第三十一幕 ~取り戻した日常とプロポーズ~
相沢美冬はいつもの日常に戻る事が出来た。
残念ながら、旅行は途中で終わりになり、城に戻らなくては
ならなかったけれど。
「「「ミフユさま!!」」」」
一番真っ先に美冬を出迎えたのはメイド達だった。
心配していたのだろう、その顔には涙の痕がある。
「皆、心配をかけてしまってごめんね」
美冬はメイド達に抱きしめられながら謝罪した。
テレーズもマリオンもオリヴィアも泣きながらいいんですと
返した。
その後は、早速お世話しますと意気込んで来られたので
ちょっと美冬は困り顔になったという。
「そ、そんなに気にしなくてもいいのに……」
「ミフユ様のお世話をするのが、本来の私達のお仕事です
から」
「そうです、さあミフユ様!」
「ミフユ様!」
「え、えっとあの……ま、待って! まだ心の準備が、服を
脱がさないで……きゃああああっ!」
容赦なく服を剥ぎ取られてしまった美冬だったという。
美冬はいい香りのするお風呂に入らされた後、白いフリル
やレースのたっぷりついたドレスを着せられた。
ついでに髪も後ろで編み込んでドレスと同じ色のリボン
が結えられている。
「うわあ、ミフユ可愛い……!!」
カインに褒められた美冬は、思わず頬を真っ赤に染めて
しまった。
「も、もうカインったらお世辞ばっかり!」
「お、お世辞じゃないってばミフユは本当にかわい……って
わぁ!?」
「お姉様お帰りなさいっ」
「ミー無事だったんだな!」
「べ、別にあたしはミフユの事なんて心配してないけど
……」
「ミフユお姉ちゃんが帰って来た!」
部屋に飛び込んで来た、フィレンカ、ルー、アクア、シー
レーンが美冬に飛びついて行く。
少し残念に思いつつも、カインは後ろにどいている事に
した。
後で二人っきりになりたいな、とは思うけれどさすがに妹
達や美冬の友達や幼馴染に邪魔だとも言えない。
美冬を彼らに取られてしまった形になり、少ししょんぼり
しているのにテレーズが苦笑していた――。
その後、美冬はアクアやルーやシーレーンやフィレンカと
一緒に鬼ごっこをして遊んだ。
いつもの日常が戻って来たみたいで、彼女はとても嬉しか
った。
「アクア、捕まえたわ!!」
「何よ!! ミフユのくせに!! 待ちなさいよルー!!」
飛びつくようにしてアクアを捕まえ、身軽に逃げると悔し
そうにアクアが頬を膨らませてすねる。
そんな彼女はルーに狙いを定めたようだが、ルーはべぇっ
と生意気にも舌を出してスピードを上げていた。
「やーだよー。アクアなんかに捕まるかよ!! あ、シー飛
ぶの禁止だぞ!!」
「ごめんね~」
「ルーを捕まえると見せかけて、捕まえたわフィレンカ!!」
「ずるいっ!! フェイントをかけるなんて!!」
ぎゃんぎゃん言い合いながら楽しく遊ぶ五人。
メイド三人はそれを微笑ましく見ていたが、一人仲間に入れ
ないカインだけはちょっと恨めしそうにそれを見ていた。
いや、入りたければ入ればいいのだが、アクアが「あれぇ
~? 王子様も遊びたいの? 遊ばさせてくださいって頼め
ば遊ばせてあげるけど?」と意地悪を言ったのだ。
半場冗談ではあったのだが、アクアは振られた事を少し根
に持っていたらしい。
美冬達はくたくたになるまで遊んだという――。
美冬が自室に戻ると、マリオン達が美冬の大好きなお菓子
を山盛りお皿に用意してくれていた。
〝クルリア〝と〝ルーナエル〝、そして以前出してくれた
コルネルの花の香りのする紅茶である。
美冬は笑顔で〝クルリア〝を平らげ、チョコレートケーキ
に似た〝ルーナエル〝を食べながらちょっと苦笑していた。
「ちょっと太ってしまうかもしれないわね。こんなに食べて
いたら……」
「何言ってるんですか、ミフユ様はもう少し太った方がいい
ですよ!! ただでさえ、旅行に行ってから前より痩せたん
ですから!!」
テレーズは採寸し直した際に、美冬が以前よりかな
り痩せている事に気づいて憤慨したのだろう。
もう少し太らせなくては駄目だと思ったのか、さら
に二、三切れも〝ルーナエル〝を進め、美冬を困らせ
たのだった。
ちょうどおやつの時間が終わった後、ノックの音が
聞こえたのでオリヴィアが美冬の了承を得て扉を開け
た。
そこに立っていたのは、ミステルだった。
「ミフユ様!! ご無事でよかったです!!」
いきなり美冬は抱きしめられた。
かなり心配していたのだろう、しばらくミステルは美
冬を抱きしめたままだった。
震える手と今にも泣きそうな瞳に、美冬はしばらく
大人しく抱きしめられていた。
「……カイン様がお呼びですよ」
と、安心したように微笑んだ後、美冬を離したミス
テルはその事実を告げた――。
カインは自分の部屋にいた。
美冬はカインの部屋に入るのは初めてなので、ちょっ
とドキドキしながら入室した。
部屋は上等な家具や調度に囲まれた上品な造りの内
装になっていた。
趣味がとても良く、落ち着いた静かな部屋はカイン
に似ていると美冬は思った。
「カイン、どうしたの?」
カインはただ黙って自分が座っているのと反対の、
肘かけのある赤い生地の椅子を勧めた。
美冬も椅子に座り、二人は向かい合うような恰好
になる。しばらくカインは口を開かなかった。
ただ見つめ合う、時間だけが過ぎて行く。
「あの、カイン?」
しびれを切らした美冬が、口を開いた時だった。
カインはいきなり美冬の手を取った。
「ミフユ……」
「か、カイン……!?」
「僕と、結婚してください!!」
一瞬、美冬は何を言われているのか理解出来なか
った。
しばらくしてプロポーズされたのだと気づき、そ
の顔を耳まで真っ赤に染める。
「えっ!? ええええええっ!?」
「いきなりでごめんね。だって、ミフユってすぐどっ
か行っちゃうんだもん。僕から逃げちゃうし、やっと
想いが通じ合ったと思ったら攫われちゃうし、繋ぎ止
めておきたかったんだよ」
いつのまにか、美冬の指には真っ白い宝石がきらめ
く銀の指輪がはめられていた。しかも左の薬指だ。
魔法を使ってはめたのだろう。
「わ、私まだ返事してないわよカイン……!!」
「だって返事はもちろん〝はい〝でしょう?」
見透かされていた気がして美冬はさらに真っ赤にな
った。ちょっと反抗してみたい気もしたけれど、何の
得にもならないので止める。
「はい。あなたと結婚、します」
「ようやく、君を僕の本当の花嫁に出来るんだね……」
カインの瞳が熱っぽくきらめいた。
美冬は温かい気持ちになりながら彼の手を取る。
「早速明日結婚しようか」
「あ、明日!? ちょっと急すぎるんじゃ……」
「思い立ったら吉日って言うでしょ? 明日やろうね。
結婚式!!」
「ええええええええっ!?」
こうして美冬は、カインのプロポーズを受け入れ結婚
する事になったのだった――。
ようやくお城での日常が戻って来た
美冬とカインがついに……!なお話です。
カインは個人的には手が早い子、って
いう認識だったりするんですよね私。
次のお話で、魔法大国の花嫁様!?は
幕を閉じます。
でも、出来たら続編も書いてみたかな
って思っていたり……。




