表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法大国の花嫁様!?  作者: 時雨瑠奈
愛を知って行く少女
14/33

第十三幕 ~文字を学ぶ少女~

 相沢美冬は今、自室で勉強をしていた。

テレーズを教師にして、この世界の文字の

勉強中である。

 美冬には、そういう魔法がかかっているので、

日常会話などで困る事はない。

 だが、文字は違った。文字を読む事も、書く

事も、美冬には出来ない。

 美冬はカインを、カインの思いを受け入れた。

身分は、自動的に第五王子の花嫁、という事に

なる。なので、いろいろと勉強する事が

あった。

 彼の兄弟達や両親にもあいさつした事だし。

「いいですか、ミフユさま。〝私はミフユです〝は、

〝シスネ・アス・ミフユ・レンカ〝ですわ」

「し、しす、しす、シスネ……?」

 異世界の発音に苦心しながら、美冬は口を開いた。

初日なので、まだあまり上手くいかない。

 テレーズはニコニコとしながら、本を閉じた。

美冬は申し訳なくなって落ち込む。

「少し、休憩しましょうか」

 はい、と返事をした彼女は、チョコレート色の

シンプルなドレスの裾を握っていた。

 羞恥で赤く染まった顔と、噛みしめた唇が彼女の

心中を語らずとも詳細に示している。

 テレーズが悲しそうな顔になり、何か言おうとした、

その時。

 耳をつんざくような轟音と共に、扉が吹っ飛んだ。

「フィレンカ様!! またですか!!」

 眉をつりあげてテレーズが怒鳴る。が――。

「ご、ごめん……なさい……」

「カイン様!?」

 そこにいたのは、なんとカインだった。

壊れかけていた扉の留め金を直そうとして、間違って

破壊の呪文を使ってしまったらしい。

「カイン!!」

 美冬は彼に駆け寄った。

失敗を見られたのが気恥ずかしいのか、カインは頭を

かいて困ったような顔になっている。

「ごめんね、ミフユ。今直すから」

 修復の魔術の光がその場を照らす。すぐに、扉は元の

状態に戻っていた。と――。

「なげかわしい」

 きつい目つきをした若い男が、その場に現れた。

その魔術が、瞬間移動だと美冬が知ったのは、かなり

後の事だった。

「フレイア教官……」

 訳が分からない美冬に、こっそりとテレーズが、カインの

魔術の教師だと教えてくれた。剣術も教えているらしい。

「最近、失敗が多すぎるぞ」

「すみません……」

 ギロリとフレイアと呼ばれた男は、美冬に目をやった。

いつも、村人から向けられていた視線に似ている。

 美冬は驚き、じりじりと後ろに下がった。

「この娘が来てからだな、この疫病神が!」

「やくびょう……がみ……」

〝何の役にも立たない美冬!! あんたなんか、村の御厄介で

しかないのよ!!〝

〝疫病神……〝

〝疫病神!! 死んじゃえ!!〝

 美冬の頭に、拒絶され、愛されなかった過去がよみがえった。

村の子供達のあざけりが、鮮烈に頭に響く。

 まるで、たった今、言葉をぶつけられたかのように。

美冬はその場にへたり込み、頭で響く声をかき消すかのように耳を

ふさいだ。

 だが、実際に聞こえている訳ではないので、それをかき消す事は

出来ない。

「無礼者っ!! ミフユさまになんということを!!」

「フレイア!! ミフユは関係ない!! 失敗したのは、僕

個人の不徳だ!!」

 テレーズは今にも殴りかからんばかりに怒鳴りつけ、カインも

刺すような視線を彼にぶつけた。

 けれども、彼は冷たく笑うだけだった。

「だいたい、私は、異界の娘を召喚するなど、最初から反対

だった。こんなどこの馬の骨ともわからぬ娘の、どこがいいと

いうのですか?」

「ミフユは優しい娘だ!! あんたなんかに、侮辱されていい

娘じゃない」

 かつてない怒りが、カインの中で揺らめいていた。許せない。

ミフユを馬鹿にするなんて。自分なら、何を言われても許せた。

 だが、彼女に何かしたり、彼女を馬鹿にするのは許せない。

……絶対に、許さない!!

 心の闇に、反応した紅きほむら

テレーズが悲鳴を上げなければ、カインは新たにわき出した

力で、フレイアを焼き尽くす所だったであろう――。



 フレイアは逃げ出し、テレーズも次の仕事に行ったので、

カインは美冬と二人きりになった。

 美冬はまだなげいていて、耳をふさいだまま悲痛な小さな

声を心中で呟いている。

(やめてやめてやめて……やめてっ!!)

 震える小さな体を、カインは優しく抱きしめた。

一瞬、彼女の体が強張る。でも、彼女は抵抗しなかった。

「ミフユ、ごめんね、つらい思いさせて。でも、君を傷つける

ものは、もういないよ」

 泣かないで。悲しまないで。自身も泣きそうになりながら、

カインは美冬に語りかけた。美冬が自ら手を伸ばし、カインの

背中に手を回す。

「カイン……」

「ミフユ……」

「私、怖いの。拒絶されるのが、怖い……。だって、私は、

向こうの世界では、拒絶ばかりされて来たの」

「誰だって怖いよ」

 彼女の黒い目に浮かんだ涙をぬぐいながら、カインは

まっすぐに彼女を見つめる。

「僕だって、拒絶され続けて来たら、そう思うと思うよ。でも、

誰が拒絶しても、君には、ちゃんと受け入れている人がいるから。

僕も、テレーズ達もミステルも、フィレンカ達も、姉様達も兄様

達も、父様達も、いるから!! だから大丈夫だよ」

 カインは美冬の額にキスの雨を降らせた。

美冬は真っ赤になったが、そのままでいる。

 もう、頭の中に声は鳴り響いてこなかった――。

 美冬が魔法大国の文字を勉強するお話

です。

 トラブルもありましたが、なんとか解決

した感じですね。

 実は、教師の名前はライカだったんですが、

姉様の一人をライカにしてしまったので

フレイアに変更しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ