10妻に恋をしたらしい。かなり重症(チャーチル)
それからの俺は努めてグレイスに優しく接した。
食事は必ず一緒に取って椅子はもちろん引く。花束やお菓子を贈る。
両親には自分たちのやり方できちんとするから一切口を挟まないでくれと俺からはっきり言った。
父は快諾してくれた。母は何やら言いたげだったが父が「お前だって姑にいちいちそんな事を言われてみろ。どんな気分になる。それこそできるものも出来なくなる。そうだろう?」
母は納得した。
それからは週に一度グレイスを一緒に寝る事を許してもらった。ただ、一緒に夫婦の寝室で休むだけの約束だ。
ある休日に一緒に宝石を買いに行った。
グレイスは薄いピンクのワンピースで髪は柔らかく結って少し恥ずかしそうにする姿に胸がときめいた。
腕を組もうとすると恥ずかしそうにそっと手を絡めて来てそんな仕草を可愛いと思い、宝石店でさらに感動すらした。
「グレイス好きな宝石を選んで」
「でも、チャーチル様、領地の方は‥」
「かなり立て直せてるし、何より君には結婚指輪しか贈っていない。両親にも叱られたんだ。だから遠慮しなくていいから」
「でしたらチャーチル様が選んで下さい」
グレイスは頬を染めてそう言った。
一瞬で心が躍る。なんだこれは?
「そうか。じゃあ、これなんかどう?」
俺は高額商品のショーケースの中のサファイアのネックレスを指さした。かなり無理をした。でも、今まで何も贈っていない罪悪感で高価な宝石を選ぶべきだと思ったから。
最大限の愛の表現。
「チャーチル様、私はこっちのネックレスが欲しいわ」
はっ?どうして?
グレイスがさっと席を立って高額ではなく少し値が張る程度の真珠のネックレスを選んだ。
その瞳は迷いがない。本当にその真珠のネックレスが欲しいと思わせた。
「いいんだよ。君に贈る最初のプレゼントなんだから」
俺の男としてのプライドみたいなものがそう言わせた。本当は無理をしているくせに。
「チャーチル様、わがままでごめんなさい。でも、私これが気に入ったの。お願い」
「お付けになって見ますか?」
店員が真珠のネックレスを取り出してグレイスの首につけた。
鏡に見入るグレイス。きれいだ。銀色の髪と紺碧色の瞳にそのネックレスは本当にすごく似合っていた。
「似合ってます?」
不安げにちらりと目を上げるグレイス。
「ああ、すごくきれいだ」
「じゃあ、これでお願いします。チャーチル様、これ以上の贈り物はいりませんからね。先に言っておきますよ。ふふ」
そう言ったグレイスは本当に嬉しそうで。
「‥‥‥」
店員が気づかないふりでネックレスの包装を始めた。
「ありがとうございます」
店員が包装した宝石をグレイスに渡した。
「チャーチル様こんな美しいネックレスありがとうございます。私生涯大切にしますね」
胸の奥にうれし涙が流れた気がした。
プレゼントを贈ってこんな気持ちになった事はなかった。こんな安物のネックレスを生涯大切にするとグレイスは言ってくれた。
それは送り主に対する最大の礼。最高に嬉しい言葉だった。
俺のグレイスに対する気持ちは格段に跳ね上がった。愛している。グレイスを心から愛してる。
そう、俺は妻に恋をしている。
毎日、彼女に愛を囁き髪をそっと撫ぜ優しく抱きしめキスをする。週に一度一緒に眠るときはずっと腕の中に抱きしめて髪に顔じゅうにキスの雨を降らした。
グレイスを見ると胸がときめく、あそこがズクンと疼き始める。勃て勃つんだ俺のむすこ!!が。そうだ。ググっと‥それはほんの数秒。あっ、そしてソコは萎えて行った。
俺の股間は使い物にならなくて何とか解決しなければならない問題だった。
何とかしなくては!だが、娼館になど行けるはずもない。誰かに相談する勇気もなかった。もしグレイスの耳に入ったら嫌われる。そんな恐怖があった。
何かいい方法はないか?適当に後腐れがなく試してみる方法がないだろうか?
俺は日々悩んだ。
が、ある日知り合いから仮面舞踏会に誘われた。
そうだ。これに参加して後腐れのない女性と試せたら、相手はきっと手慣れた女だから。向こうがその気にさせてくれるかもしれない。もしだめでも相手が誰かもわからないんだ。女性はまた別の男を探すだろうし、俺もチャンスがあれば2~3度試せるかもしれない。もしそこでうまく行けばきっとグレイスを初めての夜を迎えれる。
ずっと心の底にあった不安がさらに決心を押し上げた。
亡くなった婚約者の事なんか忘れさせてやる!
俺は決心した。




