13キレる!
朝食の席にはチャーチルだけだった。
義理父様は取引でガデリア国に出向いているし、義理母様は友人と小旅行中。
だからこんな派手な格好も出来るんだけど。
「おはようグレイス。はっ?なんだ、その格好は?」
チャーチル様はいつものように立ちあがって私の椅子を引こうとして顔をひきつらせた。
「何がって?私の姿など別に気になさらなくても‥スープが冷めますよ」
冷ややかな返し。
「いや、別にその姿も似合ってる。愛してるグレイス」
彼は思い直したように自分の席についた。そしていつものように愛してると言った。
ふん、昨晩の女にもそう言って同じことを言ったんでしょう。
感情など入れてはいけないと思うけど、嫉妬でどうにかなりそうだった。
返事もせずカラトリーに手を伸ばす。
「グレイス?どうした?どこか具合でも悪いのか?」
チャーチルがこちらに向き私を覗き込むように視線を向ける。
「いえ、旦那様お食事が冷めてしまいます。それに私今日は急ぐので‥」
急いでスープを口に運ぶ。次にパンをちぎって口に運ぶ。
「そうか、ならいいんだ。俺の気のせいなら‥そうだ。今夜は外で食事でもしないか?二人きりだし、どう?」
そっと伸ばされる手が私の頬に触れた。
どうしてそんなに優しくするの?男って。男って。手のひらを返すようにそんな態度がとれるなんて!
悲鳴を上げる心が遂に弾けた。
バンッ!テーブルを力任せに叩いた。
「チャーチル!私に話しかけないで。汚らわしい。昨晩別の女に触れた手で私に触らないで!その女に甘い言葉を囁いておいて今朝はそうやって私にも甘い言葉を吐き出すなんて‥しょせんあなたと私は契約結婚。お互い干渉しないって約束でしょう!こんな、誰もいない所でお芝居をする必要はないのよ」
そう言いながら涙が溢れ出た。
何で泣くのよ。悲しくなんかないのに。こんな人好きでも何でもないのよ。ぐすっ、ずりゅ、うわぁぁぁぁぁん。
「ぐれいす‥何を言って‥どうしてそれを‥」
認めた。決定的だった。
聞きたくなかった。嘘だって言ってくれたら。ううん、そんな事‥
「チャーチルなんか大っ嫌い!!」
いたたまれず席を立って階段を駆け上がる。
後ろからメイアが、ヴォルターが追って来る。
「おじょうさま、危ない」「おじょうさま!」
「グレイス待ってくれ。違う。誤解だ。」
焦ったようにチャーチル様が追いかけてくる気配が。
急いで急いで逃げなきゃ。ああ、階段を上がったのは間違いだった。外に出ればよかった。
とにかく部屋に入ればと私は階段を上がる足を早めた。
あっ。
バタバタバタン!!
「おじょうさま!」
「おじょうさ、ま~!」
「ぐれいす!何をしている医者だ。医者を呼べ!」




