてソレンセンから同時に2パーティで進むように言われたので柊羽達のパーティと一緒に階層を降りて進んだ。その途中に現れたモンスターは、柊羽達の出番を作ることなくすべてM1014とM249で沈めた。そして2層目のフロアボスの部屋まで来ると後続を無視して入っていいと言われたので、扉を開けて入った。そこにいたのは人位のサイズのカエルだった。
「…カエル…?」
ソレンセンを除いた全員の動きが止まった。
「おい! 止まるな! 動け!」
この言葉で全員が我に返った。
「と、とりあえず倒すか。柊羽達は休んでていいからな…。智哉…援護は任せたぞ」
「おうよ」
伊吹は動き出すとHK417を構えて大ガエルへ向かっていった。HK417の射程に入ると大ガエルの腹に向けてフルオートで射撃した。銃弾は大ガエルの軟らかい皮膚を食い破ると臓器や血管に命中し、大量の血を流れさせた。智哉も負けじと大ガエルのサイドからM249の200発のベルトを撃ち切るまで引き金を引き続けた。この弾丸の嵐のような攻撃で大ガエルはわずか数分で沈黙した。後に残ったのは大量の薬莢と血の池だった。
「あぁ…キモイ…」
「それな…」
智哉と2人で共感していると天音と凛が駆け寄ってきた。
「2人とも大丈夫?」
天音が心配そうな目をしながら聞いてきた。
「うん…大丈夫…」
HK417のマガジンを交換しながら言った。そしてM1014に12ケージ9粒弾を装填した。いつの間にか柊羽も寄ってきていた。
「伊吹…大丈夫か? 確か…お前はカエルが嫌いだったよな?」
「……」
伊吹は少し俯いた。
「すまん伊吹!」
柊羽は両手を合わせて謝りだした。伊吹は顔を上げて大丈夫だよと笑った。そして少しだけ壁に寄りかかった。フロアボスの部屋には勇者達のパーティが続々と集まってきていた。
どうも時雨です。
ダンジョンに何を出現させればいいかわからなくなりました…




