赤い戒め
アルカディア王国は二つの祝い事で賑わっていた。だが、それは数刻後には呪いとなった。
王妃と側妃が同時に産気づき、王妃の方が少しばかり早く出産し、続いて側妃が出産した。
ただ残念な事に二人とも女子であった為、後継ぎの誕生とはいかなかないものの国中がお祝いモードだが、王宮では騒ぎになっていた。
王妃が産んだ子供は赤毛。
王も王妃にも似ておらず、王家でこの髪の色を持つ者はただ一人だけ。
反逆罪で処刑された国王の兄、第一王子アルセンの髪と同じだった。
それもそのはず、王妃はアルセンの妃だたのだから。
王妃エリザは、大変美しくアルセンとの仲も睦まじかった。そして、次期国王として王太子の座は揺るがないと誰もが思っていた。
弟王子は昔からエリザに邪な思いを抱いており、アルセンを貶める為にある計画を立てていた。
それは父である【国王暗殺未遂】という群れ衣を着せて処刑する事。疑り深い父王は「兄上が陛下の座を脅かしています」その一言に惑わされた。思惑通りに『毒杯』を下賜して処刑した。
ここまでは計画通りに上手くいったはずなのだが、まさかアルセンが自分の血統を残していくとは、夢にも思わなかったのである。
エリザは愛するアルセンの血筋を守る為、憎き敵に身を任せた。だが、運命とは皮肉なもので生まれた赤子の髪の色は隠しようがなかった。
途方にくれているエリザに救いの手が差し伸べられた。神官がお告げを持って王宮にやって来た。
「神の神子となる赤子は深紅の髪を持っており、神殿に仕えさせれば国に繁栄をもたらすでしょう」
国王は邪魔な赤子と廃妃エリザを神殿に押し付け、新しい王妃に側妃を立てた。
そうして廃妃となったエリザと生まれたばかりの王女は神殿で暮らす事になった。それはアルセンが神官にエリザと子供を守る為に申し付けていたことだった。
赤子の名前はラミュエラと名付けられ、老神官がありとあらゆる知識を授けた。それはいつか正統な血筋に王権を還すため。
5才になると正式に神子としての儀式を得て新たに
ラミュエラ・ポーラ・アルカディア
と名乗る事になる。