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魔法大国の花嫁様!?  作者: 時雨瑠奈
旅行に行く少女
20/33

第十九幕 ~仕事を始める少女~

 結局、相沢美冬と第五王子カインは、

少女の提案に乗る事にした。

 どこにも行く場所がないのは事実

である。

「待っていたわよ」

 少女はにっこりと、否、にやりと

笑っていた。

 相変わらず、謎な雰囲気である。

飾り気のない、大人びた黒いワンピースが

よく似合っていた。

「私はエルダ。エルダ=ラーシア、

よろしくね」

「君、なんで僕達に仕事を紹介してくれ

たの?」

 カインは美冬を後ろにかばいながら言った。

警戒心たっぷりの口調である。

 少女はただ笑っていた。それが、何がおかしい

のかとなおさら彼の警戒心を高める。

「理由なんてないわ。困っているみたいだった

から、勧めただけよ」

 少女――エルダはなんでもない事のように言う。

妖しい所がないでもなかったが、二人は少女の言う

通りにするしかなかった。

「ただ利害が一致しただけよ。私は仕事先で誰か紹介

してくれって言われていたし、あなたたちは無一文で

行く場所がない」

 とりあえず二人は働く事になった。

場所は宿泊も出来る小さな酒場だったが、料理が

美味しいとの事で人気があるらしかった。

 仕事先のおかみさんはいい人だったが、同時に厳

しくもあり、二人は目を回しそうになりながら働いた。

 美冬もカインも、働くのは初めてだったのである。

休憩時間に入るころには、もう二人はへとへとだった。

「はいよ、お茶でも飲みな」

 熱いお茶を出され、美冬はお礼を言ってすすった。

カインも同様だ。続いてお菓子も出され、二人は少し

元気になった。

「美味しいです、ありがとうございます!!」

「いいんだよ。……エルダあんたもお食べ!」

「はい……」

 エルダが長い黒髪を揺らして美冬の隣に座った。

きらり、と緑の瞳が光る。綺麗だと思う反面、

美冬は何故か彼女に不安を抱くのだった。

 お菓子は美冬の世界にある、おまんじゅうに

似た物だった。美冬も形くらいは知っている。

 よく、相沢家の両親が、お客に出すのを指を

くわえて見ていたものだ。

 ほんのりとした甘さで、とっても美味し

かった。

「これ、なんていうんですか?」

「マンジュウっていうらしいよ。異世界の食べ

物さ」

「これがオマンジュウ……」

 美冬は強い感動を覚えた。

小さい頃、決して食べる事の出来なかったお菓子が、

今目の前に並べられているのだ。

 好きなだけお食べと言われ、美冬は恐縮しながら

少しだけお菓子を味わった。

 カインもエルダも、笑顔で頬ぼっていた。

「あんたたちはよく働くからいいねえ。エルダ、

お手柄だよ」

「ありがとうございます、おかみさん」

 エルダは笑っているらしかったが、どこかその笑顔は

ぎこちなかった。

 カインが不審そうにそれを見ている。

「……やっぱり似てる」

「カイン?」

 きつい目になった彼に、美冬は目を丸くした。

エルダもまた、きつい目でカインを睨み返している。

 ひょっとしたら見ていただけなのかも知れないけれど、

美冬にはどちらか分からなかった。

 そして、三十分が経ち、仕事が始まった。

最初に働いた時よりも、幾分楽に仕事が出来る。

 少しは仕事の内容も覚えていた。

美冬は料理全般と皿洗い、カインが雑用全般である。

 カインは違ったが、美冬はいつもエルダが隣にいた。

こつややり方を教えてくれる彼女は、とても優しい。

 美冬は不安や違和感をあまり感じなくなり、いつしか

エルダに親しみを感じるようになっていた。

 それはエルダも同じなようで、美冬にだけ重大な

秘密を打ち明けてくれた。

 彼女は、魔法使いではないのだという。

ここは魔法大国であるから、基本魔法使いが多い。

 でも、彼女は違うと言った。

「私、神子なの。神子姫なのよ。回復術が得意なの」

「あっ!!」

 そう言った時に、ちょうど都合がよく美冬が指を

切った。エルダは少し笑うと、指を取って力を使う。

 瞬く間に傷が消えた。

「秘密にしてね、ミフユ。私、おかみさんにも言って

いないのよ。あなたが親友だから言うの」

「わかったわ、エルダ。私達、別れることがあっても

親友よね?」

「当たり前じゃない」

 楽しそうに話をする二人を、カインはどこか不安そうに

見ていた――。

 第五王子カインと、元薄幸

少女美冬初仕事です。

 苦戦しつつも仕事を頑張る

二人。しだいに美冬はエルダと

仲良くなっていくが、何故か

カインはそれに不安を感じて――!?

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