殲滅
「び、ビーストキングがいる…。ボク夢でも見てるのかな?」
おれの姿を見た剣士の女の子はそう言ってへたり込んだ。
「正真正銘本物だよ。後はおれにまかせて休んどけ」
おれはそう言って拳を握った。
「で、でも1人で大丈夫なんですか?いくらビーストキングでもきつくないですか?」
シスターっぽい子がおどおどしながら言った。
「大丈夫だ。おれには仲間がいるからな」
おれがそう言うと同時にゴブリンが一気に切り裂かれた。
「アオーン!」
リマは吠えながらおれの前に立ちはだかった。
「キュッ!」
ラビィは後ろから角を突き刺しながら来た。
「ピィイイ!」
ブルースは超音波を放ちながら飛び回った。
「みんなはこの子たちを頼む。おれはこいつらを片付けてくるぜ」
おれは手を振って構えた。
「ビーストソウル、チャージ。アームド!」
おれは爪と足に充填したソウルをそのまま留めた。威力はフルチャージより低いが、効果が永続するから多くの敵をぶっ倒すのに使う。
「行くぞ。ウルフトルネード!」
おれは体を回転させて一気にゴブリンを斬った。
「ご、ゴブゥ!」
残ったゴブリンは破れかぶれになって向かってきた。
「バカか。ムーン・エクスプロージョン!」
おれはビーストソウルを丸い球体にして蹴り込んだ。球体はゴブリンの中心に落ちて、爆発した。
「「ご、ゴブブゥウウ!」」
残ったゴブリンたちは魔石を残して消滅した。
ーー
「で、何でFランクパーティーがDランクダンジョンにいたんだよ?身の丈に合わないダンジョンに入っても死ぬだけだぞ」
おれはセーフゾーンに女の子たちを連れてきて聞いた。
「…妹が病気で倒れたのよ。薬が必要だけど高くて買えないの。どうしたらいいか調べてたらこのダンジョンのボス討伐報酬が万能薬だってことを知ったのよ」
魔法使いの子は顔をうつむけながら言った。
「それでパーティーメンバーのボクたちも一緒に入ることにしたんです…」
「友だちが困ってるなら助けたいですから…」
剣士の子とシスターの子は深刻そうな顔で言った。
「そりゃ万能薬っていうくらいだから効果あるかもしれないけどなあ。だからって初心者パーティーで無謀過ぎるだろ」
おれは魔法使いの女の子に探索者としての意見を言った。
「じゃあどうしろって言うのよ!無理だろうが何だろうが他に頼れる人もいないなら私がやるしかないじゃない!」
魔法使いの子は涙目でおれをにらみつけた。
「はあ…。これ以上話した所で引き返す気はなさそうだな」
おれが溜息を吐くと女の子たちは肩をビクッと震わせた。おれが力づくで連れ帰るとでも思ってるのかもな。
「しかたねえな。こうなったのも何かの縁だ。ボス倒すのを手伝ってやるよ」
おれの言葉に魔法使いの女の子は目を丸くした。
「え…。い、いいの?」
「困ってるやつを放っておくわけにもいかないだろ。それに配信中にかわいい女の子を見捨てたらリスナーに殺されるしな」
おれはそう言って浮遊モニターを指差した。
コメ:その通り。よくわかってるじゃねえか。
コメ:ここで引き返してたらギルドでぶん殴ってたよ。
コメ:そんなことしたらチャンネル登録解除待ったなしだ。なあ、みんな!
コメ:当たり前だ!
「そういうことだ。ま、よろしくな」
おれは手を魔法使いの子に差し出した。ちなみに爪はしまってある。
「うぅ。あ、ありがとう。ありがとう…ございます…」
魔法使いの子は震えながらおれの手を強く握りしめた。
「よ、よかった。ビーストキングがいたら何とかなりそう」
「よ、よろしくお願いしますね。ビーストキングさん」
剣士の子とシスターの子も魔法使いの子の手の上に手を重ねた。
「礼を言うのはボス倒してからでいいぞ…」
おれはそう言いながら女の子たちが落ち着くのを待った。
流れが少し強引だったかもしれません。しばらくダンジョン攻略が続きます。