第二章 雨の音、鍵の音
夕飯ができる頃には世紀末みたいな騒ぎは落ち着いて皆で夜ご飯を机に運んでいた。カレーの匂いと焦げた匂いが混ざっていた。
「よーし食べよ!皆さん手を合わせてください!」
桐生葵が大きな声で手を合わせた。
皆も手を合わせ大きな声で「いただきます」と言ってカレーを食べ始めた。
「シャバシャバじゃね?味も……なぁー」
「黙ってフィレモン灯貴方何もしてないでしょ。」
フィレモン灯は黙ってカレーを口に運んだ。
あまりいい味ではないので皆の顔は引きつっていた。
「まぁ皆料理できないのにここまでできたのはすごい方だな。激まずだけどね」
白石ゆうとがそう言うと皆には笑顔が戻った。
その後皆で楽しく会話をしてたらまずいカレーは美味しく感じすぐになくなった。
「それじゃ質問会しよっか!」
桐生葵のそう言うと皆は手帳を出し僕と詩羽に質問してきた。
「黒田くん!殺人事件解決したんでしょう!犯人にどんな感じに追い詰めたの?」
朝倉涼が顔を僕に近づけ聞いてきた。
さっきと全然雰囲気が違うけど大丈夫なんだろうか?
「いや、僕はそんな……犯人を――」
「でも事件解決したんですよねすごいですね」
雨裂ミドリは静かに席を近づかせ聞いた。
「ありがとうございます雨裂ミドリさん」
皆はターゲットを詩羽に移し質問攻めをした。
「詩羽ちゃんも事件解決したことあるんでしょ?」
N.Y.トワイライトが手帳をヒラヒラさせながら聞いた
「いやいやあれはおじいちゃんと一緒だったから!てかあれうち何もしてないし〜」
「じゃあ〜おじいちゃんの話聞かせてよ〜」
蓮水ピクトはニコニコしながら質問した。
「えーいいよ!おじいちゃんはね正義を貫くかっこいい人なんだよ。」
「へ〜そうかい〜じゃあ――」
いろんな質問が飛び交い、皆は最高の笑顔で笑っていた。
疲れ果てた皆は笑顔のまま席についた。
だが桐生葵一人だけ顔が歪んでいるように見えた。
「……そろそろ寝ようか……な」
桐生葵はそういい立ち食堂を出ようと扉へ向かった。
「大丈夫かい?」
白石ゆうとは桐生葵のほうへ走って聞いた。
「え!あー大丈夫……」
桐生葵は食堂をじっくりと見渡した。
「……多分……気のせいだから!」
そう言うと足早に食堂を去った。
「桐生がいなくなったからもうお開きだね」
朝倉涼はそういい食堂を出た。
「そうだね!お開き!ご自由に私は寝ますね老人ですので。」
白石ゆうとは冗談を言いながら食堂を離れた。
そして各々自由に過ごし始めた。
フィレモン灯は荘の外に出て空気を吸いに行き、蓮水ピクトは食堂の机で何かを描いて、七瀬つかさは雨裂ミドリと話している。
僕は詩羽と食堂を出てすぐの廊下で話をしていた。
「なんか変だったね葵さん」
「あー確かにね。」
詩羽は呑気に肩を揺らしていた。
少ししたら僕は部屋に戻った。
「なんだこれ、扉ボロボロじゃん……。しかも鍵サムターンしかない。」
扉の横には釘を抜いたような小さな穴があり、そこから室内のサムターンの金具がうっすら見えた。
古い山荘だから、こういう“謎の穴”がそのままの部屋がほかにもある。
僕は少し不安だったが荷物を片付け、風呂に入りベッドに入った。
山荘の夜は静かすぎる。
虫の声も遠く、風さえほとんど吹かない。
起きたのは夜の2時くらいだった。
隣からガチャガチャとドアノブを動かしドンドンと扉を叩く音がした。
僕は眠い目をこすりながら、扉を開け外に出た。
「桐生さん!!返事してください!!」
七瀬つかさは落ち着きを失っているようだ。
「どうしたんですか?」「ちっおい!何なんだよ。いったん落ち着け」
その周りでは雨裂ミドリとフィレモン灯が七瀬つかさを落ち着かせていた。
だが七瀬つかさは扉を叩きつづける
「どうしたんですか?」「うるせぇよ寝てんだよ」
白石ゆうととN.Y.トワイライトが騒ぎに駆けつけた。
「鍵を開けてください!!」
なにが起きたかはわからないがよくないことが起きている気がする。
僕は焦っている七瀬つかさを押しのけボロボロの扉にあった小さな穴から中をのぞいた。
薄暗い部屋の中には倒れた椅子そして床に仰向けで倒れている桐生葵の姿。
「蹴破るぞ!!!」
「は?!」
僕は思いっきり扉に体をぶつけた、ボロボロの扉簡単に開いた。
「!?桐生さん!」
白石ゆうとは倒れている桐生葵の元に走った。
だが何かを見て白石ゆうとは立ち止まった。
「!!危ない」
「どうした?おっちゃん?」
「水……あとすっスタンガン」
桐生葵は濡れており近くにはスタンガンが置かれている。
僕はスタンガンが作動してないかをよく見て、桐生葵に近づき脈を触った。
「死んでますね。」
「は?嘘だろ!?ほんとに気絶するだけじゃないのか?」
皆を仕切っていた明るい人間はピクリとも動かない姿に皆はその場に固まった。
「警察呼ぼう」
白石ゆうとは自分の部屋に走っていった。
僕は走っていく白石ゆうとを見ようと後ろを向いたらそこにはさっきいなかった人たちが集まっていた。
「なにがあったの?」
詩羽は人をかき分け一番前に来た。
「?!殺人か?」
僕の肩をガッツリ掴み体を揺らした。
「事故でしょう。警察来るのを待ちましょ」
朝倉涼は冷静に言った。
「だけど――」
詩羽が反論をしようと声を上げたがその声を上回る声で遮られた。
「繋がらない!!!!」
白石ゆうとは目に涙を浮かべながら言った。
「しょうがない、直接助けを呼びに行きましょう。」
朝倉涼はそう言い荘を出た。
皆は相変わらず桐生葵の部屋で何もできず固まっていた。
だが詩羽だけは違く、眉をひそめ桐生葵の部屋を隅々見ていた。
「大変だ!!吊り橋が!」
朝倉涼の言葉に皆は外に出た。
そこには来る時に来た吊り橋はなくなっていた。
閉じ込められた。警察には連絡できず、唯一の道である大きな吊り橋は破壊された。
「あぁ……あ、なんてことだ」
「皆さん――」
僕は皆を落ち着かせようと振り向き声をかけようとしたが、詩羽に引っ張られて山荘の中に戻った。
「どうした?」
「あれは殺人だ!なんでそんな呑気で居られるわけ?」
「いや――」
「密室なんだろ!!!」
僕はその言葉に固まった。
確かにそうだ、ドアは完全に閉まってい窓も完全に閉まっていた。密室の中には亡くなった桐生葵しかいなかった。
僕は詩羽と急いで桐生葵の部屋に戻った。
桐生葵は感電死多分だが水をかけられスタンガンで殺されたのだろう。
窓の鍵の部分は古い傷が沢山あるが、紐で引っ張られた跡はない。
ドアはサムターンしかなく、そのサムターンにも傷がない。
僕はもう一回周りを見た。
窓も駄目、ドアも駄目犯人がいるとしたら何処から出たのだろう。
「事故なんじゃないのか?」
「は?桐生は服を着てる状態で全身濡れてるんだぞ!」
「ごめん」
僕は詩羽の勢いに押さた。
その時外から皆が帰ってくる音が聞こえた。
詩羽は勢いよく廊下に出た。
「え??」
「あんたの部屋を調べる」
雨裂ミドリの手を思いっきり引っ張り部屋の中へ入って鍵を閉めた。
中からは「やめて!」という声が聞こえる。
ドン!
「やめろ」
僕はドアを押し開けた。
「なんでなんだ!?」
「泣いてるじゃないか?見えないのか?」
雨裂ミドリは部屋の隅で泣いている。
「人が死んでんだぞ!殺されたんだ!今はみんな平等だ!私の部屋を調べろ!」
詩羽は壁を叩きながら言った。
「一旦皆寝よ」
僕がそう言うと皆はうなずき、部屋へ戻った。
ドア壊された雨裂ミドリは七瀬つかさの部屋で寝ることになった。
僕はベッドの上で考えた。
ここに来たのは間違いだった。
吊り橋の向こうで閉ざされた世界。
外界と断たれた山荘。
その中で、最初の殺人が始まった。




