第二十一幕 ~帰りたい少女~
今日は美冬達はお休みだった。
昨日の事を聞いたおかみさんが、
今日は休んだらどうかと言って
くれたのである。
美冬はカインと一緒に町を
歩いていた。
おかみさんが渡してくれた
お駄賃を持って嬉しそうな顔
である。
旅行をしていた時よりも、その顔は
楽しそうだった。
その事は多少複雑ではあるけれど、
カインも最近では珍しく笑顔を浮か
べていた。
エルダは今日はそばにはいない。
その事も、彼にとっては笑顔になった
原因だったかもしれない。
美冬はその事に気が付いていないので、
カインに文句を言う事はなかった。
「ミフユ、今日はどこに行く?」
カインにそう聞かれ、美冬は笑顔で振り
向いた。眩しいほどの笑顔である。
カインは少しどきっ、となってしまった。
「またこの前食べたお菓子食べたいの。
いい?」
「もちろんだよ!! 早速行こうね!!」
さりげなく美冬と手をつなぎ、赤くなる彼女に
笑いかけながらカインは歩き出した。
紅くなりながらも、美冬は手を振り払ったり
しない。ただ黙って歩いている。
と、彼女が急に口を開いた。
「カイン、あの、ね……」
「どうしたの、ミフユ?」
「こんな事言いたくないんだけど、どうして
カインはエルダに辛く当たるの?」
カインは瞬時に機嫌を悪くし、幾分乱暴に
美冬の手を放した。
睨むように見られ、美冬は怯えたような視線を
彼に向ける。
カインは息を吐くと表情を少し和らげ、迷う
ように目を泳がせたが、やがて口を開いた。
「似てるんだよ、あの子は」
「え?」
美冬は戸惑ったような顔の後、しっかりと
カインを見つめてきた。
カインも見つめ返し、二人の目が合う。
「君には言ってないし、分からないと思うから
言うね。君、城にいた頃も攫われそうになって
いたんだよ」
そんな事は初耳だった。
美冬は目を見開き、言葉も発せないほどの驚きに
心底困惑する。
「その時は、部屋に入る前に僕とフィレンカで
その子を撃退しちゃったけどね。……かなり
強かったよ。護衛が歯も立たないくらいね」
その時の事を思い出したのだろう、カインの
顔には苦々しい物が広がっていた。
彼曰く、その時の少女とエルダが似ていた
らしい。
だが、本人だと言う保障はないし、それだけの
事で拒絶されるエルダも迷惑だろう。
「でも、まだ、本人だって分かってないん
でしょう?」
「うん……。その子の名前も知らないからね」
美冬は悲しげな顔になると、言い聞かせるように
カインに言った。
「私、エルダの友達だから、カインが彼女とケンカ
しているのを見ると辛いのよ。仲良くしてくれない
かしら?」
「ミフユが……そう言うなら」
カインはまだ警戒しているらしいが、とりあえずは
提案をはねのけたりしなかった。
再び彼女の手を取り、この前お菓子を食べた屋台に
行く。
二人分を買うには足りなかったので、一つの物を
二人で分けた。
一個ずつ買って食べた時よりも、何故か分け合って
食べた時の方が美味しく感じた――。
そして、二人は店に戻る事にした。
心配そうな顔で迎えたのは、エルダだった。
「もう帰って来たの? まだいいのに」
「でも、仕事たくさんあるでしょう?」
「いいからもう少し外にいてよ」
店には戻ったものの、追い出されるようにして外に
戻されてしまった。
かなり忙しいそうな様子だったが、エルダはまだ
美冬が心配らしい。
仕方なく、二人はふらふらと通りを歩く事にした。
お金は使い切ってしまったので、いろいろな物を
眺めて過ごす。
飴を売っている露天を通りがかると、店のお姉さんが
一つずつ飴玉をくれた。
甘い飴玉を舌で転がしながら二人は笑顔になる。
「フィレンカ達、どうしてるかな……」
「元気にしてくれているとは思うけれど……」
ふと、二人は城に置いて来た者達の事を思い出した。
心配しているかもしれない。ずっと城へは帰っていない
のだから。
城に帰るにもお金はないし、旅券も何もかもないから
関所も通れない。
ここで働いてお金を貯めて旅券も購入するしか
なかった。
フィレンカ・ミステル・ルー・シーレーン、そして
メイド達……。
しばらく会っていない者達の顔が次々と浮かんで
来た。
二人の目には涙がにじみ、いつ帰れるのかと帰郷の
念が増すばかりだった――。
今日は美冬とカインはお休み
です。前回大変な目に遭った分、
今回は楽しく過ごしてもらい
ました。魔法大国に帰り
たくなった二人です。




