修学旅行3日目(昼食~)
昼食を食べ終わり、京都駅のお土産屋さんがたくさん並んでいる所に向かった。食べ物系のほとんどが八つ橋だった。ここで磯川さんが「与野ちゃんにも買っていかない?」と提案した。与野さんは今回来ていない。みんなは「そうだね!」と賛成しているようだったが、本当にいいのだろうか。修学旅行に行きたくなかったわけがない。行きたかったのに行けなかった。行かせてもらえなかった。それで「行ってきたよー」とお土産をもらっても嬉しいだろうか。余計に悔しく、悲しく、そして辛くさせてしまう気がした。でもみんなは乗り気だった。逆らえるような状況ではなかったので、まあいいかと諦めた。生八つ橋を何種類か、割り勘で買った。
集合時間も近いので集合場所に向かった。といっても駅の前でお店を出てすぐのところだった。ここで「ありがとうございました」と言い、北村さんと別れた。時間はもう少しある。そうだ、と思い、柳田に「ちょっとだけ向こう行ってくる。」と言って券売機に向かった。券売機の画面にある「ICOCAを買う」を押して1000円札を入れる。関東では手に入らない イコカというICカードが欲しかった、それだけ。
ほとんどの班が戻ってきたところで先生の話が始まった。まずは今回来てくれた先生方に感謝しましょう。誰も大きなけがや風邪をひくことなく、無事に終えられた良かった。など、話をした。そしてそれぞれの先生、カメラマンさんからの話を聞いた。カメラマンさんは「最後に写真を撮らせてください」と言ってエスカレーターまで走り、上から写真を何枚か撮った。
話がすべて終わり、新幹線ホームに移動した。今日は始発ではないので時間があまりない。新幹線が着いてからみんな急いで乗る。自分の席じゃなくてもいいからとりあえず座って、と先生が言っていたのでみんな適当なところに座っていた。京都を発車し、少し落ち着いたので自分の席に移動した。行きは窓側だったので今度は通路側。通路を挟んで隣は桜野だった。そういえば三日間で撮った写真でなんかコンテスト的なことをするんだっけ。僕は忘れないうちにみんなに好きな写真を選んでもらった。この時、選んだ写真が分かるように画像ロックをしておいた。これは誤って写真を消さないようにする機能で、これをすれば基本的に消えることは無い。全部で20枚。撮った写真は100枚近くあり、その全てが思い出であり、大切なもの。選ぶことは本当に難しかった。
新幹線は名古屋を出た。このころにはもうほとんどの人が寝ていた。隣で寝ている桜野を見た。寝ている桜野はやっぱり可愛かった。帰るのが夜遅くになってしまうので、途中に軽く食べ物が配られることになっている。でもこの感じだと食べる人はいるのだろうか。静岡駅くらいのタイミングでドーナツ2つとパックのお茶が配られた。なんだかんだみんなこの時だけ起きて食べていた。
放送で「間もなく新横浜に到着します。」とかかった。新横浜から横浜線で帰れれば近いが、東京駅から高速バスで帰ることになっているので東京まで乗る。新横浜と聞くともう帰ってきた、という気がしてしまう。あとほんの数時間でこの三日間が終わる。まだまだ続いてほしいと思うが、でも終わりがあるから楽しかったと振り返ることもできるし、楽しさが強調されると思えばいいだろうか。最後にデッキへ行った。そこにはC組の人たちが2、3人いた。あとカメラマンも。ここで修学旅行最後の写真を撮ってもらった。新幹線は東京に着き、列車から降りた。遠くの方では聞きなれた駅メロが流れている。見慣れた電車が走っている。それらが「帰ってきた」という事実をより強調させ、なんか悲しいような、安心するような、不思議な感覚にさせた。
先生が人数を数えるとバスターミナルの方に移動した。今の時間は平日の夜。帰宅ラッシュで駅は多くのサラリーマンで混みあっていた。外に出て少し進むとバスターミナルがあった。バスに乗る。席はこの前と同じ。バスが新幹線と違うのはたくさんあるが、トイレが付いていないのは 今の僕にとってかなり痛手だった。初日からなんか調子が悪く、1時間に一回くらいの頻度で行きたくなる。バスに乗っているのは1時間程度。渋滞でもあればもっとかかる。
バスは動き出し、明るい東京の街を進んでいった。寝てれば大丈夫だろうと思い、目を瞑った。しかし、15分くらい経っても寝られなかった。バスは高速道路に入った。首都高速だと思うが、案の定渋滞していた。遠くを見てもどこまでも赤い光が続いている。考えるだけでもだめそうなので無理やりにでも寝た。気づくと渋滞は終わり、順調に進んでいた。周りを見てみると起きている人は数人で、ほとんど寝ていた。その起きている数人が話をしているが、特に周りが起きる様子はなかった。走っている場所は分からない。時間的にはあと30分くらいで着くみたいだった。ぼーっと外を見ながら三日間を思い出した。初めて東海道新幹線に乗った。途中でバスを止めた。奈良公園で途中に抜けた。熱が出て桜野がなんか来た。金閣寺でお土産を買った。禅林寺の近くのカフェでソフトクリームを食べた。磯川さんがタクシーさんと言った。イコカを買った。楽しかった。すごく楽しかった。だからこそ与野さんに申し訳なくて、与野さんがいないのにこんなに楽しんでしまって良かったのか、と悩んでしまう。考えても仕方のないことだと分かっていてもやっぱり…
バスは学校の前に着いた。そこには修学旅行に行かなかった先生が待っていた。そしてひとりひとり「お帰り~」とお出迎えしていた。そのまま家に帰る人、学校に入る人、近くの公園でたむろっている人、僕は学校に入りトイレを借りた。同じような人が何人かいたのでちょっと安心した。トイレを出てなんとなく階段を上った。教室に向かう。もちろん誰もいない。ドアを開け、教室に入る。時計の針は8時を指し、明かりは窓から入る街灯や家の明かりだけ。無意識に桜野の机に座った。桜野の席は窓側にある。そこから街を眺める。夜の学校から見る町がこんなにも奇麗なんだと感じた。ひとつひとつの光が十字に線を作り、それがだんだんと滲んでいく。「やっぱりいた。」誰かの声がした。振り返らなくても桜野だと分かった。「勝手に人の机に座るのってどうなの?」と言われたので椅子に座りなおした。桜野がこちらに来ているのがなんとなく分かる。隣まで来て「なんで私の席に座ってるの?」と聞かれた。「なんとなく。」と答えると桜野は僕の膝に座ってきた。足を開き、僕の足を固定するように座った。僕のあそこと桜野のお尻が触れる。これで耐えられるわけがなかった。「青柳君、そんなに興奮してるの~?」といたずらっぽく聞いてきた。何も答えずにいると「私はね、今すごい濡れてる。漏らしちゃったみたい。」と笑ったが、僕が反応しないので黙ってしまった。そっと後ろから抱き締めてみた。桜野と一つになったみたいな感じがして、ここまでの幸福感は今まで感じたことがなかった。これからも感じることは無いかもしれない。桜野がスカートをたくし上げた。僕の手をあそこまでもっていき、触らせる。「ね?びちゃびちゃでしょ?」確かに湿っているのは分かった。「桜野さん」「な~に~?」「誰か来たよ。」と言うと、急いでスカートを下ろし立ち上がった。もちろん誰も来ていない。「え?誰が来たの?」「誰も来てないよ。」と言うと「はぁ~」とため息をついた。「青柳君って意外と意地悪なんだね。」そう言って教室から出て行こうとした。僕は追いかけず、景色を眺めた。後ろになんとなく気配を感じたと思ったら桜野だった。「もう遅いし帰ろうよ。それともそんなに私の席が好き?」好き、と言う言葉にドキッとした。僕は桜野のことが好きなのだろうか。もともとは好きではなかった。なんなら嫌いとまで言っていいほど。なのに今はどうだろうか。桜野に心も体も許すことができている。桜野の誘惑に負けている。「桜野さんは俺のこと好きなの?」気づいた時には言っていた。桜野は「んー、どうだと思う?」と言って「そんなことより早く帰らないと。」と僕の手を引いた。
昇降口までは二人で並んで歩いた。特に話すこともなく、班行動で歩いていたあの時のように。昇降口には靴が2組だけあった。さっきまでいた人たちはもう帰ったのだろう。薄暗く、電気の消えた学校に桜野と二人きり。正確には先生もいるので二人きりではないが。靴を履き、外に出る。昼間は真夏の暑さだったが、夜になると夏服ではかなり寒く感じる。やはり季節は秋。受験まで4か月、卒業まで5か月ちょっと。桜野と一緒にいれるのもあと少し。桜野と知り合うのがもっと早ければ、この楽しい時間が少しでも長くなったかもしれない。でも、短い時間だからこそいいのかもしれない。校門を出る。さっきまでいたバスや先生は消え、静まり返っていた。「もう暗いから気を付けてね。」と桜野に言う。「青柳君こそ気を付けてよね?」「俺は大丈夫だと思うけど、桜野さんは、なんて言うか、可愛いじゃん?だからちょっと心配で…」「本当はちょっとじゃなくて、すごく、でしょ?」「まあなんでもいいけど、本当に気を付けてね。」そう言ってそれぞれ反対の方向へ歩く。角を曲がる前に後ろを見たが、桜野の姿はもうそこにはなかった。
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