第三章11 『実験の結果』
白い空間には複数の存在があった。
その数、四つ。
三つは人の姿をし、それぞれに言葉を交わす。
だが、残りの一つは——、
「————!」
「あー可愛いですねー。はい、よしよし」
「感情込めろよ」
犬特有の鳴き声で何度も吠え、必死に言葉を伝えようとしてくるオダマキ。
だがその想いは叶わず、葵が適当に相手をするだけで。
着ていた衣類は脱ぎ捨てられたかのようにその身を離れており、全裸同然——というか全裸である。
と、さすがにこれではせっかく動物の姿になった彼が不憫なので、薬を提供した本人に問いかける。
「なあエト、翻訳出来るものとかはないのか?」
「さすがにそれはないっス。自分が出来るのはあくまでこんなものくらいっスよ。フェルソナサンなら作れるかもしれないっスけどね」
こんなもの、と言ってため息を吐くエト。
自分を卑下し、フェルソナを尊敬するその様は、謙遜などではなく紛れもない彼女の本音だろう。
だが、彼女が作り出したその薬はたった一言で片付けていいようなものではない。
事実、葵と戯れている動物はどれを取っても違和感のない容姿だ。
柴犬……なのかは彼に問いただしてみないと分からないが、道端を横切っても気にすることなく自然の光景として捉えるだろう。
一つの点を、除いては。
「ちょ、暴れないでください! さすがにその姿は捕まえられませんから!」
奏太の視界を飛び交うのは、オダマキ。小さな獣となった彼だ。
およそ人とも犬とも異なる俊敏な動きで地を跳び、葵から避け続ける。
その動きは奏太の記憶する限りでは、
「……『纏い』の状態よりも速い」
「え? 何っスか、それ」
そう断言することに何の違和感も抱かない。一見ふざけているように見える光景でも、だ。
隣で同じものを見つめるエトに共感を求めるが、首を傾げ訪ねてくるので思わず沈黙。
情報共有を怠った結果なので仕方ないとため息を吐きつつ、忍者のように華麗なパフォーマンスを見せてくれるオダマキを葵に任せ、奏太は簡単に砕いた『纏い』の説明をエトに行う。
やけに真剣な、研究者としての彼女の顔に妙な感慨を覚えながら。
*** *** *** *** *** *** *** *** ***
「——とまあ、そんな感じなんだけど。どう思う?」
説明を終え、改めて奏太とエトは眼前の状況を確認する。
それに対しエトが述べるのは、
「そうっスね……自分じゃなくフェルソナサンの意見を聞ければもっと信頼性が増すっスけど、いくつか。キヅカミさんは『トランス』をどういうものとして捉えてるっスか?」
「どういうもの、か。えーと、体の中にある動物の力——本能みたいなものを呼び起こして混ざる、みたいなイメージだ」
感情の部分に直接関係している以上、『トランス』の力の源はもはや自己という存在とは切っても離せないところにある。
以前その事に関してはフェルソナと言葉を交わしたこともあり、これといって疑うこともなかったのだが——、
「まあその認識で合ってるっス。ただここで問題なのは、その力がどう現れるかってことっスね」
「……? どういうことだ?」
「つまり、ベースを人か動物か、どっちにするかって話っスよ」
「人か、動物か……」
「そうっス。で、今キマダオさんは動物がベースとなってる訳っスけど——」
フェルソナを除いて、反対から名前を呼ばないと気が済まないのだろうか……などという些細なことはともかくとして。
何をベースにして何を足すか。
それが今のオダマキだと真逆に反転しており、犬をベースにして人を足しているという状態になっている、ということなのだろう。
だが、それでは説明の足りない部分もあった。
「じゃあこの速さは? 間違いなく俺と戦ってた時よりも速いし、恐らくは力も格段に上がってる。その理由はどうなるんだ」
絵面だけ見ればギャグそのものだが、もはや目で追うのも難しい程の速さで動き回るオダマキ。
葵も負けじと『トランス』を使っているようだが、もはや差は歴然どころではない。
捕まえようとすれば後ろに回られ、振り向こうと首を動かした瞬間には既に姿が消え。そんな一瞬のやりとりは、有り体に言えば次元が違う。
それは葵が『憑依』しか使えないということを差し置いても、だ。
表情から余裕が消えつつある葵は、決して手を抜いているつもりなどないはずだ。
だというのにこの差は————、分からない。
そんな奏太の疑問に対し、瞑目し思考を巡らせていたエトがポツリと呟く。
「それは例えるなら……そうっスね、数値が変化してるからじゃないかと思うっス」
「……数値? ってことは、まさか」
「そ、そのまさかっスよ。『トランス』を乗算で表すなら、人と動物、それから適性なんかの数値を掛け合わせ、出来たものが能力そのもののパフォーマンスに影響するっス」
「——じゃあつまり、あれは元々の適性を無視して最大値で掛け合わせてるって言うのか? だとしたら、それは」
人と動物の力を最大限に引き出してみせる。
それは、短時間という制限があるものの、瞬間的に化け物じみた能力を誰もが手にすることが出来る、ということになる。
「ただ、一つ問題があるっスけどね」
提供された事実に、背筋が凍るような感覚を覚えた。
元の動物が何であるかによって大きく差が出てしまうものの、それでも、現在の奏太でも太刀打ち出来るかどうかは未知数な圧倒的強さ。
そしてそれを一人ではなく、複数人が使用した場合の地獄絵図が頭に浮かんで————、
「……問題?」
「へ? ああ、そうっス。まあ自分が説明するよりかは見た方が早いっスね。そろそろ解けるんで」
「解けるって、何が————」
問いかけるより先、答えは出た。
それは二人が視線を向けていたオダマキの変化によるものだ。
お手ごろサイズだった体が伸長し、元の原型などこれっぽっちもなかった各部位が、徐々に姿を変えていく。
小さな手足に屈強な筋肉の層に覆われ、元の形を思い出していき——、
「ぁ、が?」
小さなうめき声と共に、人の姿に戻ったオダマキがその場に倒れ伏した。全てを放出し、限界の限界まで何もかもを絞り出したかのように。
……当然、纏う衣類のない全裸のまま。
「——とまあ、使った後にガス欠になることと、服が脱げるなり弾けるなりしちゃうってのがこの薬の難点っス!」
横を見やれば、衝撃的な光景に両目を塞ぐエトの姿があった。
彼女にもそういう女性らしい恥じらいがあったことに喜びがなかったわけではないが、ともかく。
驚きのあまり塞がらない空いた口を頭の回転と共に戻しつつ、深く、ため息をついて言う。
「とんだ欠陥品だろ、これ」
*** *** *** *** *** *** *** *** ***
「————なんかすっげー感じだった」
「はぁ、すっげー感じっスか」
頭を抱えそうになるくらい恐ろしく曖昧な感想を述べるのは、足を崩して座るオダマキだ。
起きてすぐに自分の状態を把握し、衣類を身につけ始めたので良かったものの、実は記憶が飛んでます——なんてことになっていたら笑い話では済まなかっただろう。
「……でも、まだだ。オダマキ、本当に大丈夫か? 記憶飛んでないよな?」
「何の問題もねーよ。オッレの名前は落田真咲。アネキにつけてもらった超絶ウルトラクッソかっこいい二つ名はオダマキ。んで、アニキこと三日月に、その子分の天姫宮と白衣女だろ?」
「奏太さん、あれは重症ですね。実際の強さはともかくとして、ボクは奏太さんの子分ではなく師弟の関係なのに」
「確かに。じゃあやっぱり記憶に問題が……って冗談は置いておいて。良かったよ、何事もなくて」
彼から葵がどう認識されているか判明したところで、奏太は安堵の息を吐く。
少なくとも記憶に問題はない。
それが判明しただけで十分だ。
目覚めた時に記憶がない、そんなことは奏太やフェルソナだけで十分なのだから。
「安心しろよ、三日月。俺は鍛えてっからちょっとやそっとじゃ壊れねー。けど…………」
「やっぱり、『トランス』は使えませんか」
「正確に言うと出来なくはないっス。いわば元の体を傷つけないための防衛反応みたいなものっスからね。ただ、無理にしようとすれば」
「後遺症が残ってもおかしくないくらいに傷つく、か」
葵の漏らした言葉をエトが、続けて奏太が継いで補足する。
つまりはドーピングのようなものと考えるのが良いのかもしれない。
一時的に限界を超える程の絶大な強さを得るが、効果が切れればそれも終わり、と。
何ともリスキーな薬だ。
そう結論づけて——、
「————?」
瞬間、ふっと何かが記憶の端に掠る、そんな違和感があった。
奏太は知っている。この事実を。
だが、いつ、どこで。何のために。
————分からない。
だが、奏太がそれを知っているということだけは確かで。
「奏太さん、どうかしました?」
「ん、ああ。いや……えっと、何でもない」
「何でもない、なんて言葉は……いえ、やめておきます。力が必要であれば言ってくださいね」
「ごめん、ありがとう」
心中を察してくれたのだろう、微笑む葵の気遣いに感謝すると同時、ひとまずは疑問を胸の内にしまっておく。
今は思い出せないとしても、いずれじっくり考えれば答えも出よう。
「……ん、どうしたっスか?」
「いや、他にまだ『実験』するものあるんだろ?」
長期に渡って考えるべき思考を中断したところで、当初の話に帰る。
先程オダマキが飲んだ薬だけでも並々ならぬ効果を目の当たりにすることとなったが、彼女が取り出したものは何もそれだけではない。
ケースに入っていた薬は一つだけではなかったし、タブレットもまだ使用された形跡がない。
となると当然、
「あんまり危なくないものなら続けよう。元々『実験』のためにエトはここへ来たんだ。そうだろ?」
「まあ、そうっスね。ああ、でも——フェルソナサンの心地良い温もりと甘い香り、柔らかでありながらも男らしい感触と美しい声を確かめたかったってのもあるっスけどね! そこは忘れてもらっちゃ困るっスよ! 自分研究者かつフェルソナさんの恋人なんで!」
「忘れようがないけどな。実情はさておき。それじゃ再開するけど……オダマキは難しいよな」
真面目な顔が消え、再び愛の化身としての姿を現したエトを流しつつ、オダマキに目を向ける。
彼は目覚めてからというもの、体調が優れないのか一度も立ち上がろうとしない。
忘れがちになるが、『トランス』を使用しているのといないのとでは動作一つを取っても大きく違う。故に本来の感覚を取り戻せていないのか、あるいは。
「そんな目すんなよ三日月。オッレはすっげえ……いや、ほんの少しだけ体がクッソだるいだけだからよ。あーそれと感覚が戻んのに時間かかるから無理だな、こりゃ」
「隠すなら頑張れよ。……結構負担がかかるんだな、悪い」
「オッレの方こそ悪ぃ。弟分なのにこれじゃ何も出来やしねー」
茶金の短髪をかきあげ、肩をすくめてみせるオダマキ。
言葉はともかくとして、見た目にさほど変化は見られないが、彼なりに気を使わせないように気を張っているのかもしれない。
いや、彼の場合は男の意地と表現するべきか。
「どうして奏太さんが謝るんです。率先して実験台になったのはこのチンピラですし、気に病む必要など一切ありません。むしろ侮蔑の視線でも送ってやってください」
「んだとてめえこら! オッレが今動物の姿になれねえからって、調子乗ってんじゃねえぞこら、あぁん!?」
——と、そこへ二人のやりとりを傍観していた葵が辛辣な提案を奏太に持ちかけてくる。
当然彼の発言にはオダマキも怒りを露わにするが、満足に立ち上がることが出来ず、つんざくような威嚇の声を上げるだけに終わり、
「葵、あんまり挑発するなよ。オダマキも無理に立ち上がろうとしないで休んでろ」
結果、二人を叱りつける羽目になる。
どちらとも抵抗することなく素直に頷くあたり、ある意味似た者同士なような気もするが、まあそのうち仲も良くなるものだと信じよう。
二人は奏太同様に、恋愛感情を特定の相手に抱いているのだから、それぞれの間に共感し、共有できるものもあるはずだと。
「……まあそんなわけで、あとは俺と葵が付き合うよ。エト」
そしてそれは、彼女とて例外ではない。
初対面の時点で距離感など皆無に等しかった彼女であったとしても。
奏太が歩み寄りたいと思えばいつだって。
「オッケーっす! そんじゃ、さっそく気絶したら自動で意識を覚醒させるっていうのを————」
「それはなしの方向性で」
もっとも、抵抗があることは否定出来ないのだが。
*** *** *** *** *** *** *** *** ***
それから数時間の時を経て、『実験』は終了した。
エトが持ち込んでいたタブレットは、『自動覚醒』とやらをデバイスに追加するためらしいが……試すはずもなく。
それを除いたいくつかの実験台になったわけだが、はっきり言って欠陥品ばかりだった。
フェルソナからの宿題だと最後に口にしていたあたり、彼女もまだまだ発展途上の最中なのだろうが、それにしたって何かしらの危険があるのに『実験』というのも如何なものか。
と、まあ気になることも気にするべきことも山ほどあるが、ひとまずは彼女らの界隈ではそれが日常茶飯事なのだと、無理やり納得することにする。
というかそうでもしないと三人の中で一番重症だったオダマキに向ける顔がなく——、
「……あ、あのソウタお兄さん、どうかしたんですか?」
「え、ああごめんユキナ。ちょっと考え事をしてたんだ」
ふいに声をかけられ、奏太の意識は眼下へと舞い戻る。
手元にはまな板と包丁、いくつかの食材。つまりは料理の真っ最中である。
「それにしても、ありがとうな。ユズカ。まさか手伝ってくれるなんて」
「いえいえ! 私も普段からソウタお兄さんに勉強教えてもらったり、カメラとかお姉ちゃんがお世話になってて、えっと、えっと……」
「ユキナ、落ち着こう。包丁が危ない」
奏太はこうして時々沸騰し、包丁を持ったままパニックになるユキナと共に夕食の支度をしていた。
とはいえ今日は特別で、本来ならば芽空が隣に立っているはずなのだが、
「芽空は部屋で考え事してるみたいだから、今日はお休みだ。だからいつもより準備に時間がかかると思ってたんだけど……」
「お役に立てたようで何よりですっ! ……えへへ」
頬を染めて表情を崩すユキナ。
彼女が偶然通りかかって良かったとしみじみ思う。
後で手を綺麗にしたら頭でも撫でてあげるべきだろうか、そう考え彼女に視線を向けて——、
「……ユキナって改めて見ると本当に料理上手なんだな」
「ひぅっ!?」
ついこぼした一言が彼女の心に波を起こしてしまったらしく、人参が飛ぶ。そしてそのままくるくると宙を舞い、綺麗にシンクへ。
……ユズカが食べる人参が減ってしまったが、まあ気にする量ではない。
むしろ気にするべきは、
「ユキナって、あんまり褒められるの慣れてないのか?」
「いえ、アオイお兄さんやリカお姉さん達は褒めてくれるんですけど…………えっと、その。恥ずかしくて」
そう言い、ユキナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
こうなってしまうと何ともやりづらくなってしまうが、奏太がここへきたばかりの頃に比べれば、まだマシな方だろうか。
以前は葵達が側にいてようやく会話ができる……なんて状態だったのだから。
そう、あの頃は。
「————っ」
半年前を懐かしみ、思い出に浸ろうとして奏太は息を詰めた。
そしてその理由は、偶然にも直後のユキナの発言内容と同じで。
「…………そういえばソウタお兄さん、レンお姉さんはまだ戻ってこられないんでしょうか?」
「それ、は……」
——そう、奏太達はユキナに蓮のことを説明していない。
重症でここを離れ、治療に専念している……という嘘のベールで隠された真実。
奏太達はそのベールを外して話すことが出来ないのだ。
何故なら、
「え、っと。まだ時間がかかるみたいでさ。ちゃんと治ったら顔出してくれるよ、きっと」
「そうなんですか……ソウタお兄さんも、会いたいですよね。私もレンお姉さんには謝らないと」
動物園の一件。
彼女が『トランスキャンセラー』を忘れていなければ、蓮がハクアと戦闘を行う必要がなかった。
無論、それに関して奏太はユキナを責めはしないし、とうの昔に自分の中で否定し決着をつけたことだ。だから奏太はもちろん、ラインヴァントの面々は彼女に非がないことを認めている。
だが、
「蓮ならそのくらい笑って大丈夫って言うよ。そうだな……いいの、私が助けたいと思って助けたんだから。なんて風にな」
「ふふっ、確かにレンお姉さんみたいです」
精一杯の嘘を顔に貼り付け、小芝居を混ぜて誤魔化す。
それは彼女が、ユキナという少女が、まだ真実を知って受け止められるような女の子ではないからだ。
——蓮の死。
その原因が自分にあると分かれば、彼女が自身の行いを嘆き悲しみ、傷つくことは誰の目から見ても明らかで。
だからこそ葵や梨佳もそれを危ぶみ、今日に至るまで、一度とて彼女の前では真実を口にしていない。
「ソウタお兄さん、次どうしましょうか」
「ああ、じゃあこのきゅうりに塩をかけて混ぜてくれるかな」
「はい! お漬物……でしたよね、確か」
「そうそう。本当なら時間かけて作るんだけど、今日は色々あったからな」
——とはいえ、彼女もいつまでも子どものままではないのだ。
元々の気質もあって漢字の読み書きは年相応、あるいはそれ以上に出来るようになったし、料理だってそのうち一人でこなせるようになる。
今は周りに守られ、知らないことばかりであったとしても、
「…………あの、ソウタお兄さん」
「ユキナ、どうした?」
「……今度は、レンお姉さんも一緒に秘密基地へ行きたいです」
「————」
「そこでたくさんお話しして、写真撮りたいなって。レンお姉さんが来なくなってから、すごい人だったんだって思ったんです。あんな大人のお姉さんになりたいって、私そう思って……難しいでしょうか?」
ユキナの問いかけに奏太は調理の手を止め、しゃがんで視線を合わせる。
不安の色を空色の瞳に映した彼女と目があい、少し悩んだのち口元を緩めて答えた。
「……そうだな、難しいかもしれない。でも、ユキナも頑張ればきっと叶うよ。俺が保証する。どれだけ蓮が素敵な女の子でも、ユキナだって追いつける。自分の道を見つけられるって」
——いつしか、彼女は知ることになる。
自分が守られていたことを。
向き合わなければならない時が来る。
芽空が過去に向き合うように、ユキナもまた、蓮の死に。
そうして、見つける時が来る。
知って、向き合って——その果てに、自分がどうしたいのか。どうするのか。
「俺もちゃんと見届けるから。ユキナの成長を」
「……は、はいっ! え、ええっと、そのぉ」
「落ち着こうユキナ。今度はきゅうりが飛ぶから」
こうしてすぐに気が動転しているところを見ると、まだまだ時間はかかりそうなものだが——、
「そ、ソウタお兄さん。私、頑張りますねっ!」
「…………ああ」
彼女が精一杯意気込むその姿に、笑みを浮かべる奏太の期待は膨らむばかりであった。




