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状況把握が早すぎる元自衛官令嬢、婚約破棄を片付けたら皇太子殿下に執着されました  作者: S@Y@


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第32話:新婚二日目の夜。……殿下、「今夜はゆっくり」というのは、労働時間が長くなるという意味ですか!?


「……はぁ。状況把握、開始。時刻は午後九時。新婚二日目の夜。昼間のスープ配給あーんのあと、私は三時間の手堅いお昼寝(HP回復)に成功した。……はずなのに、寝室に入ってきた夫の目が、昨夜とは違う意味で据わっている。状況、極めてレッドアラート(逃げ場ゼロ)ね」


王宮の主寝室。私はベッドの上で、早くも毛布を胸元まで引き上げて防衛陣地を敷いていた。


昨夜のルファード殿下は、理性をシャットダウンさせて急ぐように猛攻を仕掛けてきた。しかし、今夜の彼は違う。

お風呂上がりで、緩く波打つ金髪からは甘い香りが漂い、シルクのナイトガウンを纏った姿は、驚くほど優雅で非の打ち所がない。だが、その宝石のような紫の瞳の奥にある独占欲の熱量は、昨夜の数倍に膨れ上がっているように見えた。


殿下はベッドの端に腰を下ろすと、長い指先で私の頬をそっと撫でた。


「昨夜は少し、余裕をなくして急ぎすぎたね、アルティナ。せっかくの初夜なのに、君にたくさん無理をさせてしまった。……だから、今夜は反省したんだ」


「は、反省……? 状況把握を。殿下がご自身の肉食獣っぷりを客観的にスキャンし、業務改善(理性の維持)に努めてくださるのであれば、我がスローライフ憲章としても歓迎――」


「いや、違うよ?」


ルファード殿下は妖艶に微笑むと、私の言葉を遮るように、私の唇に自分の親指をそっと当てた。

そのまま私の身体を包み込むようにして、ゆっくりとベッドへと押し倒してくる。


「今夜は、朝まで時間をかけて、もっと優しく、じっくりと君を愛し抜こうと思ってね。一秒も焦らず、君の可愛い声をたっぷり堪能させてもらうよ」


(……えっ!? 状況把握、不可、能……! ちょっと待って殿下、「ゆっくり」って、それ私に対する精神的・肉体的残業時間が昨夜より大幅に延長されるって意味じゃないですかーーー!!)


私のカンストした状況把握能力が、殿下の「極上の余裕を湛えた包囲網」の恐ろしさを秒で看破した。


昨夜の猛攻も心臓に悪かったが、今夜の、逃げ道をすべて塞いだ上でじわじわと私を甘さで溶かしていくような本気の男の色気は、それ以上に有害だ。至近距離で見つめられるだけで、私の心拍数は瞬時に戦闘限界(大バクバク)を突破し、肌が触れ合う場所に熱が集中していく。


「殿下、待っ……状況、把握……! 今夜は『週休六日のうちの一日(完全休息日)』として申請します! これ以上の実技演習は、私の防衛体力が持ちません……っ」


私が顔を真っ赤にして胸板を押し返そうとするが、殿下はその手を優しく捕まえ、手の甲に深く、熱いキスを落とした。その紫の瞳が、獲物をじっくり味わう肉食獣そのものの妖しさで細められる。


「却下だ。新婚の夜に、夫の愛の受け止めをサボることは許されない。……覚悟はいいかい、俺の可愛い皇太子妃様? 朝が来るのが絶望的になるくらい、俺の特等席(腕の中)で甘やかしてあげるからね」


(おのれ肉食獣上司ーーー!! 結局、昨日も今日も、私の睡眠時間を100%侵略する気満々じゃないですか!!)


そう心の中で叫んだ直後、今度は驚くほど優しく、けれど絶対に逃がしてくれない深さで、ルファード殿下の甘い唇が私の唇を完全に塞いだ。


こうして、新婚二日目の夜は、極上の余裕を身にまとった夫の「時間無制限の甘々総攻撃(ロングラン残業)」によって、ベッドの上で初手から完全ノックアウトされるのだった。私のものぐさスローライフへの道は、この愛が重すぎる皇太子に一晩中愛され続けるという、最も甘美で過酷な戦場へと沈んでいく。


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