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ブレイバースタリオン うっかり抜いた聖剣をレプリカと信じる田舎の青年、勇者学園の教師となり女子生徒たちと修羅場ライフ  作者: 猫屋犬彦
二代目勇者包囲網

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12/18

第12話 プッシーキャットとニャンニャンする勇者

(*´∀`*)お晩です!

 翌日早朝、宿泊予定だったホテルから荷物を回収する。

 ふと、このまま田舎に帰ってしまおうかとも思うが、ポプリ、プリム、カグラ、コヨミ⋯それにあの名前も知らない女子生徒の顔が浮かんで躊躇する。


「投げ出す訳には、いかないよな⋯」


 只思った程、勇者と云う存在に世間は肝心が無いらしいと云う事実を知り、レイヴンは安堵していた。

 新聞やスマホでニュースをチェックしたものの、何処も二代目勇者に関する情報の扱いは小さかったのだ。

 

「結局内輪ネタで盛り上がってるだけなのかもな」


 世界中を凶悪なモンスターが暴れ周り、超常の力を持つ勇者達が八面六臂の大活躍。

 神話と云う程昔ではないが、現代人からすると今一ピンと来ない過去の話。

 長命種エルフとかなら当事者も偶に居るが、世代交代の速い人間にとっては半分御伽噺扱いだ。

 ホテルまでの道程で特に誰にも騒がれない事に心が休まるレイヴン。

 もしも王城に連行され王族に謁見するとか、そんな大事になっていたら怖気づいて逃げ出していたかも知れない。


「二代目勇者⋯ねぇ⋯」


 勇者学園内だと、まるでアイドルと云うか珍獣の様な騒がれ方で心身共に疲弊してしまう。

 しかし、どうやらあくまで小さな世界での大きな事件だった様だ。


「ならまぁ、いいか。新しいレプリカが作られるまでの辛抱、辛抱⋯」


 レイヴンは自分が抜いた聖剣がレプリカだと未だに信じていた。

 勇者学園外でレイヴンのニュースの扱いが小さいのは、ポプリ校長の根回しの成果である。

 王侯貴族達やその他の勢力も、聖剣の抜かれ方が余りにも間抜けな為⋯もしかして偽物?⋯と懐疑的になっていた。

 その疑心暗鬼に乗っかる形で、アラ百ロリババクォーターエルフがその老獪さを発揮する。

 ポプリ校長は二代目勇者レイヴンを正式に勇者と認め、王国や関係機関に通達。

 殊更勇者や聖剣を本物と言い張る為、逆に怪しさが増すと云う裏の裏の裏をかく様な政治手法である。

 後気を付けねばならぬのは、王族に年頃の姫が居り、あろうことか勇者学園に通っている事。

 今の校長の懸念は、その姫とレイヴンとの間に既成事実が発生し、二代目勇者を王族に取り上げられる事である。

 姫やら高位貴族に勇者を盗られるぐらいなら、プリムやカグラで子作りをさせ、結婚させてしまえと画策している。

 もしも女子生徒で不発だった場合、熟成期間約百年の純潔を捧げる所存である。

 レイヴン的にはたまったものでは無いだろうが、校長は本気であった。

 そんな各組織の暗躍や策謀等知らず、レイヴン本人は目の前の問題を片付ける。


「⋯あ、もしもし?レイヴンです。校長先生はいらっしゃいますか?」


 レイヴンはホテル内に有る公衆伝話で村の学校に掛けていた。 

 スマホよりも公衆伝話の方が安いからだ。

 校長先生に事情を説明したら、戸惑いながらも一応理解はしてくれた。

 正式な手続きは後日と云う事で、兎に角話だけは通しておいた。

 その後男子寮の部屋に戻る。

 やる事は山積みである。

 ポプリ校長は兎も角、他の教職員への挨拶。

 教材の確認等々。


「ああ、あの生徒会の子達にもお礼を言わないと⋯」

 

 突撃取材陣からレイヴンを助けてくれた、生徒会の腕章を付けた少女達。

 彼女等は学園のエリート。

 実力が有れば下位貴族や平民でも就任出来るが、ほとんどが高位貴族で固められている。

 ⋯件の姫君も、現生徒会のメンバーである。


「そもそも俺、何の教科を担当すれば良いんだ?」


 田舎の学校では一桁年齢の子から成人まで、人数が少ないので一緒くたに教えていた。

 生徒毎に教え方を変え、テストも個別に出題したりしていたが、高等教育に特化していない。


「まぁ、校長に相談しようか」


 レイヴンは回収した手荷物を少し片付け、ベッドに毛布の上から寝転がる。


「兎に角、疲れが取れん」


 先ずは一休みしたかった。

 しかしレイヴンのスマホが鳴る。


「誰だよもー」


 番号は田舎の学校からだった。

 億劫だが出るしかない。

 余りに一方的だったので、向こうも混乱している筈だからだ。


「何だろか?」


 何か引き継ぎに関する事かと思って何気無く通話をタップ。


「はいもしも―――」

『お兄ちゃんっ!学校辞めて王都に転勤ってどう云う事っ!?』


 音割れする程の絶叫がスマホから放たれる。


「⋯ジェラ、落ち着いて」

『落ち着ける訳無いでしょぉっ!?』


 電話口の向こうに居るのは校長や同僚ではなかった。

 年下の幼馴染にして教え子でもあるアンジェラートである。


『二代目勇者って何!?やっっっぱり何か詐欺に遭ったんでしょっ!?お兄ちゃん騙され易いんだからっ!』


 レイヴンが聖剣を抜く動画は一部では有名にはなってはいるが、テレビにまでは取り上げられていない。

 スマホを持っていないアンジェラートには閲覧不可である。

 そもそも基地局が無い田舎では、スマホは魔力波を拾えないのだが。

 まぁもしもあの動画をアンジェラートが見てもレイヴンを勇者認定しないだろう。

 

「落ち着いて、もう転勤する事は決まってるんだ」

(凄く不本意だけどな⋯)

『馬鹿な事言ってないで早く帰って来なさいっ!王都の女子校に転勤なんてっ!そんな上手い話有る訳無いでしょぉっ!?』

(それが有るんだよなぁ⋯)


 幼馴染がこんなに怒って⋯いや、ブチギレてるのはかなり久しぶりだ。

 以前同僚の女性教師と飲み過ぎた時、酔い潰れた同僚を家に泊めた時以来か。

 翌朝一緒に登校しようとやって来たアンジェラートが、レイヴンのベッドで眠る女性教師を見て死ぬ程キレた。

 同僚の女性教師はそれまではボディタッチ等が激しかったのだが、それ以降は怯えた様にレイヴンから距離を取り、暫く後転勤して行った。

 その時並にキレている。


「だから此れには複雑な事情が⋯」

『どんな事情が有るってのよっ!?』

「だからそれを今から―――」


 レイヴンがアンジェラートに説明しようとした⋯その時である。

 レイヴンが寝転ぶ毛布の一部がモコリと膨らみ、もぞもぞと動き始めた。


「何だっ!?」

『お兄ちゃんっ!?わざとらしく話逸らさないでっ!』


 レイヴンは慌てて毛布を引っ剥がす。

 其処には外出前には無かった筈の物が在った⋯とゆーか居た。


「⋯どうも、先生⋯コヨミです」 

「コヨミっ!?」


 思わず名前を叫び慌てて口を噤むレイヴン。


『コヨミっ!?誰よその女っ!てゆーか今女の声した!?今お兄ちゃん何処に居るのよっ!?まさかまた部屋に女連れ込んでるのっ!?』


 レイヴンは慌てて通話口を塞ぐ。

 アンジェラートがぎゃぁぎゃぁ騒いでいるが取り敢えず放置である。


「コ、コヨミ⋯何で此処に!?」

「⋯此れ⋯」


 コヨミがブラウスのボタンを外し、胸の谷間から取り出し差し出して来たのはレイヴンの手帳であった。  

 スマホを持ってからはカレンダー機能やメモ機能等が便利でそちらを使い始めていたが、基本は手帳である。

 だのに落としていた事にも気付いていなかった。

 昨日が余りにも激動過ぎたからだ。


「あ、有り難う⋯でも、どうして?」

(何故胸の谷間に?)

「⋯鍵、開いてた⋯」


 そう云えば施錠をしていなかった。

 男子寮に自分一人切りだからと安心していたし、田舎だと滅多に鍵を掛けない。

 帰宅すると近所のジジババからの差し入れとかが置いてあったりする。

 それでも何故ベッドの中に忍んでいたかの理由が解らない。

 

「何でベッドに⋯」

「⋯眠かったから⋯」

(それは無理がある様な⋯あ、不味い)


 スマホが静かだ。

 アンジェラートが騒いでる内はまだ良い。

 静かになった後が怖いのだ。

 あれは師範学校時代の同期に誘われ合コンに行って朝帰りした時の事であったろうか。

 家の前で仁王立ちして待ち受ける、年下幼馴染兼教え子。

 静かにキレてるアンジェラートは、怒鳴り散らす時よりも怖かった。

 合コン相手の女性に巫山戯て付けられた口紅がワイシャツに付いており、其処一点を穴が開くんじゃないかってぐらい睨み付けて来た。

 怖かった。

 あの逆だったピンクの髪と燃えるピンクの瞳は軽くトラウマだ。


「コヨミっ!ごめんっ!」

「⋯わぷっ⋯」


 レイヴンは再びコヨミに毛布を被せる。

 そして備え付けのテレビを点ける。


「ア、アンジェラート?ごめんな⋯」 

『お兄ちゃん。今何処?』

「勇者学園の男子寮⋯の自分の部屋」

『女子校なんじゃないの?』

「男性職員だって居るさ」


 他の男性職員はおじいちゃんばかりで、若い男はレイヴンだけであるが、それは言わない。


『さっきの女の声は?誰?』

「テレビだよ、テレビ」

『コヨミって誰?』 

「猫だよ、仔猫。男子寮に住み着いてるコヨミちゃん。ベッドに潜り込んでて吃驚しちゃったんだぁ〜⋯」

『仔猫の鳴き声なんて―――』


 嘘に嘘を塗り重ねてドツボに嵌まる幼馴染兼お兄ちゃん。

 しかし救いの手は元凶から差し伸べられた。


「にゃぁーん⋯」

(コヨミっ!?)

『猫ね、確かに』


 コヨミの特技と云うか、隠し芸みたいな声真似で事無きを得るレイヴン。


「⋯うっ!?」

『何?どうしたの?』

「いや、コヨミがじゃれついて来て⋯」


 レイヴンがアンジェラートと会話してる隙を突き、毛布の中で悪さをし始める仔猫ちゃ⋯コヨミちゃん。

 具体的にはレイヴンのベルトをカチャカチャと外し、ジジジジッ⋯とチャックを下ろしている気配がする。

 毛布の下で好き放題である。

 レイヴンは股を閉じてせめてもの抵抗をする。


「ちょっと待ってっ!」

『待たない』


 コヨミへの呼び掛けに返事するアンジェラート。


「ちょっ、ちょっと待ってくれジェラ」

『だから待たないってばっ!』


 アンジェラートの方も必死である。

 住んでいる村には通信魔道具は数台しかない。

 殺意の籠もった魔力の波動を放ちながら無理矢理職員室の黒伝話を使用させて貰っている。

 そろそろ授業が始まる。

 レイヴンの代わりに校長先生が教鞭を取る。

 時間が余り無いのだ。


『お兄ちゃん。私の事⋯要らない?捨てちゃうの?私の事⋯お嫁さんにしてくれるんじゃないの?結婚してくれるって言ったのに⋯遊びだったの?私の心を弄んだの?私の体も⋯全部隅々まで見た癖に⋯』

「おまっ!?職員室だろ其処っ!何て事言いやがるっ!」


 レイヴンはアンジェラートが幼い頃、おしめを替えたりお風呂に入れてやったりした事もある。

 おままごとで夫婦になったり結婚式を挙げたりと、妹みたいな幼馴染の要求には全て応えて来た。


「⋯にゃんっ⋯にゃーん⋯ふんふんふん⋯」


 仔猫のコヨミちゃんはレイヴンのズボンをずり下げ様と悪戯中である。

 ⋯布越しに無茶苦茶匂いを嗅がれているのが解る。


「あ、あははっ!悪戯っ子だなぁ〜コヨミちゃんは〜や、やめなさ〜い⋯ね?」

『お兄ちゃん?妹⋯奥さんと仔猫とどっちが大事なの?』

(言い直した。実の妹でもないが奥さんでもないのに―――)


 詰め方は浮気夫を締め上げる鬼嫁である。


「⋯にゃふにゃふにゃーーーん⋯あ、大っきくなってきたぁ⋯うふふ、お可愛らしい⋯にゃーん?⋯」

「ちょっ!ごめんアンジェラートっ!後で必ず説明するからっ!」

『お兄ちゃん?切ったら解ってる?絶対許さないからね?』


 通話中のレイヴンは片手でしかコヨミを止められない。

 だがスマホからは公共魔力波を飛び越えて負のオーラが滲み出て来てる。

 最終隔壁突破まで後少し。


(いやいやいやっ!マジで勘弁してくれっ!)


 転勤初日に女子生徒を部屋に連れ込みベッドインとか。

 特ダネへの嗅覚が凄まじい放送委員会や新聞部に現場を抑えられたら、また彼女達の玩具にされてしまう。

 初代勇者時代の校則にもあった。

 合意の上での性行為には責任は付き纏うが、不純異性交遊とはならない。

 学生結婚し、籍を入れて子供を作れば許される。

 魔王軍に人類が減らされまくった頃の化石みたいな校則だ。

 卒業まで子供を作らない⋯ではない。

 在学中に子供を作らなければならなくなる。

 勿論レイヴンは全然合意していないので、レイヴンを手籠めにしたコヨミが孕んでも責任を取る必要は無い。

 しかしレイヴンは常識的な一般平民である。

 女の子を妊娠させたら責任を取って結婚するだろう。  

 何故出会って二日目のコヨミがこんな暴挙に出て来るのかは解らない。

 が、今はそんな事を深く考えている余裕が無い。


『お兄ちゃん⋯お兄ちゃんは、私を選んで⋯くれるよ、ね⋯?』

(くそっ!俺が勇者なら―――何とかしてくれぇっ!)

 

 レイヴンが神ならぬ聖剣に縋る。

 

 ⋯ガチャガチャガチャ⋯


「んっ!?」


 レイヴンの⋯主の声に応える物が在った。

 それが棚から飛んで来る。

 それはレイヴンを所有者と仰ぐ⋯


「お前じゃねぇからっ!」

『お兄⋯ちゃん―――』


 曰く付きの呪いのアイテム、勇者学園図書館旧館の隠し部屋に封じられていた、鎖付きの首輪であった。


 ガチャァァァンッ!


 首輪は首に、鎖は主の手に。

 主の隠された欲望を叶える為に、呪いのアイテムが真価を発揮する。

(*´∀`*)お読み頂き有り難う御座います!

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