3白い結婚の意味知ってます?
休もうとした時ドアがノックされた。
「俺だ。グレイス開けてくれ」
すでにメイアも下がらせている。ここは私に用意された伯爵夫人の部屋だと聞いた。もちろん夫婦としての部屋もあるが白い結婚なのでその部屋を使う予定はない。
ただその部屋に入れるドアはあるけど。ノックはそのドアからだった。
それにすでに寝間着だし。
ベッドから出ないまま返事を返す。
「申し訳ありません旦那様。私はすでにベッドに入っていますので、用があるなら明日の朝伺いますので」
ガチャガチャ。「どうして君はそっちのベッドに入ってる?えっ?こちらの部屋にいるのが筋だろう?今日は夫婦となって初めての夜だぞ。おい、グレイスわかってるのか?!」
「はっ?白い結婚の意味知ってます?」
思わず心の声がだだ洩れた。
「だから?」
「はい、最初に約束しましたが書面にサインもされたはずです!」
少し語尾が強くなるのは当然。
「そんな事わかってる!だが、夫婦としての体裁ってものがあるだろう!」
ガチャガチャとまだドアをこじ開けようとする。
私は少し苛立ちながらベッドから起き上がると椅子を持ってドアのノブの下に椅子をはめ込むように置き、さらにノブを動かないように紐で固定した。
「夫婦としての体裁?ではあの書類に何の意味もないと言う事と理解しますが?」
「何も君を求めようとなど思ってない。ただ、使用人達への体裁があるから‥君だって俺に相手にされなかったと思われるのは嫌だろう?だから‥」
「いえ、そんな事きにしません。もしどうしてもとおっしゃるなら、私すぐに家に帰らせたいただきます。メイア!メイア来てちょうだい!!」
私は恥じらいもなく大声でメイアを呼ぶ。彼女は隣の部屋に待機しているはずだから。
慌ててチャーチル様が廊下に出て来る。
私は瞬時にドアの鍵を確認する。大丈夫鍵はかかっている。
「おい、グレイス待て。どういうことだ?俺たちは今日結婚したばかりだぞ。階下では親戚の者が祝宴を上げている最中。そんな時に花嫁が実家に帰るだと?ふざけるな!おい、ここを開けろ!グレイス!!」
バシッ!ドコッ!ガタン!
「いてっ、おい、はっ?お前侍女のくせに。がはっ、やめろ。こんな事して許されると?クッソ覚えてろよ。お前なんかくびだ!契約書には表向きは夫婦を装うと書いてあったはずだろう!」
夫婦を装う?ああ、そういう事。
チャーチルが去って行く気配がする。まるでしょげた子犬のように感じた。
するとメイアが入って来た。
「お嬢様おけがは?」
「大丈夫。ああ~。旦那様はそれで‥ごめんメイア。私ったら‥契約書にね夫婦として装うって書いたから、きっとチャーチルは夫婦として装わなきゃって思ったんだわ。チャーチルに謝らなきゃ‥」
「ですが、白い結婚とおっしゃったのはあちらです。夫婦となって初めての夜だとか言ってふざけてますよ!お嬢様は気になさる必要がありません。もう少し痛めつけておくべきでした。これは見張りをつけたほうがいいですね」
メイアは歯ぎしりをして舌打ちをした。
「そうね。白い結婚だもの」
「はい、すぐにうちの護衛をドアの前に立たせて、それにこの内扉も何とかしなくては」
メイアがすぐにオーブから連れて来た護衛を呼びドアの前にヴォルターが立つ。
一緒に来た護衛騎士はヴォルター・ローレン。彼は辺境伯の次男でメイアと同じく王家の影となるはずがいつの間にか私の護衛として働いていた。
彼は私の3つ上の21歳。もちろん独身で黒髪で琥珀色の瞳を持つが残念な事に顔はいかつく体躯は熊並み。まあ、護衛としては立っているだけでも恐いからすごくいい。
チャーチルに会いに行った時も一緒に来て白い結婚の話も聞いていた護衛で私が絶対に信頼している人。
ちなみにわがオーブ子爵家は王家の影の育成も行っている。もちろん他者には内密。
メイアは孤児だったがそこで教育を受けた優秀な人材だったのを私の侍女として付けたのはエドワード兄様だった。
だから軟弱な貴族の令息をぶちのめすくらいは朝飯前って言うわけ。私も剣技と護身術は身につけているのでチャーチルに襲われても問題はないと思うけど。今はそれを公にする事もない。
ガチャリとドアがあいてヴォルターが挨拶をした。
「お嬢様、一晩中見張っておりますのでご案してお休み下さい!」
ヴォルターがそう言ってちらっと白い歯を見せた。その様はみんなからすると熊みたいで怖いらしいけど私には一番心が和む瞬間だ。
「ありがとうヴォルター。あなたがいれば安心ね。でも、適当なところで休んでね。あなたも無理しないで」
「お、俺は一晩くらい寝なくても大丈夫ですから‥どうか気にせずおやすみ下さい!」
じわっと耳を赤くしている。
かわいい。そんな不埒な事を思ってはいけないと思いつつ「ええ、あなたがいてくれて良かった。おやすみ」
「ヴォルターいいからドアを閉めて」
メイアが容赦ない言葉を‥
ヴォルターが顔を真っ赤にしてドアを閉めた。
「まったくヴォルターったら‥では、お嬢様ゆっくり休んでください。もし、何かあったらいつでも呼んで下さい。今度はこちらの紐を引いていただければ私の部屋に直結しておりますので」メイアがそう言って隣の部屋に。
「ふふ、ま、心配ないと思うけど。メイアありがとう。助かったわ、お休み」
それにしても、白い結婚と言う事は絶対にチャーチルには愛人か女性がいると思うんだけど、まあ、私には関係ない事だしこの事には一切触れずにおこう。
そんな事を思いながら私は眠りについた。




