第17話 キャスパリーグ家御令嬢参戦
(*´∀`*)おぱようございみゃす!
「暖簾分けした老舗が同じ屋号を名乗っている様なものじゃな。良く捉えれば御先祖様の名誉の為、悪く捉えれば金目当てじゃろう」
「そんな身も蓋も無い」
その家ももう大分没落し、中位貴族に落ち着いている。
「煩いのはその二代目三代目勇者の家だけじゃ。四代目勇者以降は最早本当に只の称号と云うか、一代限りの勲章の様なものじゃったしな。何十年か前に、モンスターのスタンピードから王都を防衛した司令官が勇者の称号を賜っておったの。知略や軍隊指揮能力は高かったが、魔力や戦闘能力は常人じゃった」
勇者は別に資格性ではないので、名乗ろうと思えば名乗れてしまうし、本人が名乗らなくても周りがそう云えばそうなるのだ。
国は民衆の反応を見て称号を与える。
正に国民栄誉賞である。
「二代目勇者家―――紛らわしいのぉ。元祖二代目勇者家としようかの」
「元祖って⋯なんか商売みたいですね」
「正にその通りなんじゃがの。当主はもう高齢で有望な後継者も居ない筈⋯なんじゃがの⋯孫がの。息子が盆暗でも孫娘が切れ者なんでな。厄介じゃよ。その厄介な孫娘が当校に一人在籍しておるわ」
レイヴンや学園にとっては完全に部外者だ。
その家から何か恩恵を受けているなら兎も角、特に何も無い。
遡っても多額の寄付金を貰ってた過去も無い。
歴代の校長や運営は先見の明が有った訳だ。
王侯貴族だけでなく、有力な商人達からも別に何かを要求される事態にはなっていないのだから。
「その家の特色はの。勇者グッズの販売じゃ」
「勇者グッズ?」
「お主も一度は見た事は有ろう」
王都銘菓、王家御用達、元祖勇者饅頭⋯が、一番の人気商品である。
初代の直系ではないので、小さい文字で注意書きに二代目と書かれているが、勇者と云うロゴはデカデカと派手なデザインである。
後は聖剣クッキーとか、聖剣にチェーンが付いたキーホルダーとか。
そう云った商売で生計を立てているから必死なのだろう。
元々は平民の商人の家だったが、没落した貴族令嬢を娶って貴族位を獲得している。
初代勇者直系のプリムの家を取り込もうと画策した頃も有るが、プリムみたいな脳筋馬鹿が定期的に産まれる血筋なので諦めた過去が有る。
「ああ、あれそうなんだ⋯」
レイヴンも田舎土産に勇者饅頭を買っていた。
大量に買い過ぎたので田舎の学校宛に宅急便で配送を手配してある。
「向こうの要求は特許の侵害に対する賠償金。阿呆な話じゃ。聖剣を抜いてから出直して来いと突っぱねたわ」
「それさっきも聴きました。じゃぁレプリカでも用意するんじゃないですか?」
レイヴンが自分の状況を皮肉る。
「そんなもん持って来おったら、お主の本物の聖剣で叩き割ってやれ」
「あはは⋯」
二重の意味で校長には通じなかった。
「次はお主の取り込みじゃな。二代目勇者レイヴンを本家二代目勇者レイヴンとし、元祖二代目勇者キャスパリーグとコラボさせろと云う話じゃ。キャスパリーグ等とっくのとうに死んでおるがの」
(⋯キャスパリーグ?どっかで聴いた⋯いや、見た事が有る⋯ああ、あのロゴ)
元祖勇者饅頭の包装紙に描かれていた猫のキャラクター。
確かアレは⋯猫勇者キャスパニャン。
その側にキャスパリーグと云う会社名が記載されていた。
「お主を公式アンバサダーにしてテレビCMに出させろと言ってきおった」
「テレビ⋯」
段々話についていけなくなってきた。
確かに猫勇者キャスパニャンが魔王に追い詰められて、勇者饅頭を食べてパワーアップするテレビCMは見た事が有る。
有名だ。
(アレを俺もやるの?)
偽者の勇者なのにテレビ出演までしたら末代までの恥である。
「勿論断ったぞい。お主はうちの生徒と子作りせにゃならんからのぉ」
「ちょっと待って下さい」
「何、心配するな。うちには託児所も有る。産ませた子供の面倒は見てやるから安心して励め」
「違うそうじゃない」
結局の所、レイヴンの二代目襲名に物言いを付けた訳ではなく、一枚噛ませろと云う話らしい。
魔力や戦闘能力こそ低いが、当主の孫娘は商魂逞しい事で有名だ。
引退気味の現当主の祖父、お坊ちゃんな次期当主の父親ではこうもフットワーク軽くはうごけまい。
その孫娘の策略で間違い無いだろう。
無茶な言い掛かりを付けたのも、レイヴンと直接接触する為の搦め手だ。
「お主はチョロそうじゃからのぉ。変な女に引っ掛かる前に、初代勇者パーティー直系子孫と子供を作って欲しいのじゃが」
「チョロそうて⋯後、堂々と教職員に不純異性交遊を勧めないで下さい」
「ふんっ!我が校では違法性は無い。むしろ奨励しておるぞい」
この国での成人は十五歳。
例え生徒に手を出しても未成年淫行にはならないのだ。
「何でそんな化石みたいな校則を改訂していないんですか?」
「男子分校が廃校になって久しい。在籍していた男性教師もほとんど逃げ出してしまい、実質的に無効じゃったからのぉ」
レイヴン以外にも男性教師は勿論居たのだが、若い女子生徒に積極的に襲われる為に既婚者からは恐れられ敬遠されてしまう。
独身者も女子生徒に手を出したが最後、婿入りさせられ寿退職させられてしまう。
在籍させたままだと妊娠してる間に泥棒猫に寝盗られるので、貴族令嬢達は貴族パワーで男を囲ってしまうのだ。
勇者学園とは、男性教師にとっては正に鬼門な女子校であった。
その実情をもっと早く知っていれば、レイヴンもとっくに逃げ出していたかも知れない。
もう大分手遅れなのだが。
「時にお主、情に絆されて良く解らぬ生徒を部屋に連れ込んだりせんようにの?」
「してませんよ」
(勝手に入り込んで来たりするけど)
プリムは男子寮の壁を爪で引っ掻いていたし、偶然出会ったカグラも今考えると都合が良過ぎる。
きっとレイヴンを出待ちしていたのだろう。
その予想は合っている。
カグラは気配と魔力を限り無く消して待ちに徹し、門限ギリギリまでレイヴンを待っていた。
月光浴が好きなのも本当ではあったが、そう云った強かさはやはり貴族令嬢、勇者学園生徒なのである。
(でも確かにこれ以上、女の子とは関わりたくない)
しかし此処は女子校。
レイヴンの切な願いは叶えられない。
その事実を証明する様に、コンコンコン⋯と、扉がノックされる。
「うむ、もうそんな時間か。まぁ良い、入って良いぞ」
「失礼致します」
そうして入室して来たのは、実に華やかな美少女であった。
「勇者学園女子分校校長ポプリ様。ご機嫌麗しゅう存じます。そしてお初にお目に掛かりますわ。ルルナ・キャスパリーグと申します。以後お見知り置き下さいませ。⋯二代目勇者レイヴン様」
美少女からの丁寧な挨拶に気圧されるレイヴン。
「あ、ええと、レイヴンです。どうぞ宜しくお願い致します」
スラリとした手足、細身なのに出る所は出てるプロポーション。
ウェーブの掛かった豪奢な長い金髪。
宝石の様な青い瞳。
整った顔に柔らかな笑み。
(お姫様かと思った)
「盗み聞きとは感心せんな」
先程から扉の前に来ていたのは魔力感知で知っていた。
聴こえる様に嫌味を繰り返していたが、当の本人は涼しい顔をしている。
権謀術数に長けた文官貴族の様だ。
(ちっ⋯一筋縄ではいかんか。多少怒ってくれた方がやり易いんじゃがの⋯)
ルルナは可愛らしく小首を傾げる。
「あら?アポは取っておりましたよ」
「そうじゃったな。すまんの。此奴の間が良いと云うか悪いと云うか」
「え?俺の所為?それはどうも、すいません⋯」
どうやらレイヴンの方が彼女とのアポイントメントの時間に割り込んでしまったらしい。
慌てていたとは云えアポをしっかり取っておくべきであったと反省する。
田舎の学校の校長との関係が近過ぎたのも有る。
あのお爺ちゃん校長は校長室に居る事の方が珍しかった。
花壇の世話やグラウンドの掃除、兎小屋の世話等をしており、用務員さんと勘違いしてる父兄も居たぐらいだ。
「いえいえ、お気になさらず。こうやって偶然出会えた奇跡を女神様に感謝致しますわ」
女神様の様に嫣然と微笑むルルナ。
その様子に怯むレイヴン。
プリムやコヨミは可愛いし、カグラも美しい。
しかしこのルルナと云う少女は品格と云うか、何処か気品が有る。
単に爵位を持ってるだけの彼女達とは一線を画す。
話を聞くと元々は平民の家系らしいが、嫁に貰った貴族令嬢の血を色濃く継いでいるのだろう。
先に挙げた三人が癖強な為にルルナの正統派美少女っぷりが際立っている。
「うふふ、西方弁の商人をイメージしましたか?」
鈴を転がす様にコロコロと笑うルルナ。
「ああ、いや⋯そう云う訳では⋯」
西の方の国に商いに貪欲な地方が有る。
独特な言い回しと訛りが有る喋り方をする。
確かに遣り手の商人と云うとそっちのイメージが強かった。
「うふふ、王族の方や高位貴族の方々とも繋がりが有りますので。礼儀作法は一通りこの様に」
彼女は制服のスカートの裾を摘んで一礼する。
そして―――
「私ルルナ・キャスパリーグは二代目勇者レイヴン様に、正式に結婚を申し込みます」
ニッコリ笑顔でとんでもない爆弾を放り込んで来た。
(*´∀`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!




