第6章
「おまえさ…まさか……」
「さあ…どうでしょう?」
雲隠の指先に止まっていた白い鳥が、ぱっと飛び立った。
雲隠は静かに微笑んでいる。
「少なくとも、彼女の笑顔は心からのものだと思いますけどね」
「ま、そうなんだけどな」
学然はうーんと、頭をかいた。納得がいかないようすだ。
「あの時、この結果を望んだのは彼女です。わたくしは選択肢をきちんと用意しましたよ」
そう、あの時、己の命が残りわずかであることを知ったのにもかかわらず、かの少女は強い心で、残りの命を大切に生き抜くことを選んだ。
生きながらえる術があったのにもかかわらず、だ。
両親の願い――すなわち、彼女が少しでも生きることができるよう、二人の命を削ることを彼女は望まなかった。
「彼女は幸せですよ。愛する者と最期のときまで共にいられたのですから……」
雲隠は二胡に手をやる。
そうして、おもむろに奏で始める。高く、低く。泣き声にも似た悲しい音色は、竹林へと吸い込まれていった――。
第1話はこれで完結です。
が、このあとも、雲隠と学然の物語は続きます。
もしよろしければ、第2話以降もお楽しみくださいませ。