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魔法大国の花嫁様!?  作者: 時雨瑠奈
愛を知って行く少女
17/33

第十六幕 ~愛を手に入れる少女~

「バカじゃないの!?」

 いきなり怒鳴られ、美冬は言い返せ

ない。自分でも自分の行動は馬鹿だと

言われて気づいた。

 少女が泣きながら、怒鳴りつけて来る。

ただでさえあんまり鋭い方ではないのに、

今の美冬はぼうっとしていて少女の声に

素早く反応出来なかったという事もある

けれど。

「なんで、あたしの言ったこと負け惜しみ

だって思わないのよ! なんで、死にそうに

なるまで考えてるのよ! あんたが死んだら、

私のせいみたいじゃない!!」

 頭がくらくらしていた。訳がわからない。

何故彼女が怒ってるのか、意味が分から

なかった。

 自分がいなくなったら、彼女は得するの

ではないだろうか。

「訳わかんないと思うけど、これだけは

聞いてよね!!」

 ようやく美冬の訳が分からない、という

反応に気付いた少女が叫ぶ。

 海を思わせる青い瞳が潤んでいた。

「カインが倒れたのよ!!」

 頭が真っ白になった。カインが、倒れた!?

あんなに元気だったのに……。

「嘘……!!」

 美冬は思わず呟いていた。嘘だと思い

たかった。

 彼が倒れたなんて、認めたくなかった。

「なんであたしがあんたなんかに、嘘つか

なきゃならないのよっ!! あんたのせい

よ!! あんたの……あたしのせいでもある

けど!!」

 自分でも人魚は何を言っているのか分かって

いないようだった。

 泣きじゃくりながら、思いついたままに叫び、

怒鳴っている。

 美冬は嘘ではないと知り、慌てて部屋を飛び

出そうとした。

 体が勝手に動いていた。くらり、となり、人魚が

受け止める。

「バカじゃないの!! 何日も食べてないのに、いき

なり動けるはずないでしょっ!!」

 人魚の腕をかいくぐって逃げようとする美冬に、人

魚は苛立ちの声を上げた。

 空間転移術を使い、リンゴのおかゆみたいな物を取り

出す。

「食べなさいよ」

「早くカインに会いに行かなくちゃ!!」

「いいから食べろってのよ!!」

 一喝されると、大人しく美冬は食べ始めた。

命令され続けた習慣は、なかなか抜けない。

 味なんてしなかったけれど、美冬は必死にそれを

すすっていた。

 人魚は美冬をささえたまま、いろいろな事を

話した。

「カインは、あんたに嫌われたって思って寝込んじゃった

のよ。……あたしじゃ、立ち直ってくれなかった」

「嫌いじゃ、ないの。でも、好きってよくわからないの」

「あたしだって分かんないわよ!! あんなバカのどこが

好きなのか、分かんない!! 」

 人魚は叫びながら、昨日のことを思い出していた――。



 昨日、寝込んでいたカインのもとへ、彼女は出向いた

のだ。

「アクア……」

 カインは前より少し痩せていた。

水分を取ってはいるが、最近はおかゆのような物しか

食べていないらしい。

 その事が悔しくて、腹立たしくてアクアは珊瑚色の

唇を噛みしめた。

「カイン、そんなにあの子が好きなの?」

「うん……」

 照れながら言われ、ひそめる。

ミフユ。異世界からやってきた、カインの花嫁。

 カインとの結婚を約束された、娘。

自分とは正反対の、大人しそうで優しそうな女の子。

 だからこそ、アクアはミフユが嫌いだった。

自分では駄目だと、暗にカインに言われていた気がして、

彼女を見ていると腹が立ったのだ。

 まあカインは自分の気持ちには全く気付いていないの

だとは思うが。

「ミフユのどこがいいの?」

「あの子、いろいろ苦労してるらしいんだよね。前の世界で、

いじめられてたって。来た時も怪我しててね、守ってあげなく

ちゃって思ったんだ」

 アクアは黙っていた。……勝てない。

あの子には、絶対に勝てない。だけど……。

「好き……」

「え!?」

「あんたが好きだって言ったの!!」

 カインは驚いたように目を見張っていた。

それは無理のない事だった。

 カインとアクアは幼馴染で、友達だった。

小さい時から、あまり女性として見た事はない。

 それはアクアも分かっていた。分かっていたけれど、

言っておきたかった。

 勝てなくても、せめて想いだけは伝えたい。

「あたしじゃ、駄目なの? あたしだって、カインの

ことが好きなのに!! 駄目なの!?」

「ごめん……」

「わかってたわ、あんたが私のこと女として見て

ないって事は、ね。そこで待ってなさいよ、引きずって

でも、あの子連れてくるから!!」

 その後で、アクアは寝込んでいる美冬を見つけたの

だった。

 水分も何も取っていないで考え込んでいるのを見たら、

何故か苛立って、怒鳴りつけていた。

 アクアが水の力を使えなかったら、本当に死んでいた

かもしれなかったのだ。

 あの子は、ミフユは、カインに好かれているのに。

カインと、結婚出来るのに。

 死ぬなんて、絶対に許さないとアクアは思った――。



 アクアは美冬を支えるようにして歩いていた。

美冬は青ざめていたが、もう逃げようとはしていない。

「ねえ、あなた、名前は?」

「アクアよ」

 いきなり名前を聞かれ、アクアはつっけんどんに

応えた。

 それなのに、美冬は楽しそうに彼女の名前を呼んで

いる。少し明るくなったようだった。

「アクア、好きってどんな気持ちなの?」

「だから、そう簡単にわかる物じゃないんだってば!!

 あんた、トロいわねっ!! 簡単にいえば、その人が

死にそうになったら困るとかそういうことよっ!!」

「じゃあ、私は、カインのことが、好き!?」

「知らないわよっ!!」

 アクアはなんでこんなに苛立っているのか、気づいた。

美冬はほうっておけないタイプである。

 誰かに、守ってあげなくちゃ、と思わせるような、

そんな魅力がある。小さな動物のような。

 だから、それに魅かれてしまっているから、アクアは

美冬に苛立つのである。

 ライバルなのに。こんな子嫌いなのに。

「ついたわよ」

 ドンッと突き飛ばすように、アクアは彼女を中に

入れた。

 途端に、カインの青ざめていた頬に血の色が差す。

彼はそのまま倒れ掛かるように、美冬に抱きつく。

 美冬は自分でも気付かないうちに、泣いていた。

温かい体を、失わないでよかったという安堵と、

カインにようやく会えたという嬉しさと、彼を好き

だと思う気持ちが、入り混じってぐちゃぐちゃに

なっていた。

 この人が好き。失いたくなんか、決してない。

ようやく想いに気付いた美冬は、泣きながらカインの

背中に手を回した――。

 今回は人魚の少女、アクアが

活躍します。まあ彼女も悪い子

ではないんですよね。

 ただ、カインとはどうしても

結ばれないのでちょっと八つ

当たりしちゃっただけで……。

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