十字恭平一等軍医
秀星は軍刀三等軍曹の言葉を受け入れられなかったモヤモヤを、十字恭平一等軍医にぶつけてみる事にしたのである。
「すみません。忙しいところ。でもこの心のモヤモヤをどうにも出来なくて。」
「おいおい。俺は医師だが、カウンセリングはしてないぞ(笑)。」
「十字一医はどう思います?背尾が死んだ事について。」
「どう思うも何も仕方無いだろ?俺達兵士なんだから。」
「兵士ならいつ死んでもそれは御国の為になると?」
「いや、そうじゃない。兵士なら死は避けては通れないと言う事だ。」
「でも、死ななくても済む命だってある訳ですよね?」
「いや、それは結果論だ。軍刀三等軍曹の肩を持つ訳じゃないが…。」
「指揮官なら、部下の命を預かる責任がありますよね?」
「戦場においては時として、苦渋の選択を選ぶ時もある。」
「だとしても俺はどうも納得がいかないんですよ?」
「笹尾はまだ青いな。指揮官たるものの辛さが分かってない。」
「じゃあ説明して下さいよ。その指揮官の辛さたるものを。」
「頭ではな分かっているんだよ。それでも指揮官は取捨選択をしなくちゃならん。」
「つまり、どちらかを選択しなければならないと言う事ですね?」
「その選択の内容がエグい。とにかく酷なんだ。」
「つまり、今回の軍刀三等軍曹の選択は正しかったと?」
「正解なんて本当は無いんだよ。でも軍刀三等軍曹は決断した。」
「その選択を責めるのはやぶさかな事ですか?」
「99人の命と1人の命を天秤にかけたらどっちが重いと思う?」
「それは99人の方でしょう。物理的に考えて。」
「その選択を軍刀三等軍曹はしたんだ。」
「聞けば、背尾一等陸兵は自ら志願して殿を務めたと聞いているが?」
「そうする様に命令されたんです。」
「じゃあそれでいいじゃねーか。今回の軍刀三等軍曹の判断は適切だった。」
「まぁ、死んで本望だったのなら何も言えないですが。」
「君の気持ちが分からない訳じゃないんだよ。たまたまその一人が背尾一等陸兵だったと言う不運だったと言う事だよ。」
「そう言われると、納得してしまうんですがね。頭では理解しようとしているんですけどね。どうしても受け入れられなくて。」
「今の君がやるべき事は生きてこの戦いの行く末を見届ける事だ。」
「そうですね。そうしないと、背尾に報告出来ませんから。」
「日本共和国陸軍兵士として、雑念は捨てろ。」
「はい。生き残ってこそナンボですからね。分かりました。」
「何かあればいつでも来い。話ならいくらでも聞いてやる。」
「ありがとうございます。また来ますね!」
「これから戦いは厳しくなる。忙しくなるな。」




