狂人からの寄稿・其の二
それでは皆様方にワタクシが素晴らしい「神秘」を体験しある種の完成された「完全な人」にワタクシが至った理由を粛々と順序立ててお話させて頂ければ、それを皆様に御覧になって頂くことができるのならば、ワタクシ始まって以来のまたと無い程の幸いでございます。
まず始めに申し上げて起きますが、ワタクシの周囲にいる皆様方から「狂人」と呼ばれるに至ることとなった出来事以前のワタクシは至極真っ当な普通の人間でございました。何を持って真っ当・普通・人間、とお前は言うのか?どのようにそられを定義したのか?と問いかけられましたならな、その至極正鵠を得ている疑問に対しての返答をワタクシは大変困ってしまうのでございますが、少なくとも狂人と呼ばれまする以前のワタクシは皆様方から狂人とは呼ばれてはおらず、普通の社会生活ができておりましたのでございます。そしてこれはなんらの証拠にもならないのではございますが、あの体験をする以前のワタクシは全く完全にあり得ないほどに「未熟な人間」だったと今になって過去の自分をそう思うのでございます。そして、ワタクシの周囲におられる方々はその未熟な状態のワタクシを指してそれが普通の人間だよ、なんぞと仰られるのでございますが、その過去のワタクシというものは、お話いたしますのも恥ずかしいほどに、些細なことで傷つき、腹を立て、泣いて、悲しむ。ああ、なんともかんとも今だに過去を思い返してみましても、なんと未熟な精神・心・脳なのでございましょうや。些細な怒りですら抑えられぬ未熟な精神、円盤状の記憶媒体の裏側よりも傷付きやすい心、泣きたくないと思うのに涙を流させてしまう脳、本当に、本当に情けの無いことでございます。
そんな未熟であったワタクシが完全な人間として完成いたしましたるキッカケとなる出来事がございましたのは、忘れもしません去年の八月初旬、容赦の無い強い強い日差しが照りつける夏の日でございました。
その日のワタクシは休日でございましたが、昨夜から続く持病の偏頭痛に悩まされておりまして、そんな日に限って買い置きの痛み止めを切らし、あまり睡眠をとることができず前後不覚とまでは申しませぬが、程よく意識がフラフラとしておりましたのでございます。フラフラとしながらもワタクシは喉がとても乾いておりましたので、立ち上がって水を飲もうと蛇口へ向かったのでございますが、足元に落ちていたサルボボで足を滑らせ、がつぅ〜〜ん、と盛大に頭を床に打ち付けてしまったのでございます。その瞬間は目から火花が走り、ああ、そういえば今日は花火大会だったなあ、打ち上げ場所はオレの部屋だったのかあ、などと意味不明な思考にいたるほどな衝撃だったのでございます。
それから一拍遅れでやってまいりました痛みがもうこの世のものとは思えぬ程の激痛で、頭の外から受けた衝撃がワタクシの頭蓋の中でピンボールが如く跳ね回り頭蓋の中から突き破らんとしているのではないかとすら思える痛みが三日三晩続き、食事すらままならないまま朦朧としつつも三日目の朝、ワタクシは
遂にその時を迎えたのでございます