秘密のベールに包まれた部隊
クリスタルアーミーは下士官候補の優秀な兵士で滅多に出現しない。それでも現れた場合には、特殊部隊であるKKSへの参加が認められる。笹尾秀星はなんとクリスタルアーミーであった。
しかし、KKSは日本共和国最後の砦とも言われる秘密部隊であり、秀星は素直にKKSへの参加を喜んではいなかった。KKSは兵力約2万人規模で、全国5つの基地に別れて配備されていた。
関東地方のKKSの拠点はたまたま、第3歩兵師団のある東京都立川市にあった。そしてこれまた偶然にも志真岡と背尾もクリスタルアーミーとして、関東地区のKKSに参加する事になっていた。
広報官によるとKKSへの参加者が複数人同時と言うのは珍しい事だと言う。KKSの任務は多岐に渡る。特殊部隊の名の通り、共和国内に潜むテロリストや反政府組織の排除を主任務とする。勿論それだけではない。大災害にあって人命を救助したり、事故に対処する力も持つ。原子力災害にも、生物化学兵器(NCB)にも、対処する能力を持つ。言ってみれば、危機対応のよろず屋である。
通常兵力ではカバーしきれない所をカバーする。それがKKSである。共和国軍約110万人のうちの2万人であるから、単なる下士官候補生とは訳が違う。尚、KKSには情報を漏らしてはならないと言う不文律があり、KKSを卒業した後でも、そこで得た軍の秘密は、話してはならないと言う。KKSは共和国陸軍の中でもベールに包まれた部隊である。訓練方法から生活実態までそのほとんどが秘密である。
しかし、大米帝国との有事にまで発展した昨今にあって、最激戦地や最前線に投入されるのは、目に見えていた。不安にかられる事もあったが、勿論それを乗り越えられる力を持つ人間しか、KKSにはいない。だが、日本共和国陸軍の健軍以来、KKSには表だった戦功が無い。KKSの手柄を立てる為だけに、大米帝国との戦争を起こした等と、噂だけが先行するが、その真相は分からなかった。