ボス戦
「ボスの扉ね。初心者用ダンジョンでしか見たことなかったわ」
茜は緊張した様子で扉の前に立った。
「大丈夫。ボクたちならやれるさ」
「そうですよ。私たち強くなったんですから」
翼と望は茜に手を伸ばした。
「そうね。あたしたちなら出来るわ」
茜は二人の手をとった。
「…ビーストキング。あんたはサポートに徹してて。最後の最後でビーストキングに倒してもらいましたっていうんじゃカッコつかないもの」
茜は決意を秘めた目で言った。
「元からそのつもりだ。お前らの心が完全に折れない限り、おれ自身はボスに攻撃しないって約束するぜ」
おれは茜に宣言した。
「ありがとう。じゃあ、行くわよ」
おれたちはボス部屋に足を踏み入れた。
「ブヒィイイイイ!」
扉を開けると、巨大な二足歩行のブタがいた。
「オーク…。ダンジョンボスだから巨大化してるのね」
茜は気圧されながらも杖を構えた。
「まずは攻撃を仕掛けてみるか。縮地!」
翼は手始めにボスオークの腹を突いた。
「ブヒ?」
翼の一撃はボスオークの脂肪に阻まれた。
「このままじゃ脂肪に弾かれるか…。跳ぶのは得意じゃないから目とかは狙えそうにないね」
戻ってきた翼は悔しそうに言った。
「なら足元から崩すわ。ボム」
茜はボスオークにボムを放った。
「ブヒ!」
ボスオークはこん棒を持って突っ込んで来た。
「来たわね。イグニッション!」
茜はオークの目の前で爆発させた。
「ブヒッ?!」
ボスオークはふっ飛ばされて壁に激突した。
「さすがに効いたようね。ボム」
茜はもう一回ボムを放った。
「ブヒ!」
ボスオークは今度はこん棒で打ってきた。
「ヤバッ。イグニッション!」
茜はこん棒に当たった瞬間爆発させた。
「ブヒッ!ブヒヒ!」
ボスオークは爆発の中でもピンピンしている。最初程のダメージはないようだ。
「くっ。体に合わせて大きいこん棒使ってるからリーチが長い…。当たった瞬間に爆発させても射程ギリギリだからそこまでダメージ入らないわ」
茜は悔しそうに歯噛みした。
「ボクなら潜り抜けられるけど…。あまりダメージ与えられないんだよね」
翼はそう言って考え込んだ。
「翼にボム持たせて特効させるのはさすがに危険過ぎるわよね…。ボスオークにボム蹴り込めたりしない?」
茜は翼に無茶ぶりした。
「無理だよ。ボクは白峰流習ってないんだからさ」
多分あれは白峰流関係ないだろう。本人は異世界行った親戚が魔法蹴ってたって話聞いたからやってるって言ってたぞ。
「どうしよう。今の手札じゃ突破口が見えて来ないわ」
茜は落ち着かないように杖を握った。
「うーん。とりあえず撹乱してみるか」
翼は猛スピードでめちゃくちゃにボスオークの足を突きまくった。
「ブ、ブヒ、ブヒヒ」
ボスオークは段々煩わしくなったのかこん棒を振り回した。
「遅い遅い。そんなのじゃ捕まえられないよ」
翼はこん棒を避けつつヒットアンドアウェイを繰り返している。効かなくてもあれはウザいな。
「ぶ、ブ、ブヒー!」
翼が動き回るのがさすがにウザくなったのか、オークは鼻息を荒くして鳴き喚いた。
「ブーー、ブヒー!」
そして怒り狂ったオークは息を大きく吸い込み、翼に突進して来た。
「危ない。ポルコ、突進!」
おれはビッグボアのポルコに指示を出した。
「ブヒ!」
ポルコは横からボスオークに突っ込み、突進の軌道を翼から逸らした。
「危ない、危ない。あの突進には気を付けないとね」
翼はホッとして胸を撫で下ろした。
「そうね。でもおかげで勝ち筋が見えたわ」
茜はおれたちにとんでもない作戦を提案してきた。
「なるほど。効果的だがかなりえげつないな」
「正直あまり見たくはないけど…。そんなこと言ってもいられないね」
翼は少し引きながらも同意した。
「わ、私は回復しか出来ませんけど…。応援してます!」
望は手を組んで祈った。
「じゃあ行くわよ。絶対あのブタを倒して万能薬を手に入れてやるわ!」
茜は気合いを入れて杖を突き上げた。
地味に多作品との繋がりを匂わせてみました。まあ別世界でも同じ名前の流派はあるのかもしれませんが。