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帰還者  作者: 松田要臣
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記憶

転載などはおやめください。

思い出を手繰り寄せようとする自分がいる。

あれだけ人のしがらみが嫌で抜け出てきた自分だったのに・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


保育所の頃からすべてが嫌だった。


それが勉強ではない。人だった。親・近所の大人・先生・同級生・上級生・下級生。周りの人という人が嫌で嫌でしかたなかった。友達などいなかった。


それが私、石田陽介である。歳月を重ねるごとに地元の名古屋からどんどん離れていった。

職を求めて移動していったわけではないが今は東京に在住している。


こんな私だが一人だけ地元に心を許せる心友を持っている。

その男は野中一哉といい、小学生からの同級生だ。最初から仲が良かったのではないのだが思春期の頃から歳を重ねるうちに心を許せるようになった。


今もほぼ毎日携帯電話会社の恩恵を受け、話をしている。


そんな中、野中が先日

「おい、聞いてくれよ。あの吉田美由紀って小・中学生の時おったがや。あれが今熟女パブに働き出したらしいわ。今度一度行ってみようと思っとる。なんか、バツ1になったみたいやな。あ、それから結構太ったらしい。」


「へぇーっ、確かそんな明るい奴やなかったよな。ただ、気が強かった記憶があるな。」


「でも、お前には全く関係ない話だよな。悪い、過去の話なんかしてしまって・・・。」


それほどまでに気にならない事だったのだが、一哉は私が昔から過去に触れることを面白くない事としているのをよく知っていた。


「別に気にする話でもないだろう。ただ、あいつでも結婚したんだなぁ。」


「そりゃ、そうさ。ほとんどみんな結婚しとるって。だって、俺たちもう38歳。後2年で40やぞ。結婚してないほうがある意味怖いわ。」


「まぁ確かに。でも、以外やな。俺ら以外の奴でバツ踏んでる奴がいるんやな。」

笑い混じりに話した。

私と一哉はバツ1どうしなのだ。


「そりゃ、おるって。バツ1なんて今、当たり前やもん。俺らの小さい頃とは違うさ。」


「確かに。俺らの小さい頃は親がいなかったり、家庭環境が少し違うとすぐにイジメの対象やったもんな。」


「陽介はだいぶ苦労したもんな・・・。」


「ああ。よく喧嘩した後に捨て台詞で捨て子とか言われていたからなぁ。喧嘩で勝ってもいつも不快だったわ。」


私は両親に育ててもらっていなかった。かと言って施設で育ったわけでもなかった。

生みの父親の姉である叔母の家で育てられた。


生みの父親と母親は私が2歳の頃離婚した。父親が引き取ったのだが育てきれなくなった為、


「手放せない仕事があるから一週間預かって欲しい。」


と叔母に伝え20年間もあずけることになったらしい。



その日はそんなあたり障りのない話で終わっていった。

しかし、その話を境に私の心は大きく変化していった。





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