第21話 英雄への褒美
「優殿に渡す褒美だが……まずは、この城の一室をそなたに与えよう。遥か異国から流されて来たのでは、ゆっくりと羽を伸ばす寝床もなかったであろうからのう」
「城の一部屋だと!?ふん、まあ、この俺ほどの英雄を処遇するには、最低限の礼儀といったところか。で、他には何かないのか?例えば公爵の位とか、伝説の武具とかだな」
俺のあまりにストレートな要求に、王は一瞬目を丸くしたが、すぐに楽しそうに笑った。
「はっはっは、豪気なことよ。うーむ、そうだな。他の褒美か……。では、こうしよう。部屋は二人用のものを用意させる。ルームメイトを、そなたが自由に選ぶ権利をやろう。それと、近々発行する国の新聞で、今回のそなたの英雄的活躍を大々的に報じるというのはどうかな?」
(ほう、新聞!俺の武勇伝が、この国の民草すべてに知れ渡るというわけか!そしてルームメイトを自由に選ぶ権利だと?つまり、俺の側近を俺自身で選べということか!なかなかどうして、話のわかる王ではないか!)
「ま、まあ、それならば……よかろう!その褒美、ありがたく受け取ってやる!」
「そうか!では早速部屋へ案内させよう。して、ルームメイトの当ては?」
「し、しかし、ルームメイトと言われてもな。俺はこの世界に来たばかりで、まだ知り合いも少ない。そんな、いきなり選ぶ相手などいないぞ!」
「それもそうか……。ふむ、ならば、あそこにいる衛兵のカイなどはどうだ?最近入ったばかりの兵士だが、年はそなたより少し上なだけで、元気があって働き者だと聞く。護衛も兼ねて、良い相手だと思うが」
王が、謁見の間の隅に控えていた衛兵の一人を指差した。
(あの衛兵か……。ふん、悪くはないが、あの男の目には、俺に対する絶対的な畏敬の念が足りん!俺の側近たる者、四六時中俺を崇め奉るくらいの気概がなくては務まらんのだ!)
「うーむ、あの兵か……悪くはないが、少し考えさせてもらう。……そうだ!一人、俺のルームメイトとして、まあ及第点を与えてもいい奴に心当たりがある!少し待っていてくれないか!」
俺はそう言うと、謁見の間を出て、先程別れたハイラ隊長たちの元へと向かい、テオの行方について聞き出した。
「ん?ああ、テオか。あいつなら……あれ、そういえばどっか行っちまったみたいだな」
ハイラは、辺りをきょろきょろと見回しながら言う。
(なに?俺の輝かしい手柄話も聞かずに、どこかへ行ったというのか、あの男は!それにしても、この戦いが終わったばかりだというのに、一体どこへ行ったのだろうか……)
「まさか、テオはまだ戦場に残っているのでは!?」
俺が、仲間を案じる英雄らしい大きな声を出した、まさにその時だった。後ろから、慌てたような足音が聞こえてきた。
「遅れちゃってさーせん!ちょっと野暮用を思い出しまして!あれ、皆さんお揃いで。なんか俺のこと呼びました?」
そこにいたのは、頭をかきながらバツの悪そうな顔をしているテオだった。
「おお、テオ!探したぞ!」
「あ!あんたはさっき戦場で会った……!」
「そうだ、まだ自己紹介が済んでいなかったな。俺の名はユウ!この度の戦いにおける俺の偉大なる活躍が認められ、国王陛下から直々に城の一部屋を賜った!ついては、光栄なことに、お前をその部屋のルームメイト第一号として、俺が直々に指名してやろうと思ってな!」
テオは、俺のその言葉を聞き、一瞬きょとんとした後、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「まじで!?あんた、やっぱすげーじゃん!てか、俺が城に住めるなんて、夢みたいだ!嬉しすぎるぜ!これからよろしくな、ユウ!」
これから俺とテオの共同生活が!?




