成長
「茜、ポイントまで誘い込んだぞ」
おれは茜に報告した。
「了解。イグニッション!」
茜はすかさず指を鳴らして爆裂魔法を起爆した。
「ゴブゥウ!」
爆発に巻き込まれたホブゴブリンはこん棒と魔石を残して消滅した。
「あ、何か使える魔法増えたわ。…プチボム。消費魔力と範囲が下がったボムか…」
スマホで習得した魔法を見た茜は微妙な顔をした。
「敵が少ない時に使い分けられていいじゃねえか。魔力温存できるし使い勝手もいいだろ」
「そうかもしれないけど…。やっぱり2番目に覚えるのって強化版の方がよくない?」
茜は拗ねたように言った。
コメ:あー。何となく気持ちはわかるわ。
コメ:まあでも範囲と威力は今の所十分だろ。
コメ:今威力あがっても持て余すだけじゃね?
「う。あまり否定出来ないわ…」
茜は胸を押さえながら言った。心当たりはあるんだろう。
「りゃあ!」
茜がリスナーのコメントにショックを受けている間に翼はゴブリンアーチャーを突き刺した。
「ゴブブゥ!」
ゴブリンアーチャーは魔石を残して消滅した。
「あ、ボクもスキル覚えたよ。…縮地!何か速く動けるやつだね」
翼は嬉しそうに言った。
コメ:剣術スキルじゃないのか。
コメ:まあ刺してるだけだしな。
コメ:走る補助をする方向にスキルが発展してもおかしくない。
「つまり剣術習わないと剣術スキルの発展ないってこと?誰か教えてくれる人いないかなあ」
翼はそう呟きながら剣を見つめた。
「探索者ギルドで剣術の指導受けてみるのも手だ。突き主体ならいっそのことフェンシングを習うのもありかもな」
「フェンシングですか…。うちの高校にはフェンシング部ないからギルドで習えるのは助かりますね」
翼は少し考えながら言った。
「…まだうまく戦えないのに付き合わせてごめんなさい。もう少し鍛えてから挑むべきだったわ」
茜は暗い顔をして言った。
「そんなに気に病まないでよ。それに焦ってたのはボクも同じさ。友だちを助けたくて身の丈に合わないダンジョンに挑んでしまったのはボクも悪い。止めなかった時点でパーティー全体の責任だよ」
翼はそう言って茜の背中をポンポンと叩いた。
「そうですよ。あっ、翼ちゃんケガしてますよ。ヒール」
望は手を当てて翼の頬の傷を直した。
「避けたと思ったけどかすってたみたいだね。ありがとう、望」
翼は望に礼を言った。
「これが私の役目ですから。…あ、新しい魔法覚えました。…ハイヒール。ヒールの強化版ですね」
望は嬉しそうにスマホの画面を見せた。
コメ:おー。強化版来たな。
コメ:紙装甲で突っ込む剣士と自爆魔法使いがいるから必要な強化だな。
コメ:このパーティーの生命線だよな。
「誰が自爆魔法使いよ!そこまで味方巻き込んでないわ!」
茜はリスナーのコメントにツッコんだ。
「紙装甲…。でも鎧が重くなると足が遅くなるんだよね。どうすればいいんだろ?」
翼もコメントを見て落ち込んでいる。
「ま、お前らはまだ初心者だ。迷いながらでも前に進めばいいんだよ」
おれは話しながら、向かってきたビッグボアを蹴り飛ばした。
「ブヒャアアア!」
ビッグボアは一度魔石になり、また復活した。
コメ:お、本日二度目のスカウトだ。
コメ:マジで獣のスカウト率高いな。
コメ:何かフェロモンでも出てるんじゃないか?
「んなもん出ててたまるか。あってもただの相性と、強い者に従う獣の習性だろ」
…まあ昔から動物に好かれやすかったのは事実だが。オスもメスも関係ないからフェロモンじゃねえだろ、多分。
「ねえ、もしかしてコボルトをあんたが倒してたらスカウトとかいうやつ出来てたの?」
おれが契約するのを見た茜はなかなか鋭い指摘をしてきた。
「かもな。まあ今最優先すべきはお前らが経験を積むことだ。動物園にいそうなモンスターが単独で出てきたら狙うことにするよ。群れの場合は一体譲ってくれりゃいい」
「獣だけじゃないのね…。判断に困る時は聞くことにするわ」
茜はおれに提案してきた。リーダーとしての素質は間違いなく剣也よりずっと上だな。
「了解。戦力増やせるかもしれない時は言うぜ」
おれは答えつつ、魔石をパーティー用ストレージに投げ入れた。
この作品が一番真っ当に成長してるのかもしれません。他の作品外的要因で強化されるキャラ多すぎな気がします。
次か次の次でボス戦に行きます。