第三章58 『対等の軌跡』
「く、らえ——!」
「効かねえよッ!」
巨体の右肩口を狙い、飛んで放った左の蹴り。アザミはこれに対し、岩石のような筋肉に力を込めて応じる。
直後衝突が起き、命中こそしたものの、彼にはたいしてダメージとして通っていない。弾かれた奏太は宙に投げ出される形になるが、一瞬の怯みを生み出すことはできたのだろう。続く攻撃は発生しないまま、地面に足をつける。
そしてすぐにアザミに視線を戻すと、
「————ちっ」
銀の巨体に、ちりと違和感が生じた。
最初に変化があったのは頰。一筋、皮膚に亀裂のようなものが走ったかと思えば、それは枝のように分かれて広がっていき、耳の先から尻尾の終わりまで全身を巡って、ガラスが割れるような音を立てながら離散。
順に耳が、爪が、尻尾が、そして最後に牙が。
『昇華』が、崩れ去った。
そしてそれは、
「……本当に、シャルロッテが言った通り」
三分という制限の中でしか『昇華』は発動できないと、証明された瞬間だった。
獣という鎧が剥がれ、そこに残ったのは銀髪金眼の青年アザミ。傷一つ見当たらないのが心にモヤを作るところではあるのだが、ひとまず。
「……体感じゃ、倍以上はあったな」
「あァ?」
「お前の『昇華』には時間っていう弱点があるだろって話だ。そうだろ?」
「————」
シャルロッテが奏太に告げたことを再確認できたところで、改めて本人に問いかけてみる。
すると彼は一瞬目を見開き、驚いたような様子を見せたが、
「よォく見てんじゃねえか。俺に一人で挑むってんなら、そうこなくちゃな」
ギラリとした金眼でこちらを捉え、不敵な笑みを浮かべる。
実際は奏太が見ていたのではなく、シャルロッテからの情報によるものなのだが、それについて訂正するよりも、
「…………お前、焦ってないのか?」
「動揺して何になる。制限があろうと、俺の強さに変わりはねえ。てめえが今、この状態を狙うこともな」
余裕の表れ、なのだろう。
そこまで分かっていて——いや。分かっているからこそ、アザミは奏太にこう言っている。
早くかかって来い、と。
「————」
単純に考えれば、『纏い』のある奏太と、人の姿に戻ったアザミには天と地ほどの能力差がある。息切れや後遺症、そういった類のものは彼には見られないが、普通にやれば奏太の圧勝だ。
だが、
「どう考えても罠だ。……『トランス』、使えるんだろ?」
「ご明察。『昇華』の再発動には少し時間がかかるが、『纏い』に関しちゃ何の問題もねえ。……よく分かったな?」
「師匠がよく言ってたからな。対人戦ならともかく、対『獣人』戦の場合はまず疑ってかかれ、って。お前が『昇華』だけしか手札を持っていない、なんてことは絶対にないからな」
「——ほう」
アザミは確かに自身の、ブリガンテの力に揺るがない自信を持っているし、実際それだけの実力がある。
だが、本当に厄介なのはその先。
勝つためならばどんな手段でも使う、という点だ。奏太たちがどう動くかを予想し、戦略を組み立て、最適の手をうち、じわじわと追い詰めていく。貪欲なまでの勝利への飢えから来るそれは、恐らく芽空たちのところでも余すところなく発揮されているのだろう。
何の考えもなしに奏太が突っ込んでいたら、『纏い』による返り討ちにあっていた可能性も考えると、なおさらだ。
そんな疑いの目を止めない奏太に対し、言葉の通りアザミは何の苦もなく『纏い』を発動。これで何も隠すものはなくなった、とばかりに両手を開いてみせる。
「クイーンには劣るが、適性は高い方だ。だァからまあ——第二ラウンドと行こうじゃねえか、三日月奏太」
「……俺としては、早く終わらせたいんだけどな」
「いィや、ねえな」
彼は首を振り、顎先で後方——体育館、および校舎を示して、
「向こうでも戦いは始まってんだ。お互い、任せるものは任せてここへ来た。なァら、やることは一つだろうが」
「——決着をつける、か」
奏太が結論を出し、動き出したのは直後。
駆けた『銀狼』が右の拳を繰り出してくる。これを奏太は左の上段蹴りで応じ、衝突。骨がぎしと軋むが、わずかに奏太の力の方が上だ。
弾かれるようにしてアザミは後方へ跳躍。奏太は追い討ちとばかりに彼に迫る。
「良い速度だなァ、おい!」
「——ッ!」
しかし、それをアザミは許さない。後方宙返りを繰り返し、体勢を整えると、上下左右、様々な方向から奏太の皮膚を裂いていく。
短剣を思わせるその白爪は、アザミ自身が素早さを増していることもあり、受け止めるのは至難の技だ。
が、
「『昇華』に比べれば、遅い!」
斜め上から振り下ろされる右の引っ掻きを左の掌底ではねのけ、その勢いのまま腕を引き、肘突きを胸元へ。確かに決まった感触があり、奏太は距離を取ろうして——激痛。
「ッ、は、ああああああ!?」
一瞬にして体が燃え上がるように熱くなり、慌てて熱源を確認。
すると、そこに突き刺さられていたのは白牙。そしてその端から流れ落ちていく鮮血。先の肘突きのタイミングで、突き飛ばされるよりも前にアザミは肘に噛み付いたのだ。
「お、まぇ……っ!!」
一秒、一瞬経つ毎に次々と奏太の皮膚を侵食していく牙。脳を先の尖った凶器でほじくり回されているような激痛が駆け巡る。
咄嗟に右足を上げようとするが、僅かに残った理性がそれを停止。代わりに叩き込むのは、牙の刺さった肘ごと体を捻り、振り絞った全力の右拳。傷口が広がったことでさらに痛みが鋭さを増すが、構わずそれをアザミの腹部に目掛けて振り抜く。
「い、つまでもっ、人の肘噛むなっての!」
「ぐ、ぉほ——っ」
さしものアザミも至近距離で、これを食らえばタダでは済まない。牙が離れると同時、地面との摩擦だけでは衝撃をこらえきれず、吹き飛ぶ。
続けて奏太は強く地を蹴って、
「もう……一回!!」
空中を飛んだままのアザミに追いつき、真上から右の回し蹴りを叩き込んだ。
先ほどの拳と今の蹴り、その威力を全身に受けたアザミは何の抵抗もなく、落下。地面を抉り取り、損壊させ、爆風が巻き起こった。
それから、数秒遅れて奏太も受け身を取りつつ着地する。
「…………さすがに、今のは効いただろ」
痛みをこらえて動いた反動で、今にも声を上げて泣きそうなくらい左肘が痛むが、それを必死に修復しつつ、煙の方向へと視線を向ける。
『昇華』の時はまともに攻撃が当たらなかった上、やっと当たっても致命傷になることはなかった。
だが、『纏い』の今ならば————、
「……嘘だろ、おい」
奏太は目の前の光景が信じられず、声が震えるのが分かった。
あるべき結果はそこになく、捉えたはずのものは今もなおそこにある。それはつまり、今の二撃をアザミがしのいだということ。
何故なら、
「お前、もう『昇華』が——っ!?」
煙が晴れたその場所にいたのは、重傷を負って痛みに声を上げるアザミなどではない。
食らわせたはずの拳を防いだ彼の左腕が、衝撃を吸収し、威力を相殺した腰より上が、見覚えのある塊へと姿を変えていた。
「……まァ、驚くのも無理はねえ」
金眼は何の不自由もなく体を起こすと、そのままこちらを見据えて笑みを浮かべる。
素体には不釣り合いなほど大きな銀の巨体。
数分前、奏太が戦っていたのは確かにそれだ。終始全開で行っていた攻撃がほとんど通じていなかったことからも、身体能力の高さ、特にこの場合耐久力には破格のものを思わせる。
——だが、『それ』はあくまで全身に発動していたもののはずだ。
驚きで声を出せない奏太の疑問に、アザミは答える。
「『纏い』を鍛えれば部分的に行えるようになるのと同様に、『昇華』もこォして自由自在に扱うことができる。……想像したくねえよなあ、三日月奏太」
『それ』はまさしく、異形だ。
腹の底に眠る獣を喰らい、世界へ牙を立てて。
『部分纏い』を行う奏太やオダマキが特権というのならば、彼はさらにその上を行く怪物——『終焉の捕喰者』。
「立てよ。まァだ第二ラウンドは終わってねえ。互いのすべてを喰らって、生き残った方が賭けの勝者だ」
「——っ」
部分的に『昇華』を行えるなど、そんな最悪な話があってたまるものか。
解けた後の『纏い』ならば倒すことができる。そう思って、ひたすらにアザミの攻撃を耐えたというのに。
……そうやって、弱気になる心が心の端にはあって。けれど、奏太は下を向かない。
奥歯が砕けるほど体に力を込めて、体勢を低くする。
「きついのはみんな同じだ。だから俺はお前を……ここで超える!」
「来いよ、『ユニコーン』」
——体の奥底が、熱くなるのを感じた。
*** *** *** *** *** *** *** *** ***
体が重い。
「——っぐぉ!?」
頭が割れるように痛んで、喉が焼け付くように乾いている。
「ぎ、ぃああ!!」
呼吸は乱れ切り、どれだけ酸素を取り込んでもこの肺は満足を得ない。底なしの酸欠、そう称しても良いだろう。
けれど体を動かすことをやめない。不可視のこの体しか、もう残っていない。
避けられない以上、こうするしかないのだから。
「——ふ、っは、はぁ」
地面に膝をついていた体を起こし、前方に視線を戻せば、倒さなければいけない相手はまだいる。
何かを言っているようだが、聞こえない。表情も、よく分からない。
でも、
「……あと、ちょっと」
目的地はもう、すぐそこにある。
戦いを終わらせるための鍵が、自分がここにいる意味が。
「————」
後ろから声がするが、やはり音は聞き取れない。重なった疲れからか、はたまた耳がやられてしまっているのか。いずれにしても思い切り息を吸って——駆ける。
世界と一体化し、溶け込んで。
両手のスタンガンに力を込めて、不可視の雷撃を叩き込む。
一人、二人。それから残った三人。
これでもう、残った者は————。
*** *** *** *** *** *** *** *** ***
暗い闇の中、後頭部に当たる、わずかに弾力のある柔らかな感触。
いつの間にか寝ていたのだろうか。芽空は目を開けようとして——違和感。ふっと、自分の体が誰かに触れられる感覚があった。
普段共に寝ている少年や、昔はよく構ってもらっていた兄とも違う。
小さく、か弱い手だ。自分はこの手を知っている。
「————」
薄目を開けて確認してみると、確かにそれは芽空の知っている白金の髪が綺麗な少女。彼女は怒りか悲しみか、こちらの右手を何やら不思議な面持ちで握っており、何故だかそれがひどく懐かしいことのように思えて。
……最後に手を繋いだのはもう何年も前のことだというのに、どうしてこの体は覚えているのだろう。
驚きよりも先に来たのは、そんな疑問と、見知らぬ誰かではなかったことへの安堵。
寝起きでぼんやりとした思考の中、このまま目覚めるべきか、それとも目を閉じているべきか、悩む自分がいたが、すぐに答えは出ることになる。
握られていた右手から温もりが離れたかと思えば、それが移動。長い前髪が指ですくわれ、水で濡らされたタオルのようなものが汗ばんだ顔をそっと撫でていく。
汗を拭き取っているのだろう、それはぎこちない手つきではあったが、ひんやりとして妙に心地よい感覚があった。
「……ん、むぅ」
しかし、それも長くは続かない。
伸ばされた手が首元に差し掛かったところで、くすぐったさが立ち上り思わず声を上げてしまう。
慌てて声を喉の奥へと引っこめようとするが、時既に遅し。相手の少女がそれに気がつかないはずがなく、
「…………起きてたの」
「……え、っと、うん。ついさっき」
瑠璃色の瞳を見開き、驚きを見せる少女——シャルロッテに対し、つい、歯切れの悪い返事になってしまう。
色々とどういうことか聞きたいし、寝たふりをしていたことについても謝りたい。が、ひとまず。
「どうしてその、膝枕?」
芽空がこうして彼女の膝で寝かされていたこと。その理由について問わねばなるまい。
シャルロッテはこれに数秒固まっていたかと思えば、視線を徐々に芽空からずらしていって、
「……床に寝っぱなしなんて体を痛めるし、汚いでしょう。そこらに転がってる愚民どもは当然の報いとしてもね」
ため息混じりに彼女が見つめる先、廊下の奥には計七名にもなる大の男たちが転がっていた。
いずれも抵抗の意思とは裏腹に体が動かないのだろう、反応らしい反応といえば舌の回らない呻き声だけだ。
「————っ」
そうだ。
今になって思い出した。
寝起きのあまり、直前の記憶が曖昧になっていたようだが、この光景は芽空が作り出したのだ。
能力の暴走などではない、自分の意思でこの者たちを無理矢理に戦闘不能にした。……ある意味、暴走だったと言える部分があるのは確かだが、しかし。
今はそれをした理由の方が優先だ。こんなことをしているよりも、早く立ち上がって————、
「ちょ、待ちなさいよあんた。まだ動いたらダメよ。また倒れてもおかしくない状態なんだから」
「でも!」
「あんた、自分の状態ぐらい確認しなさいな。素人目でも分かるわ、明らかに無理のし過ぎ。そうでしょう?」
芽空が体を起こそうとして、それを制止するシャルロッテ。
確かに彼女の言う通り、体は今も高熱を出した時のそれに近く、意識した途端に体が重さを感じ始めた。
理由はもちろん、見当がついている。
「『トランス』の使い過ぎによって蓄積した疲労。限界まで使えば、そりゃそうなるわよ」
敷地内に侵入してからすぐの体育館、ヨーハンとフェルソナの捜索。それから、見張りの場所と数の特定、撃退。そして最後に、今さっき倒した七人の相手。
ダメージらしいダメージは受けていないものの、体にガタが来るのも当然だ。
——そもそも、『獣人』は各個人で適性と使える『トランス』の総量が決まっている。
適性は『トランス』がどこまで発動できるかというもの。ラインヴァントの非戦闘員は少し耳や視力が良くなったとか、そんなほんの気休め程度にしかならないが、戦闘員の葵は『憑依』を、他の芽空を含めた皆は『纏い』まで発動できる。
『カルテ・ダ・ジョーコ』の中でも不完全な『纏い』が多いブリガンテに比べれば、その時点で珍しい方で、能力に関しても異質なものを持つ奏太や希美を含め、優れていると言って良いだろう。
が、それはあくまで適性の話だ。
使える総量に関しては、適性が高いからと言って必ずしも比例して多くなるわけではない。
例えば葵が良い例だろう。彼は戦闘員の中では最も適性が低いが、総量はそれほど少ないわけでもない。戦闘継続能力という面で見れば、むしろ上から数えた方が早いくらいなのだから。
むろん、どちらも高い奏太や蓮、ユズカといった者たちもいるのだが……ともあれ。
生身の体力が多少絡んで来ることもあり、日々鍛錬をしている者や、戦闘経験のある者ならばそう簡単に使い果たしたりはしないし、使い方にも最善の注意を払うはずだ。
しかし、だからこそ芽空にはそれが欠けていた。
獣を現出させる『纏い』だけならまだしも、その動物が持つ機能。梨佳ならば『イルカ』の超音波、芽空ならば『カメレオン』の不可視を発動させることは、エネルギーの消費を早める行為に他ならないのだから。
「あんたの不可視はそう何回も連発して良いものじゃない。知らなかったの?」
「……それは」
言葉に詰まる芽空に、シャルロッテは目を細めて、
「その様子じゃ、限界近くになるまで気がつかなかった、といったところかしら。……あるいはそれを見ないようにして、無理を押し通したか。いずれにしてもワタクシの知っているあんたらしくないわね」
「————」
彼女に対し、芽空は何も答えられない。いや、答えなかった。
その選択肢は今この状況を考えれば、芽空にとって望まぬ結果になり得るし、何より表情に影を落とす彼女が気にかかったからだ。
「……どうしたの?」
「————」
彼女は何も答えない。
会話の意思がない、というわけではないのだろう。何度か口を開閉するのみで、それは言葉にならない。
だが、何か思うところがあったのだろう。首元で止まっていたその手が再開し、芽空の体の汗を拭き取っていく。衣服を脱がさず、出来る限りの範囲を。
それはわずか数分の沈黙。けれど、決して短くない空白が終わり、ポツリと彼女は呟いた。
「……あんたはどうしてここにいるの?」
「……どうして、って」
奏太を助けるために芽空はここにいる。そう告げたはずだ。
しかしこちらをじっと見つめるシャルロッテは、緩やかに首を振る。
「あんた、言ったわよね。私は弱い。昔は真似事ばかりで、空っぽだったって」
「————」
「同い年の誰よりも様々な知識を持っていて、大人たちの話にだってついていけるし、大抵のことは知らなくてもすぐに覚えてこなせるようになる。……他の人から見たら、喉から手が出るほど欲しい才能なのにね」
乾いた笑いを漏らす彼女もまた、その一人なのかもしれない。
芽空は意識して見たことがなかったが、嫉妬という感情はどこにでも存在し、誰にでも向けられるものだ。自分に向けられていても何らおかしくはなくて、
「——でもそれも、あんたがあんたのお兄様や家族を真似したから」
それを知っているのも、誰よりも近くにいたのがシャルロッテだから。『何者』にもなれる芽空が、誰かになろうとするだけの存在であることを許せなかった。
それゆえに『何者』でもない自分になることこそが至高なのだと信じ、積み上げ、シャルロッテ・フォン・フロイセンはここにいる。
「本当は。本当はあんたの姿を見て……判断するはずだった」
声を震わせ、今にも泣き出しそうな表情をしている彼女も、
「結局何も変わってないなら笑ってやろうって、絶対に許してやらないって、そう決めてたわ」
芽空を弱虫だと罵る彼女も。強いところも弱いところも、全部引っくるめて。
感情を爆発させるのも、また。
「でもそれも、まだ分かってない。あんたが——ルメリーが、分からないの……っ!」
その名前で呼ばれるのはいつ以来だろう。
こうしてシャルロッテと再会してからは、ずっと「あんた」か「弱虫」のどちらかだった。
……自分も、彼女の名前をたったの数回しか呼べていない。
「二人でどうにかするんだって思ってたら、一人で勝手に突っ走って、訳が分からないのよ。何よ、何なのよ。ワタクシが足手まといとでも言いたいわけ? そんなことない、ワタクシは強くなった。なったのよ!」
その涙を見るのはいつ以来だろう。
手を握られるのも、優しくされるのも久しぶりで、昔と違う。
「……だから、教えて」
溢れ出る本音も、雫も。
これまでを生きてきた彼女だから、芽空は受け止める。
「————ルメリーは一体、何になろうとしてるの?」
瞳にこみ上げる熱情に彼女の涙が混ざって、弾けた。




