12そう言う事なら
その夜遅くにチャーチル様は帰って来た。
今晩は一緒に寝る日ではなかったので彼は私の部屋を通り過ぎて夫婦の寝室に入った。
ちなみに彼は一人の時もいつでも夫婦の寝室で寝ている。
私に声かけてくれなかったな。いつもなら”グレイスもう寝た?ごめん。お休み。ゆっくり休んで”とか言うくせに!
耳を澄まして音を探る。
かさこそ衣擦れの音がしてすぐに静かになった。
えっ?なるべく音をたてないようにしてる。やっぱり、心にやましい事があるからだ。
いつもなら私に気づいて欲しいみたいにドタバタと大きな音を立てるくせに!
気に入った女性がいたんだろうか?あの、遊び人のノヴァが一緒だもの、きっと見目のいい女性とそう言う事をしたんだわ。
経験がないゆえにどんな事をするか想像でしかわからない。キスして女性の肌に触れて髪だって優しく撫ぜて甘い言葉を囁いて‥
子種を注いだのよ!!もおぉぉぉ!!
なぜこんなに腹立たしいのか。チャーチルが何をしていようと私には関係ないはずなのに!?
白い結婚。お互いの干渉はしない。表向きだけ夫婦を装う。何もチャーチルは約束を破ってはいない。
私は喜んでこの契約をうけいれたはずだった。
なのに‥‥
彼は契約なんかなかったみたいにいつだって優しくしてくれている。両親へのフォローだって仕事にだって寛容でプレゼントをしてくれたり優しい言葉をかけてくれて。
ああ、私ったら。完全にチャーチルに絆されているじゃない。
もう二度と彼に心を傾けることは止めなきゃ。そうしなければ私の心がきっと崩壊してしまう。
散々悩んだ挙句一睡もできないまま夜が白み始めた。
翌朝、ひどい隈があった。
「グレイス様、大丈夫ですか?もう、眠れないなら呼んで下さればよかったのに‥」
「メイアだって休まなきゃ、それにヴォルターとはどうなの?」
最近気づいたが、ふたりはどうやらいい仲らしく。私に気づかれないように時々いちゃついている。
知ってるのよ。と言わんばかりの顔でメイアを見る。
「グレイス様!それは今関係ありません!」
「あら、私がうまく行かないからって妬んだりしないわ。二人が仲良くしているのはうれしいわ。いずれ結婚してもずっと私のそばにいてくれるでしょう?」
「そんな事、もちろんです。私もヴォルターもグレイス様が大好きですから、結婚してもずっとおそばにいます」
「やっぱりそうなのね。いいのよ。私はチャーチルに相手にされないからって気にしなくて。ふたりは仲良くしてね」
「ギリ!グレイス様!あいつ潰しましょうか?」
メイア。顔が恐いわよ。
「そうね‥愛人でも作ったら、たま。潰してもらおうかしら‥」
「お任せ下さい。いつでもご期待に応えますので」
「フフフ。何だかそう思ったら気持ちが楽になったわ。さあ、朝食に遅れるから支度して」
「はい、グレイス様今日のお召し物はこちらにしましょう」
メイアが出して来たのは、露出の大きいホルターネックのワンピース。色はド派手なピンク色。肩と背中が出ている。
髪は下ろして後ろに流すようにしてお化粧は少し派手に口紅はドレスと同じピンク色。いつもの初々しい雰囲気は消し去って。
さあ、いざ食堂に。




