後処理
伊吹達4人は、先ほど倒したケルベロスの死骸のそばに来ている。俺はケルベロスに手を触れると収納と言った。するとケルベルスの死骸が光の粒になって消えた。ケルベロスは伊吹が持っているマジックバッグに収納されたのだ。このマジックバッグは、騎士団長であるソレンセンから貰ったものだ。
「さて…他の魔物は放っておいていいか…」
「別に問題ないっしょ」
「よし帰るか…」
そう言ってMH-60Lに乗り込みクリス中尉に話しかける。
「クリス中尉、王都南門まで飛んでくれ」
「了解」
機体がどんどんと上昇していく。数分で王都の南門の正面広場についた。正面広場では、騎士団や冒険者がバリケードを作って魔物の侵入を防ぐ準備をしていた。が、魔物はもう既にすべて倒したのでこのバリケードは無用の長物になってしまった。そして、バリケードの周囲で作業をしていた騎士団員や冒険者は目を見開いて伊吹達の乗るヘリコプターを見ていた。挙句の果てには、弓矢を構えているものもでてきた。
「攻撃態勢に入ってる人がいるなぁ…。仕方ない…ラぺリングするか…」
俺はそう言いながらMH-60Lからロープを垂らし、ハーネスを着けて懸垂下降をしていく。俺に続く形で残りの3人が降りる。天音がちゃんと地面に降り立ったことを確認して、クリス中尉に無線で礼を言うとMH-60Lを消去した。後ろでは、突然ヘリが光の粒子になって消えたことにも驚いていた。
「お、ソレンセンさんもいるじゃん」
その時柊羽が俺の方に歩いてきた。
「どうした柊羽」
「モンスターの集団はどうした?」
「全部倒したよ…ケルベロスもな」
「何で倒したんだよ…」
「さっき消去したヘリに乗って上空から銃で殺した。ケルベロスは…爆撃で殺したけどな」
「もう航空機が使えるレベルまでなったのか…」
「航空機だけじゃないさ…1990年までに製造・使用された陸上兵器も使える。船はまだ召喚できないけどな」
俺は苦笑し、柊羽も俺に続いて苦笑した。
「じゃあ…俺たちこれからギルドに行って精算してくるわ」
「そうか…じゃあ王宮でな」
そして4人で冒険者ギルドに向けて歩きだした。
「伊吹これからどうするよ?」
「明日は昇格試験でも受けるか…。さっさと魔王の居場所突き止めたいからな」
「そうだな」
ここで、天音が話に加わってきた、
「ねぇ、伊吹君」
「天音さん、どうかした?」
「そろそろ違う武器使ってみたいんだけど…いいかな?」
「…忘れてた…。昇格試験のときにでも違う武器だして訓練しよう」
「なぁ…伊吹、戦闘機とか使わないのか?」
俺は智哉からの質問にため息をついた。
「俺たちが戦闘機使うようなクエストあるか?」
「…たぶん…ない…」
「だろ? なら使わなくて十分」
智哉はがっくりと項垂れた。よほど戦闘機が操縦したいのだろう。そうこうしているうちに冒険者ギルドへと到着した。扉を開けて中に入る。ギルド内は閑散としていた。カウンターへ行き受付嬢にクエストの精算をしてもらう。
「クエストの精算お願いします」
依頼書を見せ、ゴブリンの耳を見せる。この耳は証拠としてゴブリンからはぎ取ったものだ。
「報酬です」
俺は銀貨5枚を受け取り、ポーチへと仕舞った。
「あ、素材の買取はどこでしてもらえば?」
「そこのカウンターで出来ますよ」
受付嬢は端にあるカウンターを指さした。
「ありがとうございます」
俺は受付嬢に礼を言うと教えられたカウンターへと行った。
「すいません。モンスターの買取をして欲しいんですけど」
「分かりました。何の買取ですか?」
「ケルベロスとオーガ等々を」
「け、ケルベロス…ですか?」
「はい」
「わ、わかりました。では、こちらへ」
受付嬢に案内され、ギルドの奥の部屋へと入る。部屋の中には眼鏡をかけた初老の男性が鉱石のような物を手に持って見ていた。
「ギルドマスター、買取お願いします」
「分かったよ」
ギルドマスターと受付嬢のやり取りを聞きながら、マジックバッグを取り出す。
「何を買い取ってもらいたいのかな」
「ケルベロスとオーガ等々を」
ケルベロスという単語を口に出した時ギルドマスターの鉱石を見ていた手が止まり、こちらに目を向けてきた。
「け、ケルベロス…だって…」
「はい」
「わ、わかった。買い取ろう…だが、少し時間が掛かってもいいかい?」
「ええ、構いません」
「ありがとう」
俺はマジックバッグからケルベロスを出した。俺たちの前にケルベロスの死体が置かれる。
「…本物だな…」
「本物ですよ」
「これは君たちだけで倒したのかい?」
「そうですね」
「君たちのランクは?」
「全員Fですね」
「…F…だって…」
ギルドマスターの顔が一瞬ひきつったが、直ぐに元に戻ったようだ。
「それで、オーガ等々とは?」
ケルベロスを出した時と同じようにマジックバッグから取り出すと、目の前に穴が穿たれているオーガやゴブリンなどが現れる。
「では、よろしくお願いします」
「ああ…」
そう言って俺たちは部屋を退出する。その後は王宮へ戻り一晩を過ごした。




