第16話 王党派、貴族派、そして勇者派
(*´∀`*)おぱようございみゃす!
「ふっふっふっ」
「校長?」
校長室にてポプリ校長がほくそ笑む。
レイヴンを真の二代目勇者として育てる事が普通に楽しみなのだ。
人間年齢的には息子より孫の様な年の差だが、若い燕を自分の手で育成する事に昏い悦びを覚えるアラ百ロリババクォーターエルフ。
(なれば儂が根回しをした甲斐が有ったと云うものよ)
模擬戦のテレビ中継も勇者学園放送委員会が管理しているもので全国中継ではない。
一部の王侯貴族は録画映像を視聴しているだろうが、走り回るプリムをレイヴンが抑え込んで終わりな盛り上がりに欠けるカード。
(努力や才能、魔法力学の常識を覆す、枠外、規格外の存在⋯それが勇者)
素人目には凄さが解り難いが、レイヴンが行ったのはそう云う事だ。
一般生徒を将棋の雑兵とし、プリムを強い駒と仮定した場合、プリムは雑兵を薙ぎ倒す反則級の能力を持つ強い駒となる。
レイヴンはその駒を盤外からニュッと手を伸ばして掴んで止めた。
立つ土俵が違うのだ。
「胡散臭いとか云われとるが、聖剣を抜いて初代勇者直系子孫に勝ったのじゃ。堂々とせい」
「胡散臭いなら放流して貰えませんか?」
しかしその事実は事実。
周りが戸惑っている内に勇者学園とポプリ校長はレイヴンを二代目勇者として正式に通達。
強引に押し切った。
レイヴンに対して懐疑的な王侯貴族は狙い通り静観を決め込んでくれた。
取り敢えず学園に管理させて、何か有れば対処する気なのだろう。
派閥の貴族令嬢との間に既成事実を作ったりとか、やりようはいくらでもある。
「王党派も貴族派もお主に関しては保留じゃ」
「それはまぁ助かります」
レイヴンも一応は教鞭を取る身だ。
専門家や研究者程詳しくはないがこの国の王族貴族と平民の格差は理解している。
動乱と戦乱の時代は終わり、民衆は発言力を持てる様になった。
表向きは国民は皆平等。
命の価値は皆同じ。
平民でも才能と努力が有れば誰でも活躍の場は設けられる。
(ま、建前なんですけどね)
偶に平民出で活躍してる者が居たとする。
その者の家を辿ると、実は元々貴族の家系だったりする。
平民受けする為に平民の振りをする訳だ。
もしも完全に正真正銘平民だった場合、貴族令嬢を娶る事になったりする。
変に求心力を持つ前に首輪を付けてしまうのだ。
勿論貴族側の切実な事情も有る。
財力に於いては平民の豪商の方が侯爵家よりも総資産が上だったりする。
戦乱の時代ではないので、強引に徴発や接収も出来ない。
テレビならまだ規制は出来たが、スマホの動画撮影機能は厄介だ。
横暴な振る舞いをする貴族等、民衆の槍玉に上げられたらお終いである。
現代を生きる貴族は様々な手段で生き延びている。
派手な表舞台では平民に活躍させ、土台や屋台骨はしっかりと貴族が支える。
そうやって革命や粛清の危機は乗り越えたのである。
この国の王侯貴族の強かさが垣間見える。
過去に滅んだ隣国には、革命で皆殺しの憂き目に遭った王族も居る。
民衆が王侯貴族を駆逐して完全民主主義と成った国も有るが、結局一部の上級国民が富を独占しクーデターを繰り返してたりする。
武力でなく知力で生き残る時代なのだろう。
(良く解らんけど目立つ奴は取り込んどくのが御貴族様のやり口だもんな。⋯俺もその対象かぁ、イヤだなぁ⋯)
感情暴走気味のプリムや独特の感性を持つカグラ、押し掛け女房コヨミ。
それらの誘惑を跳ね除けても、きっと貴族令嬢達の波状攻撃に晒される。
モテ期到来だと勘違いした瞬間にレイヴンの人生は詰むのである。
校則上、例えばプリムカグラコヨミの三人と子作りしてもレイヴンは罰せられない。
しかし常識が現代人のレイヴンにはよっしゃー若い娘じゃひゃっほーいと女漁り等出来ないのだ。
一時の感情の過ちで子供を作れば、彼は妻子を愛そうと努力するだろう。
例え相手が自分を取り込む為に子供を作ったとしてもだ。
(歴史上、子供⋯世継ぎが出来た途端に病死したり、病気で不妊になった王族も居るもんなぁ⋯)
彼等が本当に病気だったのか薬を盛られたのかは今はもう誰にも解らない。
レイヴンは改めて、狼の群れの中に放り込まれた羊⋯いや、血の滴る生肉なのだと自覚する。
学園生徒の誰かと結婚させられたら、何処かの派閥に取り込まれてしまい一生飼い殺しだろう。
彼女達も爵位を持つ貴族家の令嬢なのだから。
「それ以外の勇者関連の者達は勇者派⋯と呼んで良いのかのぉ。ならば今は仲間に足を引っ張られている感じじゃの」
「勇者派の仲間、ですか?」
歴史的に勇者派と呼ばれる一派は有る。
正に初代勇者達と、彼女達が運営していた勇者学園だ。
王族は身内との結婚を進めたり貴族位を与えたりしていたが、完全に手綱は握れていなかった。
前述の将棋の例えに倣えば、権力とは駒を自由自在に動かせる盤上遊戯。
勇者達の武力⋯いや最早単純に暴力とは、その将棋盤を殴り割る様なものだ。
眉唾物とされているが、初代勇者の機嫌を損ねた際に王宮の一部が瓦礫と化した。
その記録は正式な物として王宮に残っている。
王にも貴族にも靡かない。
かと云って平民の味方とかでもない。
勇者とは魔王軍と単独で拮抗するだけの究極の暴力装置なのだ。
「うーむ?仲間、なのかのぉ~」
プリムがぼやく。
「どっちでも良いです。俺の味方に成りそうですか?」
「微妙じゃの」
「えぇ⋯」
そう、全て上手く行っていたかと思えば予想外な所から待ったが掛かった。
それは初代勇者直系のプリムの家とはまるで関係の無い二代目、三代目勇者等を輩出した家だ。
勇者の称号は売り買いする様なものではないのだが、歴代の勇者達が二代目三代目を名乗るに当たり、プリムの家へ便宜を図った過去が有る。
二代目三代目の頃は今よりもモンスターが凶暴で大量に居り、人間の国同士での戦争も良く起こった。
時代が英雄を、勇者を求めたのだ。
聖剣は抜けずとも、初代よりも遥かに弱くとも次世代の勇者として神輿にされたのだ。
その当時の事情は解る。
しかし現在は違う。
聖剣も抜けず、今の平和な時代に胡座をかき、モンスターを倒しに行って名声を上げる事もしていない。
「―――と、云う訳なのじゃ。聖剣も抜けんのに勇者の家を騙るとは烏滸がましいものよのぉ」
「はぁ⋯」
(どうせレプリカだろ?てか勇者や聖女か⋯)
レイヴンも薄ぼんやりだが勇者の称号には多少は知っている。
今はもう戦闘能力等は関係無く、何か功績を遺した者が勇者、賢者、聖女、剣聖の称号を与えられている。
一番新しく聖女の称号を貰ったのは、医療や福祉事業に貢献した高齢女性。
近年賢者の称号を貰ったのは、未開地域にて新種のモンスターの生態をレポートした高齢の学者。
十何年か前に剣聖の称号を貰ったのは、王都御前試合にて連覇を果たしたアスリートだった筈。
彼等彼女等は確かに立派な功績を遺した人格者である。
しかし、その聖女は死者蘇生魔法が使える訳ではない。
その賢者は大規模破壊魔法を連発出来る訳ではない。
その剣聖は一振りで百の首を落とせる訳ではない。
名ばかりの歴代勇者パーティーの後継者達。
四代目五代目以降の勇者の家はもう行方すら分からない。
勇者の称号事態も最近は誰にも与えられていない。
「その二代目三代目勇者を輩出した家がの。二代目勇者と名乗るなと物申して来おったんじゃ」
「はぁ」
レイヴンとしては自分が十代目でも百代目でも何でも良い。
どうせ張りぼての称号なのだから。
(*´∀`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!




