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転生先は女尊男卑

ローザンセリア皇国にあるグローゼン魔法学校。ここでは皇国の未来を担う魔法使い達の育成が行われている。


だが貴族や平民など身分の差も関係なく魔法について学ぶことの出来るこの学校にはある特徴があった。


それは……学校にいる教員や生徒がほぼ全員、女性であることだ。


なぜ、学校にいる教員や生徒がほぼ女性なのかというと理由は簡単。


ただ単に魔法が使える――魔力を持っている男性が少ないからだ。


……憂鬱だ。


そんな女だらけのグローゼン魔法学校の敷居を1人の青年がくぐろうとしていた。


「はぁ〜」


彼の名はコルト・ベルガルド。前世の記憶を持つ転生者である。


「新入生だよね?あれ」


「珍しいね。男が入って来るなんて」


「顔はそこそこだけど……魔力はどうだろう」


コルトが学校の正門前で校内に入るのを躊躇っていると在校生であろう女子から好奇の視線を向けられた。


行くしかないか。はぁ……カレンも先に行かないで待っててくれたら良かったのに……。


好奇の視線を向けられていることに気が付いたコルトはそんな愚痴を内心で呟きながらしぶしぶグローゼン魔法学校の敷居を跨ぎ校内へと重い足取りで入って行く。


これから絶対めんどくさいことになる……よな。


コルトが学校に入るのを躊躇っていた理由、それはこの国――いや、この世界では魔法至上主義が蔓延り女尊男卑の価値観が根付き魔法が使える女性が上、使えない男性は下と明確に分けられている事による。


だから、そんな世界にある女だらけの花園のグローゼン魔法学校に転生者であるが故に膨大な魔力と特殊な能力を持っている自分が入学すれば確実にややこしいことになることが目に見えていたからだ。


とりあえずカレンと合流しよう。


校内を進んで行くにつれて増えていく好奇の視線に耐えられなくなったコルトはカレンと合流するべく足早に歩いて行った。

















――――――――――――




「ねぇ、ねぇコルト君てさ、どれくらい魔力持ってるの?」


「彼女とかいるの?」


「好きな食べ物は?」


……誰か助けて。


目的のカレンと合流出来なかったため仕方なく自分の割り振られた教室で入学式が始まるのをコルトが待っているとクラスメイトの少女に取り囲まれてしまった。


「い、いや、あの……」


コルトに喋りかけてきた3人の少女や同じクラスにいる少女、そして廊下からこちらを興味津々で窺う少女達、規模を広げれば学校にいる全員が容姿端麗の美女、美少女という一種の桃源郷のような場所でコルトは困っていた。


……うーん。可愛い女子と話が出来るのは嬉しいんだけど……みんなペットを見る、もしくは獲物を狙う肉食獣のような目で見てるんだよな。


魔法が使える希少価値の高い男をものにする。女の間でそんなステータスを持つことが流行っていることを知っているコルトは喋りかけてきたクラスメイトの少女や他の少女達の大半が自分のことを異性として見ているのではなく愛玩動物を見るような獲物を見るような目で見ていることに気が付いていた。


その事に対してコルトが少なからず落ち込んでいる時だった。


「ちょっとそこの貴女達、私の男にちょっかい出さないでくれる?」


そう言ってコルトの横に現れたのはコルトの幼馴染みして婚約者でロートレック子爵家の子女、カレン・ロートレック。金髪に白い肌、歳の割には幼い姿をしているが成長すれば美女になるのは間違いないと断言出来る美少女だ。


「……ふぅーん。そうこの子、貴女のお手付きだったんだ」


「なーんだ、つまんないの」


「行こ行こ。こんな女のお手付きなんてどうせ魔力もカスみたいなものだろうし。あーあ期待して損した」


敵対心の籠ったカレンの言葉に何かカチン、ときたのか先程までコルトに笑顔で喋りかけていた3人の少女はガラリと態度を変えて言った。


やっぱり女って怖い。


少女達の素早い変わり身を見て恐怖心を抱いていたコルトがふとカレンに視線を移すとあることに気が付いた。


「コルトが……カス、ですって?」


あ、ヤバい。


小さい頃からの付き合いの経験上、俯き体を震わせている今のカレンを放っておくのは不味かった。


コルトが侮辱されたことで完全にキレてしまっているカレン。


「カ、カレン?今は――」


そんなカレンを宥めようとコルトが口を開こうとするものの少し遅かった。


「いいでしょう、貴女達に見せてあげるわ」


自分の婚約者が想い人が侮辱されたことが許せないカレンは目の前の少女達にコルトの凄さを思い知らせることにした。


「へぇー何を?」


「コルトの凄さをよ」


「なにそれ?アハハ、面白い冗談ね。男が凄いですって?」


「ふん、笑っていられるのも今のうちよ。コルト、本気で魔力を出しなさい。」


「……入学前にうるさい虫が俺に付くのが嫌だから目立たないようにしなさいって言ってたのはいいのか?」


一度言い出したらなかなか意見を曲げないカレンにコルトは最後の確認のため声をかけた。


「いいのよ。貴方を侮辱したこの女達に目にもの見せてやりなさい」


「……了解」


……入学式前なのにもうこれか、先が思いやられる。


カレンの指示にやれやれといわんばかりに頷いたコルトは魔力を少しずつ体の外に出し始めた。


「へぇー、男にしてはなかなかじゃない。で…………でも……これ……ぐらいじゃあ……」


「う、うそ!?なんで男がこんなに魔力持ってるの!?」


「……」


ゆっくりとだが魔力を放出していくコルトを眺めていた少女達はコルトが女性の平均的な魔力量はおろか、この学校でも歴代のトップクラスに値するの魔力を出していることに驚愕していた。


「――っ、ふぅ。これぐらいで――うわっ!?」


「なっ!?あ、貴女達!!コルトから離れなさい!!」


コルトが魔力を出すのを止めた瞬間、キャアアア!!と黄色い歓声を上げた少女達がカレンを押し退けてコルトに飛び付いた。


「ねぇ!!貴方私の男になりなさいよ!!」


「凄いよ、コルト君!!男でこんなに魔力もってるなんて!!」


「決まり!!今日からコルト君は私のもの!!」


「な、何をふざけたことを!!ち、ちょっと私の話を!!」


カレンがコルトに抱き付く少女達を引き剥がそうとするものの、思い道理にはいかず苦戦していた。


……やっぱり、こうなった。いや嬉しいけどさ。


クラスメイトにもみくちゃにされながらコルトはこれからの学校生活に思いを馳せていた。


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