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魔法大国の花嫁様!?  作者: 時雨瑠奈
旅行に行く少女
28/33

第二十七幕 ~神子の苦悩と悲しみ~

 相沢美冬は、エルダに起こされて

着替えさせられていた。

 白い清らかなローブは彼女の黒い

髪によく映えている。

 エルダは巫女としての仕事があると

いうので、今は違う少女といた。

 美冬のメイドとして働く子らしい。

何かあればいつでもおっしゃってください、

と笑うまだ幼い少女に、美冬はにっこりと

笑い返した。

 少女は美冬が生贄だという事を知らない

らしく、可愛らしく笑い返すと頬を赤らめて

いた。

 あまりに綺麗な〝生神様〝に見惚れて

しまっている。

 美冬はそんな事には気づかず、甘い飲料水を

持ってきたりと笑顔でてきぱきと働く少女を

ただ見つめていた――。


 一方、エルダは仕事などしていなかった。

自分が〝生神様〝だという事を心から信じて

いる美冬。

 生贄だという事を全く疑いもしない彼女と、

純粋なメイドの少女を真顔で見ている事など

出来なかった。

 思わず泣きそうになってしまい、仕事がある

からと逃げたのだ。

「美冬……」

 いじめられ、存在を無視され、不幸せだった

少女。やっと幸せになれたはずだったのに、自分の

せいでこんな事になったのだ。

 きっと、思い出したならばエルダを怨むだろう。

怨むなら怨んでもいい。

 私は、村を守る。それが、神子としての、任務

なのだから――。


 美冬は少女に食事の用意をされながら木で

作られた椅子に腰かけていた。

 少女の他は誰も美冬に声をかけたりしな

かった。

 村の資源は決して豊かではない。

それを、〝生神〝というのは名ばかりの生贄の

ためにささげているのだ。

 彼女を憎々しく思わない訳はない。

 だが、本当の事をバラすわけにはいかないので

そのままにしていた。

 今日の食事は、分厚く切ってまんべんなく焼いた

お肉と、野菜がたっぷりと入ったスープ、焼き立て

ふわふわのパン、たくさんの果物だった。

 少女はお肉を切り分けたり、果物を食べやすい

大きさに切ったり、本当にかいがいしく美冬の

世話を焼く。

 村人はそれを苦々しく思っているのは間違いないと

エルダは思いつつもそれをどうする事も出来

なかった――。


 その日の食事の後、エルダの住居には村人が

殺到した。村長までがいる。

 いないのは、美冬を世話している少女と、

美冬が生贄だとは知らず、純粋に〝生神様〝

だと信じている子供ばかりだった。

 若い者も、中年の者も、年老いた者さえも、

彼女に必死に訴えかけてきた。

 私に、どうしろって言うのよ、とエルダは

うんざりしながらただ話を聞く。

「エルダ様、私、もう我慢ができません!! 

あんな生贄の、えたいの知れない小娘にあんなに

よくしていいものなのですか!?」

 中年の女が悲鳴のような声をあげていた。

何故あんな娘のために自分達が我慢して、食事の量を

減らさなければならないのか。

 その顔にははっきりとそう書かれていた。

さらに、まだ若い娘も叫ぶ。

「いつまでこんな馬鹿げたことを続けるのですか!!

 早くしないと、村の資源はなくなってしまい

ます!!」

「エルダ様、早く生贄の儀式を!!」

 儀式を、と全員が叫び始める。エルダは冷めた目で

それを見つめていた。皆自分勝手なものだ。

 巫女としての責任も、美冬がどんな酷い目にあって

きたのかも知らない癖に。

 今まで彼女達は、資源が少なくなるまでは、神の村の

人間として何不自由なく暮らしていた。

 それなのに、少し生活が苦しくなったといっては

こちらに抗議してくるとは……。

 資源が少なくなったのは、元々自分達のせいでは

ないか。

 ろくに働かず、神の村の人間であるという事に

あぐらをかき、何一つ責務をこなさなかった。

 だから神は資源を減らしたのだ。

神の怒りを買ったのは、美冬ではなく、この村の

人々だ。

 エルダは怒りに震える拳を必死で押さえなくては

ならなかった。

「……まだ儀式には早すぎます」

「何故ですか、エルダ様!!」

「記憶をなくしているとはいえ、彼女は鋭い娘です。

いきなり儀式などすれば、疑って逃げてしまうかも

しれません」

 エルダは渦巻く怒りを抑えるかのように冷静に

話し始めた。

 村人達は明らかに怒りの表情を見せたが、エルダが

美冬がいなくなるかもしれないと言うと、途端に

大人しくなった。

「みなさん、今日はお帰りください。彼女に不信感を

持たせないためにも、彼女に何か言ったりしない

ように」

 村人達はぶつぶつ言いながらも帰って行った。

一人になり、エルダは悔しさのあまり涙をこぼす。

 何故私は巫女などに生まれてしまったのだろう。

小さい頃は、そんな事考えもしなかった。

 ただ慈しまれ、敬われ、大事に大事にされて

来た。村の資源の事など考えもしなかった。

 村の人達は、全てがいい人だとおもっていた。

だが、成長していくにつれて、エルダは人の嫌な

部分をどうしても知らないでいられはしなかった。

 毎日のように詰めかける人々。

誰が少し多く食事を取っただの、誰が仕事をしな

かっただの、不公平だ、だの不平不満をぶつけて

くる人々。

 村の資源に関しての事も、エルダは再三に渡って

村の人間に警告していた。

 けれども、村人達は返事だけはするものの、全く

働こうとはしなかったのだった。

 子供だけでは、そんなに大した働きにはならない。

そうこうしているうちに、日照りや大嵐、数々の災害が

起こり、しだいに備蓄されていた資源は少なくなって

いったのだった。

 エルダは、それでも村の人間を守らなくてはならない。

誰が見捨てても自分だけは、最後までこの村に居続け

なくてはならないのだった――。

 エルダの方の事情が次々と

明かされています。彼女も、

本心では美冬を生贄には

したくないんですよね。

 子供達は純粋に彼女が

生神様だと思っている

感じです。

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