08.ボスゴーレム
ゴーレムのボディは非常に固い。物理防御力は、この周辺のモンスターと比べれば圧倒的。素手で殴っても倒せないでしょう。
「ならば……!」
近くに会った拳ほどの石を拾い、握った。
それを軽くポンと宙へ投げ――
『ディバインナックル!!!』
殴った。
すると石は砕け――弾丸となり敵に向かっていった。飛散していく石の弾は、ゴーレムの岩ボティに命中。予想以上の威力で穿った。
【Lv.26】→【Lv.27】
なんとか倒せた……!
「…………ふぅ」
緊張で汗を掻いた……移動速度は鈍足系とはいえ、まさか、あそこまでゴーレムが強いとは思わなかった。ゴツイだけに『物理攻撃』と『物理防御力』だけはピカイチ。そんな基礎知識を失念してしまうとは……受付嬢失格ね。
喉の渇きを感じながら安心していると……
さっきの騎士が戻って来た。
「す、すごいなキミ。女の子なのに……しかもギルドの受付嬢だろう? そんな力を持つとは……いったいレベルいくつなんだ?」
「……なんですか、あなた。騎士様ですよね。女性を置いて逃げるとか……」
「う……そんな目で見ないでくれ。俺は……ただキミをナンパしようと……。すまない、自分で言うのもアレなんだが……こう見えて臆病でね」
そんな事だろうと思っていたけど……本当にナンパ目的だったとは。普段、些細なことを気にしないタイプのわたしでも、さすがに呆れてしまった。
そう会話を交わし油断していると……
また騎士の背後に別のゴーレムが。
しかも今度は先ほどのより大きなゴーレム。
これは……ボスゴーレム!?
【BOSS:ギガントゴーレム Lv.50】
その巨大ボスモンスターは赤い眼光を向ける。その瞬間、図太い腕を素早く振り下ろし――騎士を叩き潰した。
「がはあああああああっ!!」
「……うそ、一瞬で……」
彼が居た場所に……
――[WASTED]と確認できた。
それはつまり、騎士の彼は『HP0』となって……
塵となって消えた事を意味する……。
通常、死亡した場合、十字架が出現する。
蘇生魔法とか蘇生アイテムで助けられるけれど……そんなスキルもなければ、そんな高価なレアアイテムも持っていなかった。
助けられなかった……。
いや、そもそもあれはデスペナルティを超えている。『レッドゾーン』以上のボスモンスターによってHPを『0』にされた場合『蘇生不可の呪い』が掛かると聞いた。本当だったとは。
「……ごめんなさい」
信じられなかった。
目の前で人が斃されるなんて……これが冒険なんだ。少し難易度が上がるだけで、ここまでモンスターの強さが変わるなんて――。
けれど、
これは、あくまで噂。
死亡すれば、記憶は初期化され――また転生する……と、聞いた事がある。
本当かどうかは分からないケド。
――あまりに恐ろしくて、わたしは震えながら逃げ出した。こればかりは逃走の選択しかなかった。
◆◇ ◆◇ ◆◇
さすがに、高レベルのボスモンスターを相手に出来ない。冷静な判断を下し、荒野フィールドから脱出した。
あれ以上はただの無謀。
あの騎士のように一瞬でやられてしまうだろう。
トボトボと都へ向かっていると……
いきなり――囲まれた。
「え……」