9チャーチルの様子が
「ただいま帰りました」
私は気分良く屋敷に帰って来た。何しろできた感染予防のキャンディと、うがい薬の試作品が出来たから。
ほんと、兄さんったらこんなに早く作ってしまうなんて凄い!
キャンディは子供向けにはイチゴ味とリンゴ味のもの。大人向けにはミント風味とジンジャー味のものとハチミツ味の5種類。
うがい薬もミント風味とハチミツ風味。
ネーミングがまたすごくて、子供向けはお薬キャンディ。大人向けはハーブキャンディ。
うがい薬は、いがいがごろごろすっきり。のどうがい薬。これが名前?ぷぷっおかしい。でも分かりやすい。子供でも使える事をアピールするために犬や猫やウサギがみんなでうがいをしている挿絵が小瓶に貼られている。
すぐに教会や診療所に試供品を配って実際の効果を検証してもらう事になった。
やったぁ~。これで少しでも感染症の病が減ってくれたらどんなに嬉しいか知れない。
「お帰りなさいグレイスさん。チャーチルが帰ってるわ。あなたも早く会いたいでしょう。だって新婚だもの」
玄関を入るとすぐに義理母様と顔を合わせた。
「義理母様すみません。旦那様のお迎えもしなくて‥」
「そんな事気にしなくていいのよ。じゃあ、夕食で」
「はい」
急いで2階に上がる。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
メイアが後ろから声をかける。
「もちろんよ」
そこにシャワーを浴びたばかりのチャーチル様がいた。髪はまだ濡れていて上半身は裸のまま。
意外と筋肉あるんだ。いやだ。だって見えちゃったから。
「きゃっ」思わず声が。
「あっ、すまん」
チャーチル様が慌ててシャツで胸を隠す。
「いえ、構いません。私こそすみません。見るつもりはなかったんです」
「いや、見られても構わないが‥それより話がある。メイアとヴォルターは外してくれ」
「「はい」」
チャーチル様は私を夫側の部屋に連れて入った。
「お帰りなさい。お出迎えもせず申し訳ありません」
「そんな事気にしてない。それより母が何か言ったらしいが?」
「はい、その‥一緒に寝なかったことを気にされて」
「すまない。その‥白い結婚だとは話していなくて‥いや、グレイスは悪くない。ただ、俺が両親に言いにくくて、でも、やはりこのままではいけないと思う」
「えっ?それって白い結婚じゃなくなるって‥?」
私は怪訝そうな顔で彼を見たと思う。
「いや、ちがっ!今すぐってわけではないが、いずれ跡取りの話も出てくることは必然だし」
「そのことはそちらで何とかする話では?」
「ああ、そのつもりだった。が‥両親があそこまで期待しているとは思わなかったんだ」
「で、でも、約束を守って頂けないのでしたらりえん‥」
「もちろん約束は守る。うちだって今離縁したらどうにもならなくなる。だが‥いずれは白い結婚でなく‥いや、互いをもっとよく知って心が通い合えばそう言う事もあっていいのではと思う。グレイスはどう?」
チャーチルは翡翠色の瞳を真っ直ぐに私に向けた。その顔に嘘はないって思うほど真剣に。
でもねぇ。
あなたって最初に私が変装したのを見て後悔してるって事よね。あれ?お前って意外と思ってたより見栄えがいいじゃないか。
チャーチルあなたってその程度で気持ちが変わるって事なの?
以外。もう少し性根がある人かもって思ったのに。
私そう言うタイプ好きじゃないのよね。見た目だけでコロコロ気持ちを変える男。そう言う男ってすぐに目移りするんでしょう。今はちょっと私に興味が湧いたからエッチがしてみたくなった。
でも、すぐに他の女に行ってしまう。そしたらあなたは男の性がそうさせるんだって言うのよねぇ。ほんと勝手なんだから!
レイブルに期待していた気持ちが裏切られた時を思い出してつい腹立たしくなる。
「そんな簡単に考えを変えるくらいなら最初からこんな話をどうして持ち出したんです?それなら暫くそう言う関係にはならないでおこうとか、お互いもう少し知り合うまで待とうとか。言い方ありましたよね?でも、あなたは最初から、いいえ、私を見た瞬間に白い結婚にすると言ったじゃありませんか!それを今さら変えたいと言われても困ります!」
少し大げさに拒絶を示した。
「ああ、だから後悔してる。俺は最初の妻で結婚にうんざりしていたし二度と結婚する気もなかった。家の事情で仕方なく。でも、君がカトリーナとは全く違う女性だと気づいたんだ。もう一度、結婚生活をやっていけるんじゃないかって思ったんだ。本当に勝手な話だと思っている」
彼が心から謝罪していると感じた。
でも、だからってどうすればいいのよ。いきなりそんな事言われても困る。これだから無駄に顔がいい男は!
「そう言われてもチャーチル様。私には時間が必要です」
「ああ、もちろんそのつもりだ。すぐにどうにかしようなんて思っていない。こっちの都合があるし‥」
「はい?今なんて?」
「いや、グレイスありがとう。君の期待に応えられるよう努力する。いいね?俺は君と仲良くやって行きたいと思っている。今はそれだけ理解してくれればいい」
彼からテーブルの上にあった包みを渡される。
「あっ、今度新しく発売する商品なんだ。グレイスに見て欲しくて」
包みを開けると淡いブルーのデイジーを押し花にした封筒が。
「きれい‥」
思わずその花を指先でなぞる。
「良かった。グレイスに一番に使ってほしくて‥それで俺と仲良くやって行ってくれる?」
こんな事されたら返事は一つしかないじゃない。
「はい、私もそれは同じ気持ちです。お互い仲良くやっていければいいですから」
「ああ、じゃ、約束の印にキスしても?」
キス?どこに?
「‥ぇぇ」
言葉を言い終わらないうちにチャーチルに腰を引き寄せられた。ぐいと顎を持ち上げられて唇を奪われた。
結婚式とは比べ物にならない大人のキス。
唇の間から舌をねじ込まれて口腔内を思う存分蹂躙された。
「‥むっ、うぅ、ねちゃ、ググッ‥」
唇が離れると銀色の糸が。
はぁ、はぁ、はぁ‥
「殺す気ですか!」
「ハハハ、グレイス。キスをするときは鼻で息をするんだ。わかったか?」
「わ、悪かったわね。そんな事も知らないお子様で。私なんかより手慣れた女とでもお楽しみになったら?どうせ白い結婚ですからどうぞご自由に!ふん!」
慌ててチャーチルが言った。
「キスの仕方も知らない事がどれだけ男がうれしいか知らないんだな。グレイス、俺はますます君の虜になった。他の女に手を出すなんてあり得ないから」
更にぐっと抱き込まれてさっきより激しいキスをされた。
もう、一体何なのよ!!白い結婚って言ったじゃない!
でも‥ほんの少し彼の好感度が上がった。




