ディアボロスvs現代兵器
王都北門の周囲では騎士団員や市民の人々がモンスターの死体や人だったものの死体を片付けていた。
その傍ら伊吹達はソレンセンと今後の作戦について話していた。マイケル大尉のM1小隊とイライジャ中尉のストライカー小隊は装甲車と戦車のペアを作って周囲を警戒していた。余った1台のM1はドーザーブレードを装着して作業をしている。
「ソレンセンさん…もうジーク公国は敵に占領されたとみて良いのではないですか?」
「それは早計だろう。あの騎士団の鎧を見てみたが、あれはジーク公国のエクベルト辺境伯の所有部隊だ。前に国の式典で見たことがある」
「というと、まだ首都は問題ないと?」
「多分…だがな。それに君たち以外の勇者の訓練も全然だ…」
伊吹達勇者はまだここに転移してから数日しか経っていない。その中でも、まともに戦えるのは現代兵器を駆使してクエストを受けている伊吹達「Defender」だけだ。柊羽達は対人戦闘はおろかモンスターとも戦ったことがないのだ。
「予定を繰り上げて明日にでもダンジョンに行くか…」
「俺たちもですか?」
「できればな…。君たちの援護があれば柊羽達も安心して戦えるだろう」
「分かりました。明日はそちらに行きましょう。輸送もお任せください」
「助かる」
「それともう一つ聞きたいことがあるのですが?」
「答えられることなら答えよう」
「魔王を討伐した後の俺たちの扱いはどうなるんですかね?」
この質問にソレンセンは黙り込んだ。口を開いたのは少し経ってからだ。
「私の推測で良ければ話そう。魔王を討伐し終えた君たち勇者の扱いは…王国の領土拡大に動員されるだろう…。今の国王様はあんなヒョロヒョロとしているが結構な野心家なのだ。だからこの件でジーク公国が滅びた場合、直ぐにジーク公国を併吞するだろう。従わない者は…死か奴隷だろうな…」
「今この段階で国王を討てば…」
「領土併呑は起こらないと思うがな」
「俺の能力を…悪用して領土を拡大することも予想されるか…」
「確かに君の能力は国王にとっては魅力的だろう…。だが、君を拘束して武器を召喚させたとしても誰も扱えないさ。ここにいる3人を除いてはな…」
「その前に離反しても大丈夫ですかね…」
「離反してなにをするんだ?」
「国でも作りましょうか…。どうせ俺たちは2度と元の世界には帰れないんでしょう?」
「そうだ…。呼び出しておいて返すことが出来ないのは私も謝る。済まなかった」
ソレンセンは頭を下げて謝った。
「国というか世界の存亡の危機ですからね。仕方ないと思いますよ」
「そう言ってくれると助かる…」
「さて…これからどうしましょうかね…」
その時無線が入った。
『マスター、そちらに向かう謎の騎兵集団を発見。数は5名。全員が武装している模様。今なら主砲で殺害できますが?』
「いや殺さなくていい。全車に集合命令を」
『了解』
警戒に出ていた6両の車両が伊吹たちがいる地点に向けて動き出した。
「もう少しでここに謎の騎兵集団が来るようです」
「そうか。騎士団員を前に出して良いか?」
「いえ、こちらの戦車を出しますから」
俺はドーザーブレードを装着している戦車を北門の前に移動させるよう命令した。命令を受けたM1は直ぐに車体を門に並行にし砲塔を幹線道路に向けた。
「しかし…この戦車という兵器はすごいな…。君たちが持っている銃も凄いが、これがあれば戦争は変わるだろうな」
「ええ、変わりましたよ。実際に俺たちの世界ではね」
話しているうちに馬に乗った騎兵集団が近づいてきていた。智哉と凛はHK416を構えて敵集団に照準を向けている。天音は北門の塀の上でバイポッドを立てたG28E2のスコープを覗いていた。すでに実弾は装填済みだ。
「何者か! 止まれ!」
ソレンセンが誰何をするが、騎兵集団は答えようとしない。すでに他のM1やストライカーは距離を開けて待機している。それぞれのガンナーが車載の7.62㎜機関銃に取りついている。
「名を名乗らなければ射殺する」
俺はショットガンのM1014を構えながら言った。すると、騎兵集団の真ん中にいた騎士の体が突然ディアボロスに変化した。ディアボロスは翼を広げ上昇した。
『我はディアボロス…魔王デモゴルゴンの手下なり』
ディアボロスは低い声で告げた。
「ははっ…この世界でディアボロスなんかに会うとはな…」
『人間が何を言う…』
「マイケル大尉…。弾種APFSDS…装填」
小声で無線に命令を言う。無線機からは了解という声が返ってきた。
『異世界より来訪したる勇者よ…魔王を倒したくば、ジーク公国とその海上に出現した四天王を倒すべし…』
「あんたは四天王じゃないのか?」
『否…我は四天王ではない』
「ならここで倒していいかな?」
『剣を持っていないではないか…その状態でどう倒すというのだ』
「凛、智哉…今すぐM1の後ろに隠れろ。マイケル大尉、カウント5で射撃してくれ。目標は奴の胴体だ。外すなよ?」
智哉と凛がドーザーブレードを装着しているM1の後ろに隠れた。
「了解、マスター」
「行くぞ…5……4……3……2……1……Fire!」
カウントをしている間、俺は走った。カウントし終わった瞬間、マイケル大尉が搭乗しているM1からAPFSDS弾が発射された。発射されたAPFSDS弾は装弾筒が弾体から分離する。分離した弾体は侵徹体だけが飛びディアボロスの胴体の中をマッシュルーム状に広がりながら貫通した。
『ぐぉおおお…我の…体に…何を…した!』
ディアボロスは痛みに苦しみながら地面に落下した。俺は無線に向かって叫んだ。
「ディアボロスより右側にいる車両は移動せよ! 味方に当てないように次弾発射!」
ディアボロスはさらに2両のM1から2発のAPFSDS弾を喰らう。一発は下がっていた頭部にもう1発は下腹部を直撃し抜けていった。
「智哉!凛!射撃開始!」
戦車の左右から飛び出した凛と智哉が射撃を開始する。弾丸は頭や胴体を集中して叩いていた。
『武器を…持っていない…人間が…我を…倒すなど…あり得ない…。貴様ら…何処の世界から…やって…きた…の…だ…』
ディアボロスはそう言い残すと地面に倒れた。
「射撃中止。全車警戒しながら集合」
「了解」
「さて…ジーク公国内に出現した奴と海上に出現した奴か…」
俺はディアボロスの死体を見ながら言った瞬間頭の中にレベルアップの音が響いた。
松田 伊吹
LV : 30
HP : 850
MP : 3700
STR : 判別不能
VIT : 990
AGI : 判別不能
INT : 790
スキル 鑑定 翻訳 格闘 完全操作 兵器召喚 人員召喚 能力付与
称号 勇者 召喚士
※2015年までに生産・使用された航空機が召喚可能になりました。
※2017年までに生産・使用された陸上兵器が召喚可能になりました。
※1995年までに製造・就役した艦船が召喚可能になりました。
※港湾施設が召喚可能になりました。
※能力の一部が制限されています。レベルアップによって解放可能です。
「お…やっと艦船が召喚可能になったか。って…港湾施設?国でも作れってか…」
周りを見ると凛や智哉もレベルアップしたようだ。
「騎士団長、ディアボロスの最期の言葉を聞いてどう思いましたか?」
「…これは不味いかもしれんな。直ぐに王宮に戻って上申しよう」
「了解しました」
俺は陸上自衛隊の高機動車を召喚する。M1小隊とストライカー小隊に北門の警備を任せると騎士団長を乗せて王宮へ向かった。ディアボロスの遺体をマジックバッグに入れてから。
どうも時雨です。
登場させるモンスターで悩んでおりましたがソロモン72柱の中から選ぶ事に決めました。




