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帰還者  作者: 松田要臣
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幼少

過去の記憶のひとかけらが陽介の保育園・小学校低学年時代を回想していく。

 私は東京に出てきてから独立した。

 

 独立といっても小さな会社を設立し、日々仕事をこなし、顧客を獲得していかなければ成り立たないくらいの会社だ。安定とは正直程遠い。

 

 営業活動と作業と事務仕事をすべてこなさないと追いつかない状態だ。


 そんな状態でも事務仕事の合間にネット等で一般世間の状態や便利情報を仕入れたりする。

 今がそんな状態の時だ。その時先日話した一哉との話を思い出した。


 「ふーっ、そういえば吉田っていたよな・・・。仲悪かったなぁ。」


 そう思うと勝手な回想がどんどん繰り広げられた。


 (あいつ、成績も対して良くなかったし、顔も気の強さが表れていて、そのくせ普段大人しい。

 でも、キレるとやっぱり気が強くてわけのわからない奴だったよな・・・。

 確か高校は碧南高校に行ったんじゃなかったかな・・・。


 あいつもバツ1ってことは、一度は結婚したんだよな。それもすごいな・・・。)


 そんな事がグルグル頭をまわっていった。


 (他の奴らってどうなったのかな。小学校時代のオレって嫌われ者だったからな・・・。


 私のことを思い出したくない奴らがたくさんいるんだろうな。)


 小学校時代の私はかなり酷い学生だった。幼心に自分の置かれた家庭環境にグレていたのかもしれない。


 あれは1年生の時だった。今でこそあるのかもしれないが、授業を放棄して、学校裏にある池でよく遊んだりしていた。そうすると先生が心配して迎えにくるのだが、全く相手にしない。あまりにも時間が掛かるので優しい先生もキレ始め、強引に手を引き摺られ学校へ戻っていった。


 その時はまだ暴力的な自分ではなかったのだが、それが爆発したのは2年生からだった。


 2年生になり、ある男子と同じクラスで出会った。というより再開をした。高山聡史だった。彼との最初の出会いは保育園の時に遡る。南保育園の年長組の時に同じクラスだったのだ。


 高山は覚えていなかっただろうが、私は保育園でのある出来事を鮮明に覚えていた。高山はずるかった。大人の前ではとにかくお利口さん。でも子供たちの中では怖い番長的な存在だった。すぐにまわりの人間を仲間に誘う。仲間にならない者に対しては多数の仲間で囲み暴言だけでなく暴力も振るい、いじめる子供だった。


 私の育ての母(叔母)も高山を見ると、


 「聡史君は本当に良い子だよね。」

 なんて言ったりもしていたので、内心(どこがだよ。)と苛立ちを隠せなかった。しかし、それほど親の目から見ると”お利口さん”を演じる?というより切り替えられる子供だったのだ。


 その頃から私は大勢グループの中に入るのが嫌いな子だった。どちらかというと、一人でもいいし、遊んだとしても特定の一人の友達だけで十分だった。


 もちろん、こんな私だったから高山からいじめの対象になっていった。


 その日、高山とその仲間たち4名が私をいきなり囲んだ。


 「陽介ってさ、お母さんいないの?」

 高山は少しニヤニヤしながら言った。


 私は言葉につまりながら、

 

 「う、うん、交通事故で死んじゃったもん。」


とこたえた。


 小学校1年生になる頃まで、叔父と叔母は私の母親を交通事故で亡くなったと教えてくれていた。当時、それほどまで離婚というのは恥ずべき事だったようだ。


 「ふぅーん、でもお父さんもいないんだろう?」


 「お、お父さんはいるよ!仕事で今はいないけど・・・。」


 

 「お前、本当は捨てられたんじゃないの?」

 と、高山が言うと、高山の周りの4名も口を揃えて、


 「そうだよ、捨て子、捨て子!捨て子!捨て子!」


 と、捨て子コールが始まり鳴り止まなかった。


 そう言われた瞬間の私は無性に涙が止まらなくなり高山の頬を力の加減をせずに引っ叩いていた。


 一瞬、周りの4人は言葉が止まったが、次の瞬間その中の一人が担任の梅川先生を呼びに走った。


 梅川先生は走って来た。周りの4人が口ぐちに、


 「陽介君が聡史君を叩いたよ!思いっきり叩いたよ!何もしてないのに叩いたんだよ!」


 「聡史君、どこ痛かった?」

 先生が高山に状況を聞いた。


 私は確かに高山の頬を叩いた。


 しかし、高山が指差したのは叩いた左頬ではなくの左の耳だった。


 左の耳の後ろには瘡蓋になった傷跡があった。もちろん今出来たものではない。


 私は必至で

 「耳は叩いていない!」

 と言おうとしたが、声が全く出なかった。


 梅川先生は過去の傷をたいして見ることもなく、傷が出来ていることだけを大げさに確認し、


 「陽介君、聡史君に謝りなさい!!」

 と、激しく怒った。


 悔しさで涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった私は謝ることはしなかった。


 黙っている私に飛んで来たのは、梅川先生のビンタだった。


 この時に理不尽なんて言葉は全く知らないが、こんな正しい事と間違った事がすり替えられてしまう事が起こり得る事を知った。


 


 

 私は心を閉ざした。 

 




  



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