戦闘マシーン
兵士に求められる能力として最も必要なスキルは、上官の命令に従順であるかと言う事であるだろう。上官の命令にいちいち意味を考える事は、兵士として最もやってはいけない事である。与えられた任務に対してどれだけ正確かつ冷静にあたれるか。それが重要なのである。
よく、体力面や精神面が、下級兵士には必要だと言われるが、それはあくまで命令に従順であると言う前提の元に成り立つ能力でしかない。しかも、それらのスキルは、現場やハードな訓練を経験して初めて伸ばせるものであり、並みの兵士なら放っておいても延びてくる要素である。
下級兵士には、脳みそは要らないとも言われる。確かにそう言った側面もあるかもしれない。言われた事だけを忠実に実行する能力さえあればそれで良い。逆に余計な事をしてしまうと、作戦そのものが失敗する可能性が高い。それは下級兵士の存在意義にも関わる大事であるだろう。
そしてこの従順性と言うものは、人に教えられて身に付けられるものではない。もって生まれた天性のものが、大部分を左右してしまうものなのである。"戦闘マシーン"と言われる表現をされる事があるが、それは正しい。良質な兵士と言うものは、どこまでマシーンになりきれるかで決まると言っても過言ではない。冷徹な判断をする事が求められるからだ。作戦の成功の為だけに動ける人間こそ、下級兵士の鏡である。
実際には、そうした境地に陥る為には訓練だけではなく、実戦を経験しなければならない。何よりも、経験を積み重ねて行く中で余計な思考や気持ちがある事を知るのである。その様な事を知るまでは、兵隊としては、まだまだ未熟であると言わざるを得ない。ロボットとマシーンは似て非なるものだ。ニュアンスの問題なのかもしれないが、ロボットになるとプログラミングされた事しか出来ないものになってしまう。そうではなく、必要の有無の判断があった上で、応用出来る力と任務成功の為に何が必要なのかを臨機応変に思考できる"マシーン"になる事が重要なのである。